くろがね便り

 四万十川の畔にある「たたら製鐵・古式鍛造工房くろがね」の日常の出来事をお伝えします。

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2013年1月1日(火)
謹賀新年

アメリカ向けのフィレッティングナイフ

フランスのお客様からのクリスマスギフト

山童のナイフケースとクリスマスチョコ
 新年あけましておめでとうございます。

お陰様で、なんとか新年を迎える事が出来ました。
昨年は、誂えの刃物や玉鋼作品の注文など、初めて造るものが多く、
作品つくりを通して、沢山の勉強をさせて頂きました。
御注文を頂いた方達には、遅れがちな納品を気にする事もなく、
『いいものを造って下さい』と暖かいお言葉を頂き、感謝しております。

また、たたら製鐵・古式鍛造研修では、
若い大学生をはじめ、様々な職業の方々に来ていただきました。
 
どうしてか分かりませんが、当工房の研修生に方は、とても個性的な方が多く、
研修では、鉄や刃物の話にとどまらず、様々なこれまでの経験や、将来の夢などを聞かせてもらい、
こちらが刺激を受けて、とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
お礼申し上げます。

本年も、作品つくりや体験研修を通して、様々な方達に出会える事を楽しみにしております。

画像は、前回紹介したアメリカ向け「なんとかナイフ」です。フィレッティングナイフ(フィレナイフ)と言うそうです。
魚をさばくのに使う薄刃の包丁で、しなりが必要とのこと。大丈夫かな? 評価が楽しみです。
あとの2つの画像は、クリスマスにフランスのお客様から届いた『山童』のお礼です。
「プレゼントは何がいいですか?」と連絡を頂いたので、
『あなたの住んでいるところの、ポストカードが欲しいです。』と返信をしたら、
綺麗な写真入りのガイド本と、ご自分で写した写真を送って頂きました。(お菓子もです)
それと『山童』を入れているナイフケースが、カッコイイですね。

プレゼントが、うれしかったので、紹介させて頂きました。
Thank you for the gift from France!
2012年12月11日(火)
工房の近況

小鉈と9寸の大鉈

冬の工房

鍛錬中は集中しましょう カメラ目線はダメ
 9月以降から、急に注文や研修が入り始め、いまだに忙しい毎日です。
 注文打ちの鉈や鎌、普段作らない片刃や、手間のかかる磨きの包丁、アメリカ向けのナントカナイフ。地元の工業高校への鍛冶の出張授業。
 仕事以外でも、地元『口屋内』の方達と、地域初の農産物等の直売会を企画して、栗のお菓子や燻製、ぜんざいを作って販売したり。 
 その間に、常連の研修生の方は、自主研修をテントで泊りながら行って、鉈を造って帰られましたし。
 初めての研修生の方は、たたら製鐵はもちろん、連続で鍛造研修まで体験して頂いたり、他には、結婚式のサプライズプレゼントとして、包丁をつくりに来て頂いたお客様もみえました。

 うれしかったのは、フランスの方の注文で、『山童』を送ると、切れ味、デザイン共に大変気に入っていただき、とっても喜んでもらった事でしょうか。
 メールでお礼の返信を受け取った時は、1人でガッツポーズをしてしまいました。山の中にある、19世紀に建てられた家に住んでいるそうで、シンプルライフを楽しんでおられるようです。お礼になにかプレゼントを贈って下さるそうで、今は楽しみに待っているところです。
思いがけないクリスマスプレゼントといったところでしょうか。

 ここの所は、史跡の修復に使うためとのご依頼で、玉鋼の鍛錬ばかりしています。大きなケラを真っ赤に熱して折り返し鍛錬を繰り返しますが、普段のだらけた生活のためでしょうか、1日が終るとぐったりしています。 期日までに終るかな?
 今月の20日頃には、修業日誌も更新しますので良ければ読んで下さい。

 以上、更新をサボっていた、言い訳でした。 ゴメンナサイ。
2012年8月2日(木)
宿毛工業高校機械クラブとのたたら操業その3

緊張のケラだし

取り出したケラ

火花試験
 たたら実験3日目、いよいよケラ出しです。
 三脚で炉体を吊って炉底を外してみると、炉底の上に炉壁がくっついていてきました。どうやらケラの出来た位置が、普段より高いようです。
 大鎚を手にした生徒が炉壁を割っていくと「ガツン!」と硬い手応えが・・・。炉壁を取り除くと大きな塊が「ドスン」と出てきました。両手でやっと持てるほどの重量感があります。小さな物も合せると10s以上のケラを取り出しました。砂鉄の投入量が20sですから、十分な好成績と言えるでしょう。
 さて、その後は鉄に含まれる炭素量を調べるために、火花試験です。画像では分かりにくいかもしれませんが、全体的に高炭素のケラでした。宿毛工業高校では、単にケラをたたらで作るだけでなく、自分たちで鍛錬をして作品造りまで持って行くので、炭素量の高低は重要なポイントなのです。今回のケラなら刃物製作に十分使えそうです。
 明日からは2回目のたたら操業、次回は3年生が村下(むらげ)となってたたら操業に挑戦、私は横から『生徒達のお手並み拝見』と言った所です。
村下(むらげ):たたら操業の責任者の呼び名
2012年8月1日(水)
宿毛工業高校機械クラブとのたたら操業その2
 マングローブの炭
流動性の良いノロ

