1988年 しゅうしょくできなくて 自分で会社をはじめ
−のび太のくせに生意気な。
『未来の国からはるばると』 のんびりしたお正月。もちを喰いながら正月を満喫する主人公のび太。しかし、突然彼の前に現れた未来ののび太のひ孫・セワシくんが、彼のあらゆる不吉な未来を見せつけ気分をダークにした後、「おかげでお年玉が50円だ」という文句で畳みかけ、「ドラえもんにどうにかしてもらえ」と、猫型ロボット・ドラえもんを置いて帰る。
のび太くんの未来はさんざんだ。進学も就職もできない、仕方ないので事業を興すも火事で丸焼け、借金を抱え込み妻子を路頭に迷わせる。その時の借金がでかすぎて、百年経っても返済しきれず、子孫たちは苦労している。セワシ君が自分の運命を変えたいと思うのなら、ロクデナシの集大成・のび太ではなく、ジャイ子の方に働きかけた方が楽に違いない。君達はジャイ子の子孫でもある。しかし、なぜ彼女ではなくのび太にかけたのか。なぜなら、彼が変えたい運命イコール借金をどうにかする、だ。そして、借金を作ったのはのび太、のび太の会社だ。ジャイ子ではない。 てゆうかのび太。どんな裏技使ったら、自分で事業を興せるっちゅーねん。しかもその盛大な記念パーティの模様。ねえ、いったい何の会社? 資本金とかどうしたのよ。真横でパパが笑顔でいるってことは、じつはのび助が噛んでるの? しかも会社が傾いた理由は経営不振ではなく火遊びからきた火事。最低5年は順調に経営されていたみたいじゃない。火事がなかったら、きっとまだ続いていたはずだわ。 のび太、実は成功者なんじゃない。花火にさえ気を付けていれば、きっとセワシの代まで借金を残すことも無かったでしょうに。そんな小学校時代まで遡って、ドラえもんにどうこうして貰わなくちゃいけないほどでもないじゃない。 セワシ君の年齢ははっきりしないが、たぶん今ののび太と同い年。考えがアサハカだったんでしょうね。お年玉が50円ってのが、よっぽどトサカにきたんでしょうね。
【ひみつ道具】 タイムマシン/未来が分かるアルバム/タケコプター
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よその家の中を、とおっていけば安全だ。
−通るな。
『ドラえもんの大予言』 しずちゃんの家に遊びに行こうとするのび太。ドラえもんは「自動車事故に遭うから」と言う理由で引き留めるが、のび太の命よりも漫画とケーキの方が大事なので、あの手この手を駆使してしずちゃん家に連れて行く。結局怪我をさせてしまうが、ドラえもんは「この程度ですんでよかった」といつでもポジティブ・シンキング。
ドラえもんやのび太君は遠慮なく他人の敷地内を通ったり、潜り込んだりすることがよくある。しかも土足で。おそらくご近所の方は「野比さんとこの息子さん、困るわねえ」と噂しているに違いない。塀も門もあるはずのしずちゃんやスネ夫の庭に立って、部屋の中を見ていることもある。いくら友達だからと言って、呼び鈴ぐらい鳴らしなさい。突然ドアを開けたりするから、車のおもちゃが当たったりするんだから。 ちなみに、あらゆる策がまったく通用せず、万策尽きたドラえもんは嘆き悲しみ、しかしタイミング良く現れたセワシが「タケコプターを使えば良いんだ」と、しごくごもっともな解決策を出してくれる(もしこの時点で『どこでもドア』がひみつ道具として既に出ていれば、そっちを提示してくれたことだろう)。こんなふうに、ドラえもんは他人に道具のベストセレクトをされることがかなり多い。ドラとのび太では、いくら有効な道具を持っていようと猫に小判。ドラえもん、実はひみつ道具の使い方知らないし、自分のポケットに何が入っているかも整理しきれてないんじゃないのかなぁ。それともまだ学習途中?
【ひみつ道具】 22世紀のマジックハンド/未来が分かるアルバム/タイムテレビ/タケコプター
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もっと、ちゃんとしたおかしを買ってらっしゃい!
