贖罪の時(2) 騒-5
宴
『んなっ!!!』
3人の声がものの見事にハモリ、同時に舞台を振り返った。
そこに立っているのは、照れくさそうに笑っているゼル……ではない。
くすんだ金髪で緑の瞳をした、ややおっとりしたお坊ちゃんタイプの青年だ。年は18〜19くらいで、鮮やかな緑色をした正装がぴったりとしていて似合っている。緊張していて思いっきり固まっているが、マイクを向けられて慌てて礼をする。
「あ、はっはい。え〜と、西のル・アースで大公をしているゼルガディス・グレイワーズです。今は、私が若輩という事で叔父が補佐をしてくれています。こんな大きなパーティに招かれるなんて夢にも思っていなかったものですから、至らぬところが色々とあると思いますけど、がんばりたいと思います。えっと、これくらい、かな?よろしくお願いします」
「はい!初々しいですねぇ!!とてもあの赤法師の片腕と呼ばれているとは思えません!!しかし、そこがこの方の良い所ではないでしょうか?!!今回のパーティについて意気込みを聞いてみましょう!!」
「ええ?!い、意気ごみですか?!と、特に無いんですけど、どうぞよろしくお願いします」
それだけ言うとぺこり、と頭を下げる。と、まわりから貴婦人達の笑い声がさざめいた。
どうも、彼の性格は母性本能をくすぐったようだ。
笑い声に、真っ赤になりながら自称"ゼルガディス・グレイワーズ"が下がった。
その様子を3人は唖然としてみていた。何せ、本物とのギャップがありすぎてついて行けなかったのだ。
そこから最も早く回復したのは、以外にもアメリアだった。
唖然とした表情が、やがて危険な色を帯びた色に変わっていく。そして、ダンっと片足を踏み出し、ぎんっと顔を上げた。はっきり言って、殺気まで帯びているようにも見える。
「自分の姓名を偽り、このセイルーン主催のパーティにもぐりこみ、あまつさえゼルガディスさんの名を語ろうとは!!言語道断!!悪事許すまじ!!!天と地と正義とゼルガディスさんに代わって、このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが成敗して・・…(もが)!!!!」
「ちょ、ちょちょちょっと、待ちなさい!アメリア!!!」
「そうだぞ!!なんか、よく分からんがリナの言う通りにしとけ!!
勢いに乗って舞台に踊りこもうとしたアメリアを、リナとガウリィが押さえ込んだ。
が、暴れる暴れる。まるで湯の中に落ちた猫のような反応だ。
「離してください!リナさん!!分かってないなら引っ込んでいてください!ガウリィさん!!こんなことを許せるはずありません!!!」
ammeria
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by絹糸様
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瞬で膨れ上がった期待は
刹那で萎(しぼ)んだ
押し寄せるのは悲しみの波
あの人の名を騙(かた)ること
今のわたしは許せない
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目に涙まで浮かべて、暴れまくっている。それを思いっきり引っつかんで、ちょっと離れた茂みに何とか引っ張り込んだ。
「どうしてですか?!あの人はゼルガディスさんの名をを語ってるんですよ!!しかも、地位や過去まで偽って!!」
「だから落ち着きなさいって言っているのよ!!」
茂みについた途端、開口一番に文句を言ったアメリアに、リナが切りつけるように言った。その迫力に、取り乱していたアメリアが驚いて口をつぐんだ。
「あいつがここに来たってことは、あんたの所の重臣達の審査をくぐり抜けたってことよ?ただの詐欺師にそんなことができる?」
探るようなリナの瞳にアメリアが首を横に振った。
セイルーンは巨大国家だ。それゆえにその警備体制や身元確認も、他の国と比べ物にならないほどに厳しい。しかも、それがアメリアの見合い相手候補となれば更に力が入っているだろう。それを、たかが一介の詐欺師に欺けるとは思えない。
「そう。でもあいつは通りぬけた。しかも…・・」
「しかも?」