たたらの後はみんなでカキ氷
 宿毛工業高校機械クラブと、マングローブ炭でたたら操業実験本番。
 本来、たたら操業には松炭を使用するのですが、松枯れによって松炭の入手が困難になり、松炭に変わる物として、以前宿毛工業高校と竹炭でのたたら実験を行った事がありました。(竹炭実験では、ケラを作る事は出来ましたが、高炭素のケラは出来ない事が分かりました。)
 そして、今回は安価で入手しやすいと言う事で、マングローブの炭で実験する事になりました。しかし、松炭に比べると硬くて重く、たたらに使ってみると、予想通り燃焼スピードが遅く、送風の調整が難しく悩まされました。
 硬い炭を使うと内部の温度は上がりやすいのか、上がりにくいのか? 師匠なら悩む事も無いのでしょうが、不肖の弟子には難題です。
 操業の終盤、生徒にノロ出しをしてもらいます。ノロが硬くて出てこないと、操業を中止しなければいけない場合もあるのですが、生徒がタガネを打ち込むと、流れ出るようにスムーズに流動性の良いノロが出てくれました。
 その後、暑い中頑張ってくれた生徒達のおかげで、砂鉄20sをすべて投入し、無事に操業を終える事は出来ました。
 後はケラが出来ているか。出来ていたらどれくらいか?これまでは8s〜9s多い時で10s取り出していましたが、後は明日のお楽しみです。
2012年7月30日(月)
宿毛工業高校機械クラブとたたら操業その1

たたら炉の築炉中
1年生は薪割り  バーベQ用のマングローブ炭
 お久しぶりです。3ヶ月以上も更新が止まってしまい、申し訳ありません。
さて、今回のくろがね便りは、毎年恒例となっている、宿毛工業高校「機械クラブ」とのたたら操業。
気温が30度を超える中、今日は築炉と薪割り、そして炭割りです。
築炉では、独特の形となっている炉壁の形状を、なかなか作る事が出来ず、ちょっと手こずっていました。
また、薪割り担当の1年生達は慣れない鉈での作業に四苦八苦。
午後からは、全員で炭切り。
今回は実験として、バーベQ用の炭でたたら製鉄が出来るか挑戦します。
明日は操業の様子をお伝えします。
2012年4月11日(水)
自然と子供 シマムタ野外塾

葉っぱの手紙
カーソルを重ねると手紙が読めますよ

椿の花の採取して天ぷらに
カーソルを重ねて下さい

タケノコを探してますその後は皮むき
カーソルを重ねて下さい
 4月に入り暖かくなってきましたが、先日、当工房でシマムタ野外塾の活動がありました。
シマムタ野外塾は、約20年前に異年齢集団で遊ぶ子供社会が無くなっていくのを危惧した、師匠と仲間の方達が立ち上げた、野外活動を通して子供達に成長してもらうことを目的とした塾です。
塾の内容を説明するのは難しいのですが、師匠が書いた野外塾の報告「子供達は自然から何を学ぶか」から抜粋すると

  心を解放すると、子供達は活動をはじめる  

  魔法の言葉『何して遊ぼうか』 この一言は子供達の心を解き放ちます。この問いかけからはじめる、子供達の自主性の掘り起こす。

  無から有へ(人の手によって造られたもののないところから、何かをつくり出せる人つくりをめざす)
  • 自然界は素材の宝庫
  • 素材は知識や技術を育て、夢をかなえる宝物
  • 自然度の高いフィールドは、子供達の心に何らかの変化を起こさせる
  • 異年齢集団が、フィールドで目的を持った活動をはじめると急激な成長をはじめる
  • 自然度の高いフィールドほど子供達の身体感覚を養う
 以上抜粋終り

活動を見ていると遊んでいるだけのように見えるのですが、
師匠曰く『子供には遊んでいるように思わせて、実はすごい勉強をさせているんだ。』
    『ガキ大将をつくっているようなものかな。』
とのことで、師匠自身も元はバリバリのガキ大将で、高校生の時にも近所の小学生が『みーちゃん。あーそーぼー!』(師匠の名前は光紀)と家に来て。
お母さんに『高校生にもなって!』なんて言われたそうです。

 そんな野外塾ですが、師匠が亡くなられて指導していただけなくなったことと、残ったインストラクターの方達も、本業が忙しくなり、私も『自分の面倒もみられないのに、人のことをしてる場合なのか』と、今後の活動は縮小か、廃止かという話がでました。
 その話を聞いた野外塾初期の卒業生が、工房まで来てくれて「遠くいて、なんにも出来ない自分に言う資格はないが、出来れば続けて欲しい。」と言ってくれたことや、師匠が、亡くなる1ヶ月ほど前の野外塾活動が終った後に、「後に続くインストがいない、どうしようか」という話をしていたときに
『これからの時代は、もっと野外塾が必要になるんだけどな〜。』としみじみおっしゃっていたのが印象に残っています。
 その後、インストラクターと父兄の話し合いで、何とか出来るところまで、続けていくことになり、本年度1回目の活動を行ったのです。
 
 そんな中、今回は、野草に詳しい古参インストラクターに教えてもらいながら、野草を採って野草の天ぷらとタケノコ掘りをしたのですが、子供達は元気なもので、合間に工房にある「手紙の木」の葉っぱを採ってきて落書きしたり、突然やって来たサルの集団に驚きながらも山に追っかけていこうとしたりと、楽しんでくれたようでした。
 普段は静かな工房も、子供達が駆け回り賑やかな楽しい春の1日となって、こちらの心まで解放された気持ちになりました。
 また翌日、子供達の残していった手紙の木の葉っぱを集めていたら、とてもすてきなメッセージが書いてあってうれしくなりました。
写真を撮ったのでよかったら見てください。