−客レベルの謎
『変身ビスケット』 お客様のためにお菓子を買ってこいと、お使いを頼まれたのび太。めんどくさいのでドラえもんに頼もうとするがいないので、その辺に置いていたビスケットを紙に載せてお出ししてママに怒られる。お客様はちゃんとしたお菓子を待てずにビスケットを摘むが、そのビスケットは動物変身ビスケットだったため、馬にされたりカエルにされたりしてしまう。
野比家は客が多い。仏壇があるわけでも、商談をしているわけでも、婦人会に入っているわけでもないのに身内じゃない客が多い。しかも、かなり接待したり、ちゃんとしたお菓子を出さなければいけなくなったりするほどの緊張度の高い客が多い。中年男性の本日の客は、お菓子を用意していなかったということは、急に来たのだろう。「近くまできたものだから」とか、そんな理由だと思われる。だが、客間にあげて、待たせてまで菓子を出す必要があるほどの大事な客だ。なので予想されるのは「パパの大事な客、なので黙ってお返ししてはパパに悪い」といったところか。ママと談笑しているので親密度はやや高い。夫婦でお世話になった客かもしれない。‥‥仲人? あと、前項でも書いているが、ドラえもんはひみつ道具の管理がずさんだ。勝手に食べてはいけないものを出しっぱなしにしている。しかしのび太。フタまでしているものをわざわざ開けて、ドラえもんのビスケットなのに勝手にお出しして。それに、ビスケットで済ませたと言うことは、お買い物頼まれたそのお金はどうするつもりだったのか。油断ならなし、野比のび太。
【ひみつ道具】 動物変身ビスケット
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スネ夫さんて、神さまみたい。
−いいのか、それで?
『マル秘スパイ大作戦』 教室で花瓶を割ったところをスネ夫に見られたのび太は脅迫される。ドラえもんは脅迫の元をさっさと片づけ、スネ夫を逆に脅迫するためネタをさぐりにかかる。これがまた、脅迫ネタが面白いように見つかり、スネ夫ってばギャヒョーン。
謝れよのび太。 花瓶を割ったのはのび太。正直に先生に言えばいいものを、隠そうとするもんだから、スネちゃまにエライ目に。だってスネちゃま口が上手いんだもの。のび太がどれだけ叱られるかを(おそらく)ねちっこい口調で仰っております。「先生は立たせたことを忘れたまま帰るんだ」。「帰るんだ」って、なにを根拠にそれだけ限定できるんだって事を、顔も見せずに話すんだもの。タダでさえお人好しののび太。すっかりキレイにスネ夫術にはまっております。 スネ夫は調子モン、これは有名な話です。でも単行本に於いて、そんな彼の性質が現れたのはここが初めてです(てゆうか初登場だし)。そして記念すべき初登場作品が、『スネ夫=調子モン』全開、これが全てのテーマだと言わんばかりの作品。それを的確に表しているのが冒頭のセリフ。それ以前のセリフでも相当調子イイ事並べていますが、たったひとコマのセリフだけで、クラスの女子はそんなスネ夫を「神さまみたい」。過去にどれだけスネちゃま全開だったかがわかってしまう。過去があってこそ、このセリフが導き出せるのだ。ああ、もう。スネ夫の術になんの疑いも持ってないでやんの。君達にとってスネちゃまは神さまか。掃除をしてくれる神さまか。いいのか君達、そんな神さまで。スネちゃまだぞ?
