2019年12月。江口はひらめきました。
〜江口とけさいな餅の一日〜
人文学オープンデータ共同利用センターより
『御前菓子秘伝抄』
さて、今年も誰が待っているのやら、クリスマス企画のシーズンになりましたね。
とはいえ、こっちも忙しいねん。落ち着いて菓子なんぞ作ってるヒマ無いっちゅーねん。
なので今年は、菓子にせずに、料理でやっちゃおうかなー、とも考えた。そもそもここはクリスマス料理をどうにかする企画であって、菓子限定なわけでもないんだな。
前々から考えていたチューリップとか、そうだな新年も視野に入れて、伊達巻きでも作っちゃろうか、とか、台所で皿を洗いながら考えてた。
リビングでは、子らと夫が雑談中。どうして冬至にはかぼちゃを食べるの? とか、そんな話を。
夫「『ん』がつくものを食べると、風邪を引かないって言われてたらしいよ」
息子「かぼちゃのどこに『ん』が?」
夫「昔はかぼちゃは、『なんきん』って呼ばれてたから」
息子「じゃあ、モンブランでもいいの?」
夫「江戸の昔にモンブランは無いよ」
そこに割り込むおかあちゃん。
「江戸の昔に、パンプキンパイがあったよ」
はい、思考回路がつながりました!
クリスマスシーズン!
冬至!!
かぼちゃ!!
江戸時代のパンプキンパイ!!!
そう、けさいな餅!!!!
よっしゃ、決定ーー!!
それでは、『けさいな餅』についてご説明いたしましょう。
ここから先の参考資料は、我らが鈴木晋一先生『近世菓子製法書集成』(平凡社.東洋文庫)、並びに『御前菓子をつくろう』(ニュートンプレス)からになります。
けさいな餅は『御前菓子秘伝抄』に掲載。御前菓子秘伝抄は、1718(享保3)年刊行の、菓子レシピ本。
『けさいな』は、語源はポルトガル語のケイジャダ(queijada)と思われます。ケイジャダとは、パイ菓子、またはその中に果肉餡やチーズクリームを詰めたタルト風菓子のことで、ま、甘い餡を詰めてりゃなんでもいいんでしょう。
余談だが、熊本県に『かせいた』って銘菓があって、けさいなと語源が同じらしい。タルト菓子の中身の方だけ残ったみたい。
作り方は、
ぼうぶら(菊型カボチャ)の皮と種をとってゆで、砂糖を混ぜてつぶして餡にしたものを、小麦粉と砂糖・かぼちゃのゆで汁を混ぜて作った生地に包んでオーブンで焼く。
とてもシンプルで、作る前から味が想像できるというもの。
そしておいしくなさそう。
コレに限らず、掲載されているレシピの、どれもこれもまずそうったら。
仕方ないよ。江戸の昔には香料もバターも膨張剤も無かったんだからな(※厳密に言うと、膨張剤はあったし、膨化技術もあったが、それも調べると沼にはまるので目を背ける)。
では、参りましょう。
材料その1。ぼうぶら。
菊型いうてるやんけ!!
ごめん、いま家に、鶴首しかいなかった。
大丈夫、どっちもニホンカボチャに分類されるってwikipediaで言うてたから、仲間仲間!!
皮をむいてゆでる。
この時点でまだ晩ごはんの支度が進んでおらず、「ここにダシ汁と醤油いれたら、今夜のおかずになるんじゃね?」って誘惑と戦いながらゆでる。
砂糖を入れてつぶす。
かぼちゃ正味200gに、砂糖大さじ4とか言うてるが、目分量。
バターとかバニラエッセンスとか入れたいのをぐっとこらえて、練りつぶす。
同時進行で、生地の用意。
小麦粉100gに、砂糖大さじ2。かぼちゃのゆで汁適当。
だいたいこんなカンジでええか。
生地を30分ほど休ませた後、餡を包んで焼く。
何でか、再現レシピ本の方では、生地を丸く伸して、餡をのせたら半月に折って餃子型にしている。
なんで餃子型? って思ったが、素人がそんな綺麗に成形できるわけない。半月が一番簡単。
あと、生地がぜったい硬いから、薄くのばさないと食べられたモンじゃないことは容易に想像できる。へたに丸く成形しようとしたら、生地がヒダになって分厚く重なった部分で地獄をみる。半月餃子型で行け。行く気があるなら。
で、オーブンの様子を見つつ焼いて、完成。
まー、焼き色のおいしくなさそうなこと。
でも、再現レシピ本の完成写真も似たような焼き色。
何の混ぜものもしていない小麦皮を焼いたら、そりゃこんな色になるわな。
で、味も特記すべきことはない。甘いカボチャを練りつぶしたものに、硬い小麦粉生地。にっちにっち噛みしめながら食べた。途中でよっぽど、冷凍庫に入れっぱなしのパイシートに包んで焼いてやろうかと思いつつ踏みとどまったのだが、焼いてたらよかった。
それはいいんだが、この再現レシピ本『御前菓子をつくろう』、2章編成になっていて、第1章が再現レシピ写真、2章が実際につくってみようチャレンジページ。
この、1章のレシピと2章のレシピが違うんですけど。
1章の方には、小麦粉生地にかぼちゃ餡を混ぜている。
『皮の食感が不思議な江戸時代のパンプキンパイ』って、うん、餡混ぜたらそりゃ食感変わるよな。
1章は専門学校とか菓子屋とかの本職が作ってて、2章はどうも編集者(素人)が作ってる。それも編集部の会議室かどっかで。
それを考えると、本職が作ってちゃんとしたコーディネーターとカメラマンが入って撮影された1章の作品の数々。
あの、江戸の昔のちょぼい材料と手順で作られる菓子を、よくもまあここまでおいしそうに演出できたもんだ。
てゆうか、レシピに手を加えでもしなきゃ、ここまでおいしそうにできなかったんだろうなあ。
2章、なんか悲しい。
というわけで、今年も無事、企画が終わりました。
いったい誰に頼まれて何のためにやってるのかわかりませんが、たぶん来年もやるよ! クリスマスのクの字もないものをね!!
じゃ、また!!