 インストラクター募集中です。(注:ボランティアです)
2012年3月19日(月)
悩む話

咲き始めた水仙と大量の竹、まだまだあります。

問題の郵便受け、カーソルを重ねてみて下さい

中央に小さく写っているのが苔を咥えた小鳥
 四万十川の畔のある当工房もここのところ春めいてきて、庭の水仙は花が開きはじめ、まわりの木々は新芽を出し始めました。
遅ればせながら、私も小さな畑の手入れをはじめたところです。
 そんな中、今日は、竹炭を焼くために地元の中学校からいただいてきた、孟宗竹の竹割りをしていたのですが、どうも私のまわりを『チッー、ヂッー』をうるさく飛び回る小鳥がいて、『どうしたのかなー?』とボケた頭で考えていたら、私の作業をしている横にあった工房の看板の下にある郵便受けの中に苔(たぶん水苔)がいっぱい入っていてビックリ。
私が近くにいるので警戒して、まわりを飛び回っていたようです。よく見ると苔を咥えているのも見えます。
 どうも小鳥が巣箱と間違えて、郵便受けで巣作りをはじめているようなんです。(カンバンの画像にカーソルを重ねると中身が見えます)
子育ての様子が観察できてラッキーだと思ったんですが、郵便物が入ったらビックリして途中で逃げて行っちゃうかな〜?
いっその事、入居はお断りした方がお互いのためかと、悩んでいるところです。
2012年2月14日(火)
ショウレンつくり

向こう鎚で火造り

よっこらしょ

鍛造機な立てかけてありますが長さがわかりますか
 日付が古くて申し訳ありません。
 昨年末、お客様がショウレンを作りに来られました。
 その方は自分で鍛冶が出来るので、自由に鍛冶場を使ってもらい、私は別の仕事をしていたのですが、ちょっと手こずっている様子。
 2メートル近い鉄棒を相手に四苦八苦されています。
 聞いてみると、近所のおじさんに頼まれて長さ2メートル40センチ程の特別長いショウレンボウを造っているそうで、長すぎて火床に入れても持ってないと転がるし、鍛造機で打とうとすると奥がつかえて全体がうまく叩けない。その上長くて重くて取り回しが悪くて、どうにも能率が上がらないようです。
 そこで後日、弟弟子の栄太君に来てもらい、私と2人で向う鎚を使ってお手伝いをしました。
ここまで長くなると、全体のバランスを取るのが難しかったのですが、何とか完成されて帰られました。
2012年2月1日(水)
あなどれない研修生 玉鋼ナイフ製作編

自作たたら炉での初操業

土置き

団塊の世代製作 玉鋼ナイフ
 久しぶりのくろがね便り、今回の画像はたたら操業と玉鋼製ナイフです。

 とは言っても工房くろがね製ではなく、以前『恐るべし団塊の世代』
(風子の修行日誌参照)で紹介させてただいた方が製作した物です。
 実は昨年の12月中旬にその方が、当工房のたたら炉を元に独力でたたら炉を製作、初操業をくろがねで行っていたのですが、その時に砂鉄20sから約8sの高炭素玉鋼を取り出す事に成功。
 その後、ご自分の工房で卸し金と8回の折り返し鍛錬を一人でされ、1月中旬には、ご自身で製作された玉鋼ナイフで「土置き」と「熱処理」の研修を当工房でされたのです。
 そして早くも今日は、ほぼ完成した玉鋼製ナイフ3本も作って持ってきてくださいました。

 『仕事はやっ!』(趣味だそうですが)こっちの方が負けてます。

 今回は研ぎを勉強されたかったそうですが、申し訳ないことに私はまだ刀の研ぎは出来ませんので、代わりに薪ストーブの前でお茶しながら刃物の話から、世界のたたら、宇和島の伊達家、ジョン万次郎、年金問題、NSX、世界の単車、コンピュータソフト会社の立ち上げ、指宿の温泉と、話はあっちに行ったり、こっちに行ったりしている内に日が暮れてしまいました。

 私も早く玉鋼の作品造らないとな〜。と反省した1日でした。
 やっぱり『恐るべし団塊の世代!』。
2011年8月11日(木)
機械クラブとのたたら操業

工房の空は夏の雲

1年生3人でのへし金
 連日の猛暑の続く中、青空に浮かぶ入道雲を見上げながら、この夏2回目の宿毛工業高校機械クラブとのたたら操業を10日に行いました。
前回の順調なたたら操業とうってかわって、昨日の操業はノロの流動性が悪く、操業停止になりそうな様子でしたが、なんとか生徒たちのがんばりで切り抜けて、操業は終える事が出来ました。
 ただ、問題は肝心のヒ(玉鋼)が出来ているかが気になる所。

 一夜明けた今朝は、緊張しながらヒだしに挑みました。
 『ゴツッ、ゴツッ』と炉壁やノロをタガネで周りから崩していき、最後に真ん中から黒い塊が『ドスンン』と転がり出てきました。早速金床を地面に置き、取り出した塊を乗せて大鎚を振り下ろすと・・・・『カン!カン!』と甲高い音がして割れずにそのまま打った所が少し潰れます。『出来てた・・・。ふーッ』とひと安心したことでした。
 結果は、先日の操業には及びませんが、なんとか20kgの鉱石から8.6kgのヒを取り出せました。よかったー。

 続いて、へし金作業に移ります。この時期タダでさえスレートが焼けてアツイ工房ですが、火床に火を入れるとさらに拍車が掛かります。へし金するヒが大きいため、今日は生徒2人が金床の前に並んで、2丁がけでヒを叩いていきます。
 2.3年生は流石『トン!テン!トン!テン!』とリズミカルに息もぴったり。続いて代わった1年は今回が2回目ですが、ナカナカどうしてフォームが様になってきました。
 ただ問題は、火床の前に立つ横座です。物が大きいだけに火床の炎も大きく前にいるだけで熱線が襲います。さらに火床から出した真っ赤に焼けたヒの放つ熱も半端ではなく。その上、向う鎚が打った弾みで飛び散った火花が時には首筋や襟元に落ちたりして、『アチッ、アチッ、ちょちょっとタンマ!』と言っては踊るように時には身悶えるようにしてヒとの格闘は続いたのでした。
さて、明日は卸し金の予定、またまた炎との格闘です。
2011年7月30日(土)
夏スミレ