【ひみつ道具】 復元光線/マル秘スパイセット
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ちっともかあさんのいうこときかないんだから‥‥。
−言いたくもなるでしょうに。
『コベアベ』 思ったことと逆のことをやらせる笛『コベアベ』。のび太を叱ろうと思ったら褒めて、お風呂に入ろうと思ったらドブに入って、強盗は進んで警察に行ったりして。悪ふざけが過ぎたのび太はドラえもんを怒らせて、褒められるつもりが叩かれて、貰えるはずのおやつは食べられてさんざん。
のび太はママに叱られる。まるでそれが存在確認であるかのように。ママに叱られてこそのび太。ジャイアンに殴られてこそのび太。スネ夫にのけ者にされてこそのび太。しずちゃんに冷たくあしらわれてこそのび太。ドラえもんに呆れられてこそのび太。さておき、ママはのび太を叱る。そしてその理由は、どれもこれも至極ごもっともだ。 のび太は言うことを聞かない。ママに何を言われても、パパに何を言われても、ドラえもんに何を言われても言うことを聞かない。『部屋の片づけをする』、さっさとやればすぐにすむのに、こっそり抜け出すものだから捕まってお説教になって、結局時間を喰っている。むりやりやらされるとそれを逆恨みしてドラえもんをドブに突き落とす。子供という人種は、理屈で悪いことを分からない。なので親は罰を与える。理屈ではなく、自分が嫌な思いをするからという理由で悪いことを分からせる。だからのび太に説教はきかない‥‥というほど小さな子供でもないくせに、言うことを聞かない。 ママの叱り方は上手だと思う。悪いことは叱る、上手に出来れば褒める(ご褒美をあげるのはやりすぎと思うが、めったにあげないのでよし)。それなのに言うことを聞かないのび太。江口だったら捨てるな、そろそろ。
【ひみつ道具】 コベアベ
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ぼくのうちみたいにさ、車とかクーラーとか電子レンジとか。
−1974年に!
『古道具競きょう争』 スネ夫の古道具コレクションに触発されて、自分も骨董品コレクションをしたいとゴネだしたのび太。未来の骨董品屋システムはちょっと違う、今あるものを古いものとお取り替え。調子に乗ってどんどん交換した後で、やっぱり元に戻してもらおうとして、骨董品屋を困らせる。
1974年に電子レンジってあったんですか! ああ、すいません。ショボい感想で。 でも、奥さん。江口が75年生まれですが、生まれたときに家電なんて何があったでしょう。物心付いてから家に来たもの(それ以前は無かったもの)といえば、電子レンジのほかにビデオ、ツードアの冷蔵庫、暖房ができるエアコン、電気ポット、CDプレイヤーとか。あ、江口家は車もなかったです。小学校の同級生の家は、電気はスイッチを捻る電球だった気が。コンセントが天井にあったので、アイロンコードがそこから伸びていたよ。そんなわけで、電子レンジなんてかなり成長してから買った家電です(下手すると高校ぐらいかもしれない)。確かインスタント食品で、レンジで出きる焼きそばってのが発売されてたの。あと、光GENJIがCMしてたフライドポテトとか。食べたくても食べられませんでした。そして、それらのCMを見たのは、決して74年ではない。 すげぇ、スネちゃまやっぱり自慢するだけはあるよ。たしかに金持ちだ、あんたは。たぶん温めるだけしかできないレンジだろう、なのに買っている。もう江口は、君の金持ち自慢には文句言いません。だって君は金持ちだから。
【ひみつ道具】 タイムシーバー
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こしょうをふりかけて、一ぴきずつ取り出さなくちゃ。
−なぜコショウにこだわるの?