親指につめを噛んで黙り込んだリナの横顔を、探るようにアメリアが見つめた。ちらりと、目をアメリアにむけると、珍しく決断を渋った。何かを言おうか言うまいか、迷っているようだ。
「リナさん?…なんですか?教えてください。お願いします」
赤いドレスの袖を握ってじっとその瞳を覗き込む。赤いひとみが苦悩に揺れていた。
その、リナの頭にぽんっとガウリィの手が置かれた。二人して、ガウリィを振り仰ぐと、彼は喧嘩をする子供を見守る父親のような顔をしていた。
「リナ。はっきりとは覚えてないけどゼルガディスに関することだろ?」
こくん、とリナが頷いた。こういうときはガウリィのほうが優先権を握っている。問われるままに素直にリナが頷いた。
「・・でも、それはゼルガディスがあんまり他人に知られたい、と思っていることぢゃな
い」
再び、リナが頷く。
「……アメリアは他人じゃないだろ?ゼルガディスも、別に気にしないと思うぞ?」
わしゃわしゃと、頭をなでられる。せっかくセットした髪が乱れまくってしまったのだが、そんな事よりも、ほっとしていた。そして、自分が安心していることに気がついて、ほんの少し居心地が悪いような、照れくさいような感じがして、少し赤くなる。
「そうね。アメリアになら……。大体あいつがいないのが悪いんだから、文句なんて言わせないわ!!」
そんな感情を隠すように、ぎゅっと握りこぶしを作った。そんなリナを見て、ガウリィが安心したように手を離した。
アメリアがそんな二人を少し淋しそうな目で見ている。
「ねぇ、アメリア。あんた、さっき言ったわよね?「地位や過去を偽っている」って」
「え、あ、はい。だって、ゼルガディスさんが赤法師の片腕だったとか、実は大公だとか…。そりゃ、あのコピーと戦ったときなんだかお知り合いみたいでしたけど・…」
唐突に聞かれて、うろ覚えの言葉をつむぎ出す。それを聞いていたリナが、大きく溜め息をついた。
「リナさん?」
「やっぱり、ゼルはあんたに何も言ってなかったのね」
やれやれ、と言うように首を振っている。その様子に、なんだか自分だけ取り残されていたようで、悔しくなる。きりっと、唇をかみ締め、涙をこらえる。
そのアメリアの様子に、「言い方がまずかったかなぁ」などと、らしくも無く反省しながら、リナがそっとその肩に触れた。
「ねぇ、アメリア。別にゼルはあんたに話したくなかったわけじゃないのよ。多分、今の自分にとって関係の無いことだと割りきろうと、彼自身が思っているからこそ、誰にも話していない。それだけのことよ」
慰めようとしていったのだが、それもやっぱりまずかった。
「じゃぁ、何でお二人には話しているんですか?」
切りつけるような瞳でリナと、ガウリィを睨みつける。
仲間に嫉妬している。そのことがなんだか情けないような、そんな気がして辛くなる。そして、そのために、気分は更に悪くなる。
そんなアメリアの額を、リナが優しく、こつんっと小突いた。聞き分けの無い妹を相手にするように・…。
「馬鹿ね、アメリア。それはこれから教えてあげるんじゃない」
「そうだぞ、アメリア。あんまり急いでると、早くばぁちゃんになっちまうぜ」
にっこり笑っている二人を見ていると、もやもやしていた気分がゆっくりと晴れていった。悪かった気分がゆっくりと落ち着いてくる。
「そうですね。すいませんリナさん。子供みたいなことを言って」
気恥ずかしい気分で二人に向かって頭を下げた。
リナと、ガウリィがからからと笑う。そして、彼女の肩をバンバンと叩くと、にっこりと片目をつむった。
「いいのよ!そういう猪突猛進的な素直さがあんたの良い所でも有るんだから!そういう所にゼルも………」
惹かれたのよ。と言う言葉は、出口を見つけないまま行き場を失った。ガウリィの
「そうだぞ。素直が一番!誰かさん見たいにひねくれてちゃ、ゼルも大変じゃないか」
という、不用意な一言によって。
結果、リナが気がすむまでガウリィをぼこぼこにするまで、アメリアは本題へと入れなかった。
ameria
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by絹糸様
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幾重にも折り重ねられたベール