工房の夏スミレ

製作中のたたら炉の炉底

竹割り鉈
昨日までの賑わいから一転、また静かな工房が戻ってきました。
静かなとは言っても、山の中の工房はセミの大合唱に包まれていて、時折サルの鳴き声なんかも聞こえてくる中での仕事となります。

今日は、地元のオンちゃんに頼まれたクワの修理と、その後は愛媛のたたら師の方に頼まれた、たたら炉の炉底の製作。

画像は、師匠が工房へ持ってきた「夏スミレ」。可憐な花が咲き始め工房に文字どうり花を添えてくれています。
一番右の画像の竹割り鉈は、師匠が2本しか作っていなかったもの、2本とも工房に無かったのですが、図面からは柄や鞘の立体感が判らないので、買われた方のご厚意で作品をお借りして、自分で作っておきました。
師匠は仕事が速くてチョチョイと造っていましたが、私は遅くて・・・。特に自作の口金の造り方がよく分からず手間取りました。
画像の下が師匠作、上が風子作ですが、まだ売り物になるような物は出来ませんでした。

2011年7月29日(金)
ヒ出し

大鎚でもなかなか割れない!

ヒあった・・・

横座も向う鎚も汗だくでのへし金作業
 夏らしい快晴の中、今回は待望のヒだし。
昨日、体感温度40度を軽く越える暑さの中で作業した結果が判ります。
まずは、炉底から取り出します。鎚とタガネで生徒たちが周りの炉壁を割っていきます。
なかなか硬くて苦労しましたが、炉低から大きな塊が出てきました。
しかし、ただ大きくてもノロだったら、何にもなりません。ここから大鎚で叩いてノロとヒを分けていきます。
ノロだと叩いたとたんに砕けてしまいます。ヒだったら鉄ですから砕けません。
生徒たちが金床の上で、大槌で叩き始めましたのですが、これがまた硬い!
叩いても叩いてもなかなか割れず、どうやら大きなヒの塊になっているようでした。
よかったノロじゃなくて・・・・。まずひと安心。
結果、20キロの鉱石から約10キロのヒが出来ました。大成功と言っていいでしょう。

 さて、ヒ出しの後は、卸し金をするためにへし金をしてヒを小さく割っていきます。
真夏の暑さの中、火床の前は灼熱の世界です。また、金床に向かって大鎚を振り下ろす向う鎚もなかなか重労働、特に1年生はまだ、ほとんど向う鎚を振ったことが無かったようで、真っ赤に焼けたヒの中心に鎚が当たらず、弾かれたヒが足元に落ちて来たり大変です。それでも汗だくになって生徒たちはがんばっていました。。
 そして昼食には、父兄の方から差し入れの鹿と猪の焼肉でパワーを蓄え、また、機械クラブ卒業生の父兄の方からいただいた、おいしい手造りデザートでリフレッシュして、午後からも続いて作業をし、へし金をやりきってしまいました。
 こうして3日間の宿毛工業高校機械クラブとのたたら製鐵・古式鍛造の共同研究は無事終了することが出来ました。
 しかしこの後、実はまだ第2弾が暑い盛りの8月上旬にあるのです、生徒たちはまったく心配ありませんが、こっちは体力が待つでしょうか?
ちょっと心配です。
2011年7月28日(木)
たたら操業

上羽口の点検中

キラウエア火山のようだったノロ出し

『アチ!アッチ!』と言いながらの炉の解体
本日は、たたらの本操業。
朝方は雨が降って天気が危ぶまれましたが、そのうちに晴れ渡り暑さと戦いながらのたたら操業となりました。
宿毛工業高校機械クラブの面々は、村下から炉周りまで役割分担もきちんとし、暑い中汗だくになりながらがんばってくれました。
操業はきわめて順調で、ノロの流動性も良く、暑さを除けば苦労のないたたら操業となりました。
ただ、肝心のヒ出しは明日なので、果たしてヒが出来ているのかはまだ判りません。
成功を祈りながら生徒さんは帰途に着いたのでした。
2011年7月27日(水)
たたら準備

自宅から見た四万十川

1年生3人が築炉中

同じく炉底を造ってます
 久しぶりのくろがね便りの更新となります。
 岡田師匠が亡くなってから、様々な方より励ましや助言を頂きまして誠にありがとうございます。
 この場をお借りしまして御礼申し上げます。
 師匠の存在は特別すぎてとても代わりになどとは言えませんが、たたらの火だけは消さないようにしていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 
 さて、先日の台風では、豪雨で四万十川が増水し、工房前の道路すれすれまで水が来ました。数年前に工房が水に浸かったことがあったので、「まさかまた来るんでは?」と、先日製材した杉板から、工房内の電気製品などなどもろもろを移動させたのですが、川の水は結局、道までしか上がって来ず。ちょっと心配しすぎたようでした。
 翌日は1日かけて移動したものを元の戻し、さらに大風で折れた栗の木などの片付けに追われました。

 今日は地元の宿毛工業高校機械クラブの生徒さん6名が、たたら製鐵実験操業の準備にやってきました。朝から真っ黒になって炭きり、午後からは赤土を練ってたたら炉の築炉を行いました。
 明日はたたら製鐵の本操業、今回は使用する木炭のパターンを変えての実験です。
うまく行きますように・・・
 