『ペコペコバッタ』 ボールをぶつけられて眼鏡を割られたのに、誰も謝ってくれないので『ペコペコバッタ』を使って無理矢理謝らせることに。そのバッタが逃げてしまい、街中の人が悪事を暴露し始めて、実は物価の値上がりが石川五右衛門のせいだと白状されちゃう。
バッタの使い方は、鼻の中にバッタを注入する。バッタを入れられた人は素直に罪を認めて、頭を下げる。下げるだけでは飽きたらず、自分に相当の罪を与えてくれないと気が済まない。与えてくれないと自殺まで考える。細菌兵器として開発されたのかなぁ。思っただけ。 そして、そのバッタを取り出すには、くしゃみをすればいい。ドラえもんはその為にバッタの虫かごとコショウの瓶をセットで持ち歩いている。やっぱりセット販売になってるのかなぁ。 となると、このバッタにはコショウによるくしゃみでないと効果がないらしい。おそらく、コショウ成分の何らかがバッタの効能を無力化する作用があるんだ。「こよりで鼻をくすぐればいいじゃん」などと言うのはアサハカな素人だ。コショウでなければいけないんだ。無ければ買ってでも準備しないと、感染者の自害行動は止められないんだ。しかし、20世紀の市販コショウでも大丈夫なあたり、開発者の良心が伺える。身近なもので治療が出来る。これでいつ感染しても大丈夫。って、なんでわざわざ感染する必要が? ああ、謝ってくれないからだったね。 というわけで、みんな謙虚に生きていきましょう。そうしないと、いつ不条理な理由で訳のわからん細菌に感染させられるか分からない。清く正しく。それが美しくて。
【ひみつ道具】 ペコペコバッタ
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ぱっとしないなあ。
−大きなお世話だ。
『ご先祖さまがんばれ』 恒例・スネちゃまに自慢されて対抗心を燃やすのび太シリーズ。スネ夫の先祖が家老で、自分の先祖が狩人だったのに腹を立て、無理矢理戦場で手柄を取らせようとする。それは自分の見栄のために。
のび太の先祖は大したこと無い。狩人だったりホラ吹きだったり。のび太くんはそんなご先祖さまが気に入らない。だってのび太は権力好きだから。彼の中では職業に貴賤がアリアリだから。 のび作(ご先祖)は、山の中でうさぎや鳥とか大人しい動物を狩って生活している。イノシシなんて大物にはちょっと腕が足りなくて手が出せない。のび太くんはそんなご先祖さまに戦争で手柄を立てさせようと、いろいろひみつ道具をのび作に貸し与える。しかし、のび作はその道具を使って戦争に行くわけではなくイノシシ狩りに使用、そして立派なイノシシを初めて仕留めたのだ。 のび作にとって幸せってそれ。狩人なら立派な獲物を仕留める、それが狩人の幸せってやつでしょう。のび太に「ダメな人」なんて言われる筋合いは何処にもなくて。戦争なんてする気がハナから無い人間に、「さあ戦争を」なんて言われても、どうしろっていうの。なんでのび作は戦わなくてはいけないの? たかが小学生の見栄の張り合いのために。 余談であるが、スネちゃまは確かに武家の家系だ。のび太が過去にちょっかいを出さなくても、侍として家老までは行かなくても活躍していたと思われる。スネちゃまの家にはそう言ったお宝が受け継がれていても、なんら不思議はないのだ。ご先祖はそんなだし、パパはテレビ局の社長と友達だし、すごいなぁ骨川の家系って。
【ひみつ道具】 タイムマシン/タケコプター/透明マント/スーパー手袋/タイムテレビ
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すずしくなるって、いつごろだ。
十一月ごろ。
−なんてナイスな。
『かげがり』 庭の草むしりをパパに言いつけられたのび太君は、暑さを理由に11月までそれを拒否。当然叱られるが、のび太君はそれを理由に親子関係に不信感を抱く。彼のすさんだ影は従順なフリをしてパパの言うことを聞くが、次第に表面的人格を喰いだそうと目論んでいるのだった。
のび太君は学校の成績が悪く、当然国語の成績も悪いはずなのに、ときどきナイスな受け答えをこっそりしている。たかだか草むしりごときで、「自分はこの家の本当の子どもじゃないんだ」と妄想大暴走。すごいぞのび太の思考回路。さすが事業をおこすだけあるよ。 そしてのび太君は相変わらず言うことを聞かない。パパの言うことだけじゃなく、ドラえもんの言うことも聞かない。あれほど「30分だよ」と念を押しているのに(ドラえもんにしては珍しく!)、結局おおざっぱにしか受け止めてなかったので後でえらいめにあう。 ドラえもんは自分の道具の詳しい取扱説明をしない。のび太が道具でトラブる原因の殆どがそれだ。しかし、初期ではこのようにドラちゃんはきちんと説明している、でものび太は守らない。だからきっとドラえもんは愛想を尽かして、「説明はしない」になったんだ。 いやまて。違う。 ドラえもんはロボット。だから、持ち主(のび太)の最初の行動が基本行動として、すり込み現象のようにプログラムされるんだ。最初がこんなだったから、ドラの中で「説明不要」がインプリンティング。なのでこれ以降、ドラは取説をやろうとしないんだ。のび太、自業自得。今もこれからも。
【ひみつ道具】 影を切る鋏/かげとりもち
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のび太くんは、口がへただから、そんをしてるよ。
−下手が理由か?
