●頸損って何?
 
■ 人の身体は、頭蓋骨から骨盤まで、脊椎という、そうですね・・たとえて言えばドーナツに似た骨、それが積み重ねたようになって身体を支えています。いわゆる背骨です。背骨という穴のあいたドーナツの中を、脳が命令を下すための神経(脊髄)が通っているのです。
 手足の末端までつながっていて、身体の活動をコントロールしているわけです。
 脊椎(背骨)と脊髄(神経)は、首の部分・胸の部分・腰の部分、に分けることができます。
 脊髄は、脳から命令、痛い・熱いといった知覚、手や足を動かすなどの運動機能、その他にも排便を促すとか心臓を動かすといったこと、あるいは体温を調節したり性に関する機能などなどを伝えます。
 ですから、もし怪我や病気でどこかが切断されてしまうと、伝達を受け持っていた箇所の機能はもちろん、その箇所を通っていた下の箇所すべても、脳からの命令が届かなくなってしまうということになります。
 このように脊髄が破壊され、中の神経が切れてしまって知覚や運動の機能が麻痺してしまった状態が脊髄損傷です。
 脊髄損傷となる原因は交通事故などによる背骨の骨折・脱臼といった外因性のものと、 脊髄の炎症や腫瘍ができるなどの内因性のものがあるようですが、いずれにせよ、一度破壊された脊髄組織は、二度と元に戻ることはなく、知覚や運動の麻痺は生涯つづくことになります。
 また、脊髄損傷は、それを因にさまざまな別の傷害もひき起こします。
 神経因性膀胱などによる排尿・排便機能の障害、起立性低血圧や体温調節機能の障害、呼吸機能の障害などなど。褥瘡(床ずれ)もやっかいです。      
 脊髄損傷者は、年々およそ5千人くらいずつ増加しているとのことです。たいへんな数です。
 その原因は資料(脊髄損傷データベース)に譲りますが、脊髄損傷者になる危険性はいたって日常的な場所に潜んでいて、たいていは突然にやってきます。
 近年の医学の進歩とあいまって、重度な部位の損傷者でも人工呼吸器を使って生存できるようになってきています。重度であればあるほど人への依存度も高くなるので、この先もっともっと介護の手が必要となってくるはずです。介護体制の充実をお願いしたいと願うばかりではあります。