2011年1月1日(土)
冬将軍

工房の正面

工房から四万十川


真っ白です

新年明けましておめでとうございます。
日本列島はすっぽり冬将軍につつまれて、四万十のお正月は真っ白。
そんな訳で、工房のお正月は寝正月。時々窓の外を覗いては、一面の冬景色に、うっとりと見惚れて、また、布団にもぐりこむ。お腹が空いたらモチを焼いて、お醤油をぬってノリを巻いて食べる。
天気予報では、明日あたりから寒波は緩むそうだが、本当だろうか?とにかく寒い。
しかしながら南国土佐で生活していると、積雪が珍しく、雪景色は非日常で、、心がウキウキしてくる。
『俺って犬なんだろうか?』
でもあまり外には出たくない。今日一日景色を眺めて楽しもうかな。
2010年7月25日(日)
宿毛工業高校たたら操業

熱い中、奮闘中の尾崎君

流動性の良いノロが出ました

操業も無事終わって真っ黒の先生と生徒たち
 昨日に引き続き、強い日差しの中、宿毛工業高校機械工作部のたたら操業へ行って来ました。
 朝、私達が高校の実習場に到着すると、すでに先生と生徒全員でたたらの余熱作業が始められており、炉の温度も上がっていたので、すぐに燃料を薪から木炭に切り替え、さらに炉の温度を上げていきます。
 十分に温度が上がったところで、鉱石の投入を開始します。 今回は炉内と外壁の温度を測定しながら、師匠の経験則との相関関係を探っていきます。
 暑い中、清岡先生をはじめ生徒達は休む間もなく、たたらの炎の前で付きっ切りで鉱石と木炭の投入し続け、下羽口からは溶岩のようなノロ出しで熱気にあおられ、汗だくで作業をこなしていました。その甲斐あって操業は非常に順調に進み、流動性の良いノロが出て、昼頃には無事操業は終了しました。
 ヒだしは、夕方頃すると言うことでしたので、私と師匠は工房へ帰ったので、ハテサテどんなヒが出来たのかは、また次回お知らせしたいと思います。
2010年7月23日(金)
宿毛工業高校のたたら準備

地道ですが大切な粘土ねり

先生と生徒さんで炉の組み立て中

組み立てが終わり炉を見上げる岡田師匠
 梅雨も明け、夏真っ盛りの中、宿毛工業高校機械工作部のたたら炉築炉の指導に行って来ました。
 宿毛工業高校へは、師匠が10年以上前からたたら操業及び鍛錬・鍛造の指導に当たっていますが、今回は12月に姫路で行なわれる『たたらサミット』に向けての課題研究と新入生徒達への特訓も兼ねて行って来ました。
 屋内とはいえ、30度は軽く越えるであろう猛暑の中、師匠より生徒たちに、炉壁に使う粘土の適切な固さ、練り方、築炉するときの手、指の使い方、羽口周りの形状と造る手順、及びその理由、さらに仕事をする上での絶対にはずせない原則など、たたら炉の築炉法や心構えについて実際に造りながら指導されていました。
 炉壁を造り終えると、炉体を組み立てて、炉壁の粘土を乾燥させるため薪を燃やし、明日の本操業のための準備は完了しました。
 天気予報によると明日も快晴、暑くなりそうです。冷えたお茶を準備して明日の本操業に備えたいと思います。
 
2010年6月9日(水)
野外塾

見ているほうがドキドキする包丁サバキには
思わず師匠が助けに入られました

大量のウドンも、あっという間に売切れ
 梅雨目前の6月第1日曜日、シマムタ野外塾の活動が工房くろがねで実施されました。
 この活動は師匠が18年程前からやっているボランティアの児童健全育成の事業ですが、内容は、極めて自由に子供たちが発想して、企画するもので、今年のテーマは、自分達の手で(発火具を使わず)火を起こしその火を使って何かを作るというもので、5月にはパンつくりに挑戦しました。(ちなみに、昨年は「発火具を使わずに火を起こす」が、1年を通してのテーマでした。)
 今月は手打ちウドンをつくることになり、塾生(小学3年生〜6年生)が自分達でウドンの打ち方を予習してきて、実際に自分達の手でウドン作りを行いました。
 さて、どんなウドンが出来るのか楽しみにしていましたが、これがナカナカいける味で子供たちの持つ力に驚かされました。
 当然、予習の段階でお母さんやお父さんのかげの力が大きく存在したのでしょうが、そのかげの力を吸収しつつ、子供達が成長するジャンプ力の高さに感心しました。
2010年5月12日(水)
ハクチョウゲ

可憐なハクチョウゲの花

ハクチョウゲの生垣
 十年以上前、師匠が自宅の庭で育てていたハクチョウゲを挿し木にして増やした小さな苗木を工房に植えたものらしいが、今では大きく成長して生垣になっている。
 そのハクチョウゲが、この初夏にたくさんの花をつけて、その前を通ると花バチやミツバチが群がって花の蜜を集めている。この生垣、長さにして約60メートル程あるが、どれだけの数のミツバチ達が来ているのだろう。
 師匠は今ここで仕事をしていたかと思うと、急にいなくなって、山からドングリを拾ってきて植えたり、苗木に育てた雑木を山に植えたり、およそ仕事以外の事をせっせと始めだす。そんな事をやっていたかと思うと、いつの間にはまた作品造りをやっている。いったい何屋か解からないような人である。
 先日も「オイ!林君、ポット苗をつくるからたたら炉を崩したシャモットと堆肥を混ぜて苗土をつくっておいてくれんか。」と、また師匠の道楽が始まった。私の仕事が増えるじゃないか、しかし、おかげで美味しい野菜も食べられるから、まあいいか・・・。
2010年5月6日(木)
芽だし