『おせじ口べに』 鏡の前で買ったばかりの服を試しているママや、気持ちよく絵を描き終わったパパに対して容赦なく悪口雑言を叩きつけるのび太。その思いやりの無さを「口べた」の一言で片付けてのび太は、おせじ上手になるためにドラえもんの道具に頼ろうとする。
ママ、鏡の前でいい気分なのに。それを笑って「デメ金」って。パパにはなんて言ったんだろう、「下手だなぁ」とかかな? 『口べた』と『思いやりの欠如』は根本的に違うと思う。誰だって悪く言われたら腹を立てる、それに気づかないのびちゃんはデリカシーなさすぎ。ドレスアップしたママに対していきなり爆笑だなんて、失礼にもほどがある。 そしてその後のおせじトーク。そんなホメ殺しなおせじで、いったい誰の心が動くというのか。まあ、何を言っても相手を喜ばせる効果のある口紅かも知れないけど、いきなり実の息子に「ママ、女優さんになれるよ」とか言われて、誰が信じるか。その息子はさっきまで自分のことを「デメ金」って言ってたのに。調子よすぎ(しかしパパもママも、さっきまで自分を悪く言っていた息子に何事もなかったように接している。大人だなぁ)。 普通、悪口言われた後のとってつけたような褒め言葉は逆効果以外のナニモノでもないんだけど、それが無いって事は、やっぱり口紅自体にその「相手メロメロ効果」があると思われる。だって、ただ犬を褒めていただけのトークに後ろにいた泥棒が反応している。泥棒を褒めた訳じゃないのに。けっこうひみつ道具は広範囲に影響を及ぼすものが多い。もしもボックスみたいなものから、こんなちっちゃいものまで。さすが22世紀だ。
【ひみつ道具】 おせじ口べに/悪口べに
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ハハハ、通信簿が、オール五だったらという話さ。 そんなこと、ありっこないじゃないか。
−パパ、サイテー。
『一生に一度は百点を‥‥』 宿題がなかなか進まないのび太くんに業を煮やして、ドラえもんはどんな難題でも解けるコンピューターペンシルを出しちゃう。その効果に味を占めたのび太は、みんなの宿題からしずちゃんのパパのお仕事まで、調子に乗って解いちゃって、案の定ジャイアンに目を付けられる。
江口の嫌いな子供のしつけに、ご褒美型というのがある。『○○をやったら、ご褒美として××をしましょうね』というやつだ。野比家でもときどきそれは行われるが、まあ使い道を誤らなければ効果的なしつけの手段ではある、特に子供時代には。 しかしご褒美と、口からでまかせとは全然違うものであって。 パパ、いくらなんでもそれはないだろう。そりゃああんたの息子は出来が悪いさ、一生オール5なんかにはなれないだろう頭さ。それにしたって、もう少し信用してもいいんじゃないか? ひみつ道具の存在を知らないのだから、息子が「パパ、ぼくは今学期、オール5の成績をとるよ!」と言ってきたら「お、とうとうやる気になったかマイ・サン!」ぐらい思うだろうよ。なのに思いっきり冗談扱いしてんのな。「おまえの言うこと、何でも聞いてやるよ」という言葉の裏には「やれるもんならやってみな」という卑下がありあり。「そんなこと、ありっこないじゃないか」。パパ、もう少し自分の息子を信じようよ。 せめてものフォローは、(仮に)今学期頑張ったのび太が、ちょっとだけ成績上がったとしよう。その時に「世界一周は無理だけど、頑張ったんだから遊園地に行こうか?」ぐらいの、予期せぬご褒美を用意してくれていることだ。約束していないご褒美、これは結構効果的。初めから鼻先にニンジンをぶら下げておくより、あとから支給されるボーナス。うれしい効果が高いほど、持続も長い。子供の教育に限らず、いろいろな場面でためせるのでゼヒ。
【ひみつ道具】 コンピューターペンシル
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忘れもしない、昭和三十四年十一月三日に公園で。
−細かっ!