そこに彼は住んでいる
薄く儚げなその奥で
彼はどんな顔をしているのだろう
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「……ああ、いい汗かいたわ〔はぁと〕」
ずいぶんとすっきりした顔で、リナが額の汗をぬぐう仕草をした。なぜか片足だけぴくぴくしているガウリィが倒れている。
それを横目に見ながら、アメリアが引きつる顔で、頬に汗を一筋たらした。
「えっと、リナさん?すっきりした所で。さっきの続きをお願いしたいんですけど…?」
おずおずと申し出ると、リナがはっとしたようにアメリアを振りかえった。この様子では…。
「もしかして、忘れてました……?」
ぴきぴきと、頭に怒りのマークが出ているのが自分でもわかる。リナが、胸の前で小さく手を振って、必死に笑顔を作った。
「い、いや〜ね。アメリア!忘れてたなんて、そんなこと、あ、ある訳無いじゃない!!」
しどろもどろの弁解が、大いにそのことを肯定している。そんなリナに、あからさまに溜め息をついてみせた。
「いいです、ごまかさなくて。そんなことより、教えてください。何か気になることがあったんですよね?」
アメリアの、溜め息混じりの台詞に、刺を感じつつリナはその場に椅子を持ってきて座った。そして、アメリアにも同じように座らせる。
「…・アメリア。大公のことは知らないけれど、あいつらの言っているゼルの経歴は本当のことよ」
「…・・はっ?」
あまりと言えば、あまりの発言にアメリアがまの抜けた声を出した。
「で、でも。幼い頃から赤法師のもとで学んだなんて・…。だって、あの人は生きながらにして5賢者の一人に数えられたようなえらい人で…?え、でも、何でそんな人とゼルガディスさんが…?」
パニックに陥って、自分でも何を言っているのか分からなくなった。そこに、リナが更に爆弾を投げ込む。隠していたほうが余程混乱すると判断したのだ。
「ゼルは赤法師レゾの直系の子孫なのよ。だから、生まれたときからの知り合いなんだって」
「ええええええええ!!!!!」
予想外、どころではなかった。
「じゃ、じゃぁ、ゼルガディスさんは赤法師の子孫で、弟子だったんですか?!!そ、そんな人がなんで裏の世界とかにいたんですかぁ?!」
混乱のあまり声が裏返ってしまっている。彼が裏の世界で有名なのは小耳に挟んだことがある。何せ、セイルーンの彼の指名手配を解かせたのは彼女自身なのだから。
そんなアメリアを、正面から見据えると、リナは鉛でも飲み下すような表情で彼女の手を握り締めた。
「いい、アメリア。落ち着いて聞きなさい。ゼルガディスをあんな姿に変えたのは、その赤法師レゾ本人なのよ」
「なっ!…」
衝撃にのどが詰まる。だって、赤法師は彼の小さい頃からの知り合いで、しかも自分の直
系のもので・・…。
「昔、レゾに"強くなりたいか?"と聞かれて、頷いたらあの姿に変えられたといっていたわ」
「そ、そんな。じゃぁ、ゼルガディスさんは・…」
「そうよ、実の肉親にああいうことをされたの。そして、ゼルは赤法師のもとで裏の世界に生きる事になったの。あの姿で人前に出れないとふんだんでしょうね、赤法師は。そのおかげで、レゾは強力な片腕とを得る事になったの。自分を激しく憎む肉親とともにね」
もっとも、と、リナは続けた。
「レゾが死んだ今となっては、ゼルガディスは、その事を過去のことにしたい、と願っているから、誰にも、あまり話さないんだろうけどね」
衝撃の真実に、アメリアの唇がわなわなと震えている。リナの握った手から小刻みな震えが伝わってくる。その顔は、血の気が引いて死人めいて見える。
「アメリア…?」
「そ、それじゃぁ、ゼルガディスさんは…・・。ずっと、そのレゾに捕らわれたままじゃないですか!あの人が死んだって、ゼルガディスさんの体はそのままで、いつまでたってもレゾの影がつきまとうなんて、そんなの・…!!」
怒りで、涙があふれてきた。自分勝手にゼルガディスを、教育して、キメラにして、道具のように使って、勝手に死んで……。それでは、あんまりではないか。
悲しみではない。まして同情でもない。ただ、自分勝手なレゾの振る舞いに涙があふれるほどの怒りを感じる。彼はレゾのために生きている訳ではないのに…!!