背くらべするナラガシワの苗
 昨年秋も深まった頃、様々なドングリを300個ほど山に播きました。その折採取したナラガシワのドングリをポットに播いておいたら100パーセント発芽して幼苗は可愛く背くらべをしています。
 一昨年は、エンジュの種と桜の種を採取してポットに植えたのですが、これも発芽して十分に育ったので、工房まわりの山中にこの春定植しました。いずれも元気に育っています。
 今春は、勝手に生えたタラと、紅葉を採取してポットに植えましたこれも今のところ100パーセント根付いたようでこの夏を越させて、少し成長させれば来年にはまた山に定植できそうです。
 自然木の山を育てようと、暇さえあればこんなことばっかりしているので、当工房は相も変わらずビンボーです。
2010年4月3日(土)
橙(だいだい)

ジュースと絞り汁

一番大きな木
 工房くろがねの敷地には数本の橙の木がある。この橙の木は大きなものが1本と、この10年程で成長してくれたものが2本、その他にもまだまだ背の低いものが、そこかしこに勝手に自生している。たぶん、本木となったものは1番大きなものであって、それ以外のものは、工房の裏山から出没する野猿が運び、芽を出して自生したものだと思われる。
 この橙の木は、大きくなったものが3本、毎年たわわに黄色の実をつけて、冬の寂しげな景色を豊かな景色に変えてくれているが、酸っぱくて、鍋でもした時のつけだれにしか使えないと思っていた。
 昨年から活用法はないかと考え、マーマレードを作ったり、果皮で砂糖菓子を作ったり、絞り汁をドレッシングに使ったりしていたが、それに止まらず今年は水で割って、砂糖を加えてジュースにしてみたところ、これが美味しくて、風呂上りや仕事で一汗かいた後などに飲むと、ノドごしがさわやかで実に美味しい。
 昔は、田舎ではあちこちにあった橙も、様々に品種改良された柑橘類に押されて、今はあまり見かけなくなった。しかし、これはこれでまんざら捨てたものでもない。
 これからも橙の実の活用法を考えてみたいと思っている。
2010年3月22日(月)
鍛造研修 熱処理

鍛造研修中の2人、ちょっと顔が怖いです

研修で造った作品

研修無事終了、良い顔でしょう?
 Yさんの鍛造研修も早くも今日で最終日。初日にナイフを2本作った後、2日目には長さ8寸(約24cm ) の剣鉈を打ち、アウトラインを削った後、熱処理も行いました。研修の回数を重ねているだけあって、ナイフの熱処理は難なく終わったYさんでしたが、長物の剣鉈にはちょっと手こずっておられました。それでも師匠からのアドバイスを受け、無事に剣鉈の熱処理もクリアー。後は帰ってからじっくりと柄付けと砥ぎを楽しむのでしょう。
 特殊鋼で削り出しの鉈も作ったそうですが、「切れるのは切れるが切れ味はやっぱり鍛造した物の方が良いですね」「今までに造った鉈は、知人や友人に譲ってしまったので、今回は普段自分の使う物を作りたかった。」とYさん。
 自作の鉈の切れ味を早く試したいのか、それとも3才になる娘さんと生まれたばかりの息子さんに早く会いたいのか、「帰途はノンストップで島根まで帰ります。」と満面の笑みで工房を後にされました。
2010年3月20日(土)
鍛造研修

鍛造開始

形になってきました

後は熱処理を待つばかり
 春の訪れを思わせる暖かな連休の初日に、島根からYさんが鍛造研修に来られました。
彼が研修に来るようになって9年程、当工房の研修生の中では、古くから通っていただいている方の一人です。
今回は猟に使うナイフと剣鉈を造りたいとの事、工房に到着すると長旅の疲れも見せず、さっそく火床(ホド)に火を入れて製作に取り掛かっていました。
2009年8月11日(火)
台風一過

工房前の道路下の田まで増水

宿毛工業生徒との鍛造実習

生徒の製作した作品

 台風一過,昨日まで降り続いた雨も今朝は上がり暑い夏の陽射しが戻って来た。
セミが早朝からうるさい程鳴いている。
 昨日は大増水て国道441号線も一部通行止めとなっていたが、四万十川の水も引いて今日は対岸の国道を行きかう車両のエンジン音もいつもの調子に戻っている。
 この所、四万十川は大増水もなく、河原は夏草に覆われて草原化していたが、どうなっただろうかまだ河原は増水した水の底で見えないが、この水が引ききった後の風景が気になっている。
 今日は地元工業高校と一緒に、進めている古代の鉄生産研究のための実験鍛造の日だが、暑さに滅入りそうだ。
 それにしてもトンボ達は涼しげにスイスイと飛んでいる。

2009年6月18日(木)
古墳時代の復元

研修で製作した品々
左より鍬、鎌3個、右端の二つが穂きり

画像の使用転載の場合には必ずご一報ください。
古墳時代の鎌復元品

画像の使用転載の場合には必ずご一報ください。
研修生の河野さん(左端)