『プロポーズ大作戦』 野比夫妻の結婚記念日。楽しい晩餐の筈が、どっちから先にプロポーズをしたかで大モメ。しかたなくタイムマシンで調べに行くが、結論として、ドラえもんがいなければ二人は結婚しなかったことが判明。セワシが送り込んだドラえもんは、こんなトコロにまで影響を及ぼしていたのだった。
結婚記念日ならまだしも、プロポーズされた日を覚えてるか? 一般論で言うなら、パパというものはそんな記念日を真っ先に忘れてしまうだろう。でも覚えている。しかし、のび助なら分からなくもない。結婚して12年もたつ女房相手に、赤くなりながら花束を買って帰るのび助。真珠のネックレスを贈ったり、釣った魚にもきっちり餌をやるなかなか見上げた男だ、のび助。息子と居候の前で平気でノロケるのび助。仲良いなあ、この夫婦。こんなのび助なら、ああ、記念日は事細かに覚えているだろうよ。 いや、もともと何かの記念日なのかなぁ。わざわざこの日を指定するなんて。たまたま祝日だったから印象に残ってるだけなのかなぁ。だとしたらちょっとがっかりだ、のび助。いやいや。きっと二人は新しい文化を築こうと、毎年この日はデートをすると決めているんだ、きっとそうだ。そのぐらいロマンチックなことを想像させてくれ。そうじゃなきゃ、わざわざプロポーズ記念日を覚えている理由がないんだから。
【ひみつ道具】 タイムマシン/ヒトマネロボット
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おれたちのしずちゃんが。
−みんなのアイドル?
『○○が××と△△する』 予定を書き込めば、どんなことでも必ず実現されちゃう不思議メモ。突然ドラ焼きが食べられたりなんて朝飯前。いち小学生が郷ひろみと電話で話すことも、いち小学生が他人の家の電話に頼まれもしないのに出ちゃうことも朝飯前。なんだってできちゃうよ、すごいね!
しずちゃんはみんなのアイドルだ。周りにはいつも男の子達がとりまいている。のび太はそんなアイドルしずちゃんと二人っきりで勉強が出来るとなっておおはしゃぎ。それに対してジャイアンの怒り爆発「俺たちのしずちゃんが!」 ジャイアンがしずちゃんに対してこのような反応をしたのは江口の記憶している限りこれだけです(『のび太の結婚前夜』でうらやましがるのがあるけど、それはそれ)。アイドルであるしずちゃんにラブラブ光線を出すことは、剛殿にはまずありません。のび太は四六時中煩悩全開、出来杉君はしょっちゅう連れ出し、スネ夫はそのナンパ師トークの対象にきっちりしずちゃんを含んでいる。しかしジャイアンだけは、そんなしずちゃんラブの熱狂が感じられない。後にも先にも、江口はこれだけだと思っている。男・ジャイアンに恋愛感情が無いのかと言えばそうではなく、結構恋煩いも山のように。しかし、しずちゃんはどうもタイプではなかったらしく。人の好みは十人十色。ということで。
【ひみつ道具】 かならず実現する予定メモ帳
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おかしくなったんだ。
−そう思うよなぁ。
『雪でアッチッチ』 あべこべアイテム第2弾。寒さに弱いことを馬鹿にされたのび太とドラえもんが、あべこべクリームを塗って冷たいものが熱く、熱いものが冷たく感じるようになる。北風はあたたかい南風。雪は火傷しそうに熱く、わかしすぎたお風呂で凍り付く。
さっきまでコートを着てマフラー巻いてた野郎が突然ぱんつ一丁で現れたら、誰でもそう思うよなぁ。スネちゃま、あなたの感想が一番正しい。でもその直後、やっぱりのび太の状況を正常と信じていきなり脱ぎ出す貴方もちょっとおかしくて。 スネ夫をはじめ、のび太の友人達はとっても素直だ。昨日まで、ほんの数分前までおマヌケでトロくて何にも出来ないのび太が、突然なんでも出来るスーパーマンになってもなんの疑問ももたない。先の『一生に一度は百点を‥‥』でも、突然勉強の出来るのび太の「日頃の努力が実を結んだんだ」なんて嘘八百をきれいに信じる。きみたち、純粋だー。 しかし、なぜ君達は、「またドラえもんに何か借りたんだろう」と思わないのだろう。真横にドラえもんもついてきているというのに。そんなに存在感がないか、彼は。
【ひみつ道具】あべこべクリーム
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べんりなランプだ。
−ストーブもマトモに点けられないのに?