けれど、一番心を揺さぶることは、そのことをゼルガディスが一人で溜め込んでいる、と言うことだ。リナの話しからも、ゼルガディスが直接彼女にそう言った、という訳でなく、リナ自身の憶測も多く含んでいることが分かる。つまり、誰にもその気持ちを言っていないのだ。そのことが、辛く、せつなかった。
そんなアメリアの横に、リナがそっと歩み寄ってきて、その肩を抱きしめた。
「そうね、アメリア。でも、ゼルはそこから抜け出そうと、必死に戦っているわ。たぶん、昔のことを話さないのも、あんたのことを仲間としてみていない、とかそういうことじゃないと思うわ。だから、ね。あんまり気にしないでいなさい」
ぐしぐしと、ハンカチでその涙をぬぐってやる。
「ほら、アメリア。いいかげん泣き止みなさい。あんた、涙で顔の化粧落ちちゃってるわ
よ?」
「いいです。化粧なんて!」
リナの手から乱暴にハンカチをひったくると、涙をぬぐい、ついでに鼻をち〜ん、とかんで、ぴらりと捨てた。そして、大きく深呼吸すると、再びリナに向き直る。
「ゼルガディスさんがレゾの片腕だったということはわかりました。それで、どうしてそれがあの偽者を捕まえるのに反対する理由になるんですか!?」
「そうだぞ、リナ。偽者なんて、とっとと捕まえちまえばいいんじゃないのか?」
『どぇぇぇぇぇぇぇえ!!!』
向かい合った二人の間に、いつのまにか復活したガウリィがいきなり顔をはさんだので、二人が思いっきり奇妙な叫び声をあげてしまった。
慌ててお互いの口をふさぎ、あたりを見まわす。幸い、周りの者達は舞台でのハイテンションな紹介に釘付けで気づいていない。ほっと息をつき、リナはいきなり出てきたガウリィの頭にヘッドロックをかける。
「くおの!くらげぇぇぇ!!いたいけな乙女の胸を驚かせるとは何事じゃぁ!!」
「ぐえぇぇ!!む、胸って・・…」
「な・に・か、言いたい事があるのかしらねぇぇぇ?ガァウリィィィィ?言ってごらんなさいぃぃぃぃ?!」
言葉とは裏腹に、声など出せないほどに首を締め上げていく。
「ちょ、ちょっと待て!!ぐぇ!!無い胸が、あたる!!」
「のわんですってぇぇ?!!ようく、きこえなかってわぁぁぁぁ?!」
更に締め上げた。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!!分かった!俺が全面的に悪かった!!い、息が!」
「分かれば、よろしい」
するり、とかけていた腕を放した。途端に、ガウリィが膝をつき、激しく空気をむさぼった。時折咳き込んでもいるので本気で苦しかったのだろう。
「ほ、・・本気で……。三途の…・・川・・…。見えた…ぞ」
途切れ途切れに、恨みがましく呟いていたのだが、黙殺されてしまった。
「リナさん。いい加減にしてください」
その様子を黙ってみていたアメリアが、いつもからは考えられないほどの低い声を出して
二人をねめつけた。本気で、気分を悪くしている。
「あは!ごめん、ごめん。ほら、ガウリィ、あんたもすわんなさい!」
そう言って、改めて椅子に座りなおすと、獣並みの回復力を持つガウリィも隣に座り込ん
だ。
「さて、どうしてあいつを捕まえないか?って話しだったわよね?」
さらり、と栗色の髪をかきあげてリナが確認するようにアメリアに言った。
小さくアメリアがうなずく。その瞳には、これ以上の脱線を許さない、という強い決意の色が揺れていた。
「あいつは、ゼルガディスの事を知っている。では、なぜそんなやつがこの"大見合いパーティ"みたいな愉快なもんに出てきたのか。そこが問題よ」
「やっぱり、アメリアが目的なんじゃないのか?」