 梅雨の晴れ間が続く四万十川に、京都大学で考古学の研究をされている河野さんが研修に来られました。
河野さんは、古墳時代の民具の研究をされているそうで、その一環として実際に当時の民具を製作してみたいとの事。
師匠も普段知ることのない当時の生活道具の話に興味津々、どんな物なのか図面を書いてもらうと、現在私たちが使っている物とはかなりの違いがあるようで、刃の形はもとより柄の取り付け方法や、使用方法など河野さんのお話を聞きながら当時の人達の使用方法を想像しながらの製作となりました。
 はじめに中央の画像の鎌の製作、柄は工房の通い弟子で宮大工の栄太君が作り、出来上がった鎌をさっそく使ってみるとこれが使いやすい!現代の鎌と比べても遜色がありません。続いて、鍬や稲の穂を刈り取る道具も、頭を付き合わせながら「握り方はどうか?使い方は、手の動かし方はこんな風かな?」などとめいっぱい想像力を膨らませながらの製作。
 いずれの道具も思った以上に使い勝手がよく当時の古代の人々がいかによく考えてこれらの道具を作ったのかが良く解った研修でした。
尚、復元した画像をご使用になりたい場合は必ず事前にご一報ください。
2009年4月14日(火)
カリン

カリンの花が満開

 炭焼き窯の脇に、師匠がカリンの苗を植えてもい10年近くになります。一昨年から実が付きはじめましたが、昨年は裏年だったのか花も少ししか咲かず、実もなりませんでした。それが今年はうって変わってたくさんの薄桃色の花を付けて、満開になりました。
 この花、近くによってよく見ると、5弁で比較的肉厚な花びらが可憐でとてもかわいらしいんです。
 しかしこの木、面白い話があります。この木は苗を三本植えて、3本ともすくすく育っているのですが、これを植えた師匠は、スモモと思って植えたらしいのです。でも実がなったら、食べられないカリンに化けてしまいました。スモモの実を楽しみに待っていた師匠は、かなりガッカリしていました。
 今年はカリンの実がたくさん付きそうなので、師匠のガッカリした顔がまた見られそうです。

2009年3月11日(水)
春が来た パート3

 「春に三日の晴れなし」と言いますが、今年の春は特に雨が多いようです。
 今朝は薄雲が広がって、少し肌寒い朝でしたが八時を過ぎる頃になると徐々に晴れ間が拡がって、日中は穏やかに晴れて小春日和となりました。
 この所の温かい気温と雨が多いせいでしょうか、数日前からナガバモミジイチゴの花が咲き始めました。例年よりもいくらか花を咲かすのが早いような気もします。この野生のイチゴは五月頃には黄色の甘い実をつけます。つまんで食べると、甘酸っぱくてとてもいい香りがします。三年程前に師匠が山中に会った小さな苗を移植したものですが、こんなにたくさんの可憐な花がつくのであれば、観賞用に生垣として増やしてもいいかなと思っています。
 今日は、天気が穏やかで野鳥たちも気分がいいのか、遠くで、近くでたくさんの鳴き声が聞こえてきます。特に今日はウグイスの声が際立っているようです。

2009年2月21日(土)
春が来た パート2

 つい先日まで冬枯れて丸裸だった工房前の柳の大木が、今朝は新芽をひろげ始めて、緑色になった。
 そう言えば昨夜まとまった雨が降ったが、戸外はそうそう寒くは感じられなかったし、今朝は雨も上がって北西風が吹いているが、暖かな日射しのせいか寒さを感じられない。

 2月も早いもので、残すところ1週間あまりとなったが、この春は例年より一足も二足も早く感じられる。

2009年2月20日(金)
春が来た

 寒い寒いと言いながらも今年は極めて暖冬のようです。
 工房裏手の梅も満開、3年前に苗木を植えたしだれ梅も2日ほど前に始めて花をつけました。
 四万十川下流では、もう菜の花がいっぱいに咲き始めて暖かな日中はミツバチ達が飛び交い、ところどころにはつくしんぼうが頭を出してきました。
 この1週間ほど前からはウグイスの初音も聞かれ、今朝はまだ下手ながらも声を張り上げています。四万十川にもやっと春が来たようです。