『ランプのけむりオバケ』 ランプを擦ってでてきた魔人に願い事をすると、なんでもどんな無理なことでも叶えてくれる。しかも回数制限もなく。なんて便利な道具だろうと、のび太くんは宿題をやらせたり小遣いを百万円せびったりする。少しは考えろ。
便利か? 本当に便利か、それ? この魔人ロボット、自力では何もできません。やれることは他人の拘束と恐喝、強盗。のび太くんが託した願い事は5つ、『ストーブを点ける』『宿題をする』『遊ぶものを用意する』『お菓子をもってくる』『百万円もらう』、このどれ一つとして魔人が自力でやったものはありません。魔人としての能力は、どんなものを備えているのかまったく謎です。最初の望み、ストーブを点けるときに魔人は点け方を知らなくて、ドラえもんを引っ張り込んで代わりに点けさせました。この時、魔人はドラえもんから点け方を教わったのでしょうか、そして次からは自分で点けられるのでしょうか。 あ、トランプで遊んでる。ということは、遊び方は誰かに教わったわけだ。ということは、学習能力はあるのな。ご主人様が増えるたびに、出来ることが増えていく。現在の魔人はレベル的にどの程度なんだろう。そしてどこを目指しているのだろう。 ロボットはまだまだ発展途中。頑張れ22世紀。
【ひみつ道具】 アラビンのランプ
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あんなもの、乗れたって乗れなくたって。 人間の値うちとは関係ないや。
−ひがみ口調でさえなければなぁ。
『走れ!ウマタケ』 竹と馬のあいだの子で『ウマタケ』! 動物と植物とで交配できるなんて。22世紀はなんてグレイト。ウマタケはニンジンが好き。屋根なんかもひとっとび。ちょっと気位が高いので、汚い足で踏みつけられると怒ったりするけれど寝顔は可愛い。 そんなウマタケと、のび太くんの成長を描いた感動ストーリー。嘘。
のび太くんが運動オンチなのはよく知られたこと。でも馬には乗れるんだ。いつものストーリーなら、どんな便利な道具を出しても使いこなせないのに。掴まるだけの動物に乗れたためしもないのに。でも結構、スピードあるものにのび太くんは怯えない。ヘタレ具合を見てみると、たとえばオープンカーなんか怖がりそうなものだけど。意外な発見です。 さて。珍しい話として、この結末、『のび太くんが努力の末、何かを成し遂げる』です。最初からそれをテーマに狙ったのではなく、イベントを起こす(この場合、ウマタケを無くす)ためだけにのび太くんに竹馬を乗らせます。で、結果的に全身に怪我しながらのび太くんは乗れるようになる。これで今度からのび太は「竹馬に乗れる」というスキル持ち。自転車に乗れないのび太だけど、竹馬には乗れる。微妙に人間の値うちに関わってきたりして。 しかし、竹馬ってのはなぜああ乗ることを強要されるのだろう。いまなら一輪車か? 江口の姉の代までは、小学校で必ず練習させられていた。竹馬なんて、わざわざつくらなくちゃいけないのに(家の物干し竿を犠牲にしてまで!)。空き地で子供達がウヒウヒいいながら乗り回し、パパも張り切って作る。それほどまでに竹馬とは挑み甲斐のある世界なのか。少年をやめたパパを張り切らせるほどに。そして22世紀で馬とかけあわせるほどに。竹馬の魅力とは。次回に続く。嘘。
【ひみつ道具】 ウマタケ
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