天かける
使の翼



空を飛ぶにはどうすればよいか?
物理的にいうなら、物体に力のベクトルが重力と反対の方向に働くように力を加えればよい。しかも、重力以上の大きさか、又は同じ大きさで作用しつづければよい。
では、どうすればよいか。
ロケットやミサイルについては例外なのだが、空を飛ぶものほとんどは翼を持っている。もちろん、ヘリコプターについても同様である。鳥や飛行機の翼はベルヌーイの定理に基づいて成り立っており、これらの飛行を可能としている。ベルヌーイの定理とは、「流体の圧力と流速の積は一定である」という定理である。ここで言う流体とは空気のことで、(もちろん水でも成り立つ)このことにより翼の表と裏に空気に圧力差(翼の裏の圧力が大きくなる)を生じさせ飛んでいるのである。つまり、この法則を成り立たせれば誰でも飛行は可能となる。もちろん、大きな物体を持ち上げるほどの圧力差を発生させるには、それなりの翼の大きさと速度が必要となってくる。
ここで筆者は疑問が浮かんできた。
よくヒーローの中に翼を持つものがいる。彼らは自由自在に空を舞い、世のため人のために悪と戦っているのだ。代表的なヒーローにX-Menのエンジェルが上げられるだろう。
彼は不幸な運命を背負いつつ日夜がんばっているのだが、筆者は常に疑問に思うことがある。
翼と自重のの関係はすでに述べた。非常に関係が深い。エンジェルの姿を見ると翼の大きさが、空を飛ぶには小さすぎるような気がする。エンジェルの身長が約180cmとすると、翼長(翼を広げて翼の先から先まで)はざっと見積もって2〜3mぐらいだろうか。このサイズの翼で彼は劇中を飛び回り活躍している。ちなみに、世界最大級の鳥類はコンドルなのだが、体長130cm(尻尾まで入れて),翼長は約4m,翼面積はたたみ一畳半ある。さらに鳥類は骨を空洞になっており、体重は見た目以上に軽い。60kgの生物が翼で空を飛ぼうとするのならば、大体幅90cmの翼で翼長16mは必要と考えられている。このデータを見ても飛べるような気がしない。
しかし、これは空想の世界。翼のサイズなどどうでもよい。飛んでいるのだから飛べるのだろう。(こんな強引なことことでいいのか?(笑))
こんなことよりも、筆者が疑問であるのはエンジェルの「骨格」についてである。
はたしてエンジェルの”肩”の骨格はどのようになっているのだろうか。鳥類の肩から先には翼しかないが、エンジェルには翼のほかに「両腕」が付いている。単純に考えるなら背中から生えているのだが、羽の付け根はどうなっているのだろうか?おそらく、関節なのだろうが、どこについているのだろうか?
ここで、下の図1を見て欲しい。





図1


これは通常の人間の肩関節である。上腕骨は肩甲骨と連結している。肩甲骨は鎖骨に固定され、鎖骨は胸の中央の胸骨に支えられている。ここで、肩の位置・固定などの大きな要素を占めているのは肩甲骨である。肩甲骨は腕を動かすと、上腕骨を安定させるため鎖骨との連結部分を中心に移動する。鳥類も同様な骨格で上腕骨の先に翼がついている。もちろん肩甲骨もある。ということは、翼と腕を両方とも持つエンジェルは骨格的には腕が全部で四本あるものと考えられるだろう。そうすればエンジェルの”肩"の骨格を考えることができるだろう。
これらのことにより、「エンジェルの”肩"の構造」は2種類考えることができる。
一つは肩甲骨にさらにもう一本上腕骨がつくという構造もの(図2)。もう一つは鎖骨・肩甲骨・上腕骨のセットがもう一組あるという構造のもの(図3)という、2種類の骨格構造である。






               

図2                                        図3


これらの図では上腕骨1を腕、上腕骨2を翼の骨と考えている。図1はシンプルな骨格となっているが、一つの肩甲骨に上腕骨が二つついているため片方の上腕骨を動かせば、もう片方の上腕骨まで動いてしまう。すなわち、翼用の上腕骨2を羽ばたかせると、その動きに合わせて腕用の上腕骨1も動いてしまう。飛行中は腕もバタつかせると言う無様な飛行スタイルとなってしまう。
すると、劇中のように腕と翼を独立させて運動させるには、図3の様にそれぞれが独立した骨格のほうが適していることがわかる。
これで、長い間、疑問であったエンジェルの骨格の謎が解けた。さすがミュータントと呼ばれているだけはある。
それにしても、一度失った翼がまた生えてきたのだがどうしてなんだろうか? 普通、脊椎動物は関節ごと失った組織は復活しないんだけどな。
やはり、ミュータントだからか?(笑)
エンジェルも超回復能力を持っているのかも。


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