「じゃ、どうして他人の名を語る必要があるの?仮にも、セイルーンの審査をパスするからにはそれなりのバックアップがあったはずでしょ?それだけの財力があるなら家柄も大したもんのはずだわ」
「つまり、……どういうことだ?」
ガウリィの発言に、リナは頭をがしがしとかいた。
「はっきりとは言えないけど・・…。いくつかの仮定はあがるわ。一つ目は、単にゼルがレゾの弟子、という肩書きを利用したかった。つまり、見合いのために派手な肩書きがほしかったのね。そして、あわよくばセイルーンの近親になろうと思ってる、ただの野心家の策謀。二つ目は、"ゼルガディス"の名を利用したセイルーンの混乱。もし、もしもよ。アメリアとあの"ゼルガディス"が婚約するとするじゃない?」
「絶対にありません!!」
力いっぱい否定するアメリアに、苦笑いの混じった溜め息でリナが返事をした。
「仮定の話よ、アメリア。いい、もしそうなったあとに、"このゼルガディスは裏世界に生きていた暗殺者だ!"みたいなことを言われたら、セイルーンの信頼は地に落ちるわね。そうしたら、他国との関係は劣悪化し、様々な混乱が生じるでしょうね…」
そこにある、不穏な想像にアメリアと、ガウリィが顔を見合わせた。
セイルーンの混乱を望むものは二通り。
混乱に乗じた下克上を目指す、他国の王達。
そして……・・
『魔族・・…』
3人の声が見事にハモリ、溜め息も重なった。
「あくまで仮定だけど、も少しあの"偽者さん"を探ったほうがいいと思うわ」
リナが、ちらり、と会場のほうに目をやった。各国の王子の紹介も終わり、みな、めいめいに談笑している。
「で、でも。探るって、どうやってですか?」
それまで黙っていたアメリアが、まだ混乱をひきづっている声でリナにたずねた。
いきなり、ゼルガディスの過去にセイルーンの危機の可能性を知らされて、頭の中がパンク状態なのだろう。自分で思考する、という事ができていないのだ。
「アメリア、あんたこのパーティの主役でしょ?!この中であのお坊ちゃんと自然に話せるのはあんただけよ?と、いう訳であんた、ちょっと張り付いて探ってきなさい!!」
「はぁ、張り付いて…・て、ええええええええ!!私一人でですかぁぁ?」
「あたりまえぢゃない!なんで、二人で行かなきゃなんないのよ?!」
「でもぅ」
見合いパーティでそんなにべったり張り付いていたら、誤解されてしまうではないか。更にいうなら、偽者と二人きりになっても、何を話したら良いのか分からないのだ。
そんなアメリアの気持ちを察してか、しないでか、リナが軽くウィンクをした。
「大丈夫よ!アメリア!!ちゃぁんと後ろから見守っていてあげるから」
「そうだ。アメリアのことは守ってやるぞ」
無責任にも軽く言い放つ二人の表情を見ていて、ピンっときた。
しかし、まさかとも思う。でも、やっぱり確認しておく事にした。
「もしかして、私に面倒な調査をさせて、お二人は料理を端から食べ尽くそう!なんて思っていませんよね?!」
『ぎくぅ!!』
二人が揃って一歩引いた。顔にはなんともいえない、ごまかそうとしている表情が浮かんでいる。
ぎっと、眉がつりあがった。
この大変な時に!!
怒り心頭のアメリアは、ごまかそうとするリナの機先を制して大きく息を吸い込むと、言葉を吐き出す。
「一体何を考えているんです!!リナさん!!ガウリィさん!!!かつての仲間でもあるゼルガディスさんの…・」
「あの、私が何か・…?」
これからが山場!というときにかかった声は、どこかのんびりしていて間が抜けて聞こえた。
驚いた3人が振り向いた視線の先には、きょとんとした表情でたちつくしている、自称"ゼルガディス・グレイワーズ"がいた。
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