2009年2月7日(土)
海へ

料理の前の火起こし
火がついてきました
砂浜での楽しいひととき
 2月1日(日)、久しぶりに美しい海辺に行ってきました。
 普段は山奥に住んでいるので、周りは山ばかり、久々に見る海は冬場と言うこともあってか、砂浜には人影もなく太平洋はどこまでも青く洋々として、気分が「スカーッ」とします、その上、高知県地方は今年一番の好天に恵まれ暖かく雲ひとつ無い青空で、上着は脱ぎ捨ててTシャツ1枚でいられました。
 この日は、師匠が15年以上も前に始めたシマムタ野外塾と言う野外活動実践塾の「卒業生を送る会」で塾生達の意見で海へ行ったのです。
 活動メニューは、これまた子供たちの意見で野外クッキングと漂流物を探して何かを作ろうという事でしたが、砂浜がきれいすぎて漂流物がほとんど無い状態、仕方なく漂流物探しはあきらめて、自由に遊ぼうと言うことになってしまいました。
 塾生達はそこらにあるものを使ってさまざまに遊びを作る名人、この日の1番人気は磯に生えた海苔の採取でした。これにはこの日だけ参加の父兄も気合が入って、今夜の食材にと結構がんばって採っていました。
 「あんまり採ると地元の人に密漁と言って叱られるよ」と師匠はニタニタして言っていましたが、はじめに「そこの磯に海苔が生えている、採って食べると美味しいよ。」と言ってやりだしたのは師匠なのに・・・。「本当に密漁ですか?叱られますか?」の問いに「ああ本当だ、でも俺は叱られん。」なんとなく答えになっているようで答えになっていないと思うし、狩猟本能のかたまりの縄文人のような人の言うことは理解が出来ません。
 この日のお昼は大鍋いっぱいの芋だきと豚汁、全員で食べ切れず、お腹がいっぱいになってギブアップ、たくさん残ったものは工房の食料のもらって帰りました。
 おやつタイムは焼きもちの入ったゼンザイ、海辺で潮風に吹かれ、流木に腰掛けて食べる甘いゼンザイは格別のものがありました。
 「冬場の寒い時期はこんな暖かな海の近くに工房があるといいねぇ、暖房なくても昼寝が出来るものねぇ」と師匠、またまた仕事をサボることを考えているようです。
 そこに、すかさず野外塾の卒業生で、今年からインストに加わってくれた小学校の先生をしている真理子ちゃんが、一発いってくれます。
 「いかん!いかん!海の端はなんでも錆びる、鉄は真っ赤赤に錆びる。」
 「そうか、鉄の工房は錆びるか、でも冬は暖かいぞっ!」などと、工房を建てるお金もヒマもないくせに「出来たらいいなぁ」のたら話に花が咲いていました。
 そうそう話が最後になりましたが、この日は父兄の皆さんから、普段子供達がお世話になっているからと、台所用の調味料やお菓子トイレットペーパー、ティッシュ、洗剤、クッキングペーパー、食材等々、たくさんのプレゼントをいただきました。そろそろ買出しにと思っていた矢先のことでとても嬉しかったです。
 工房にいるとビンボーなんですが、そのかわりに何やら嬉しいものがやって来ます。
2009年1月30日(金)
かわいいけど・・・
 正月から続いた寒さが少し緩み、ここのところちょっと過ごしやすい日が続いています。そんな日和に導かれたのか、先日、小さなお客が工房にやって来ました。
 工房裏の斜面には、師匠が、「栗・茶・サンショ・千両・エンジュ」など、さまざまな木を植えているのですが、冬枯れのこの時期、木々の根元には、落ち葉が折り重なり、じゅうたんの様に斜面を被っています。
 その日、私が台所へ入ろうとしてその前を通ると、「カサカサ、カサカサ」と、落ち葉の触れ合う音が聞こえてきました。普段は野鳥たちが同じような音をさせているのは良く聞くのですが、「今日はやけに近くから聞こえるなぁ」と思い目をやると、エンジュの木の元に野ネズミが一匹。「ありゃ珍しい」と思い、ゆっくりと近付いていくと、警戒して「ピタッ」と動きを止め、落ち葉に同化したつもりか逃げません。
 少しの間見つめていると、安心したのか食事の続きを始めました。台所に入られたりすると、「コノヤロー!」なんて叫んでいるんですが、こうやって野外で見ると「なかなか愛嬌があってかわいいもんだ」なんて思ったことでした。

 しかし、それから数日後、お昼に引き出しを開けてみると、「あぁ!」秘蔵の袋ラーメンが食われてる!。「かわいいんだけどなぁ・・・」

 
2008年8月13日(水)
1日鍛冶体験

 工房くろがねは山奥にあり、普段は師匠の親しい友人の方が来られる他は、動物達が訪ねて来る方が多いぐらいですが、夏休みに入ると工房見学や作品を求めてくる方、師匠の古い友人など様々な人が来られ、工房も少し賑やかになります。
 そんな中、1日鍛冶屋体験研修に学生の松田さん(写真左)と、四万十ユースホステルの紹介で棚橋さん(写真中央)が参加されました。
 夏の暑い時期だけに、「火造りで火を扱うのは大丈夫かな?」といらぬ心配をしていましたが、2人とも暑さをまったく意に介さず、鍛冶屋体験にはまってました。

 はじめに、打ちたい刃物の希望を伺い、刃物造りの作業工程を打ち合わせてから火造りに入ります。
まずは、私が見本打ちとして工程を説明しながら1本打ちます。それが終わったら、研修生の出番、鍛冶屋初体験となります。最初からなかなか上手くはいきませんが、打っていくうちに段々コツがわかってきて、今回参加された棚橋さん曰く「ここかな?ここを打ってほしいのか?」と鉄と対話しながら火造りをしていきます。
合い間に昼食やコーヒータイムを入れながら、火造り→アウトライン削り→荒削り→熱処理(焼入れ・焼き戻し)へと進みます。焼入れは「刃物に魂を入れる」とも言います。これで失敗したら今日1日の苦労も水の泡です。みんな真剣そのもの「ジュウーーシュワー」火の前で汗をかきながらも、一歩も引かず、一瞬に集中します。今回は2人とも、無事熱処理も終わり。私達もひと安心です。
 その後、時間があったので、作品を砥いで試し切り、皆さん「サクッサクッ」と、木や竹の表面を削って「お、削れますねー」と言ってくれますが、師匠が「ちょっと貸してくれますか」と言って刃物を受け取ると「ズバッ、ズバッ、ズバババ」と切り落とすと、師匠「ん、だいじょうぶ!」研修生「オオオーーー!」
写真右が今回の作品です。

2008年8月3日(日)
工房の来訪者
 今年の春の写真ですが、皆さん何か分かりますか。
 最初に見たときは、「タヌキかな?」と思ったんですが、師匠に聞いてみると、「そりゃあアナグマだ。」との事、顔の形に特徴があるそうです。
このアナグマ君、どうやら、わが工房の近くに巣があるらしく、たびたび接近遭遇を繰り返します。
しかも、大胆不敵かそれとも鈍感なのか、私達がいてもまったく意に介さず。堂々とこちらの足元を通り過ぎて行きます。
あまりの警戒心のなさに、「ここに人間がいるんだよ。」と声をかけそうになります。
 師匠が、ここでの生活を「仙人みたい」なんて冗談で言うことがありますが、「仙人というより野人」なんでしょうか?
ともあれ、夏に入り最近見かけなくなったけど、アナグマ君は山奥へ避暑にでも行ったのかな。