World Cup 観戦記

6月1日 ドイツ8vs0サウジアラビア(札幌) Fujita
 フランスに行きそびれて4年。ついに、ついに、ワールドカップを観戦できる!!!
 サポクの仲間達と関空に向かった。関空にはイングランドサポーターがぞくぞくと到着していた。おぅ〜ワールドカップが始まったんだと実感した。札幌のラーメン横丁では、前は日の丸、後ろは韓国国旗という姿の少し足の悪い白人のおじいさんとあいさつを交わした。街のあちらこちらでドイツ人らしき人たちが札幌を散策している。日本人と外人さんがどちらともなく声を掛け合っている。なんか急に日本が国際化している。これがワールドカップ効果なんだ。
 ホテルのロビーでは、レッズユニ姿の私に「ウラワレッズ」と声をかけられ、「何で知っているの?」と思いながらも、ひいきのチームが国際的に有名になったようでなんだかうれしい。
 スタジアムでは、予告された本人確認は一切無し。手荷物検査もいつもの通り。わりとスムーズに入場できた。しかし、キックオフになっても空席が目立った。売り切れのはずなのに・・・。後から判るのだが、やはり海外販売分で売れ残りが出ていた。フランス大会の空売り・偽造に続く、チケット問題だ。見たくてもチケットを入手できていない日本人はたくさんいるのに。
 選手入場のMusicが変わった。あの「チャンチャカチャンチャンチャー・・・」(FIFAアンセム)のようなアドレナリン分泌が無い。それでも、待ちに待ったワールドカップ初観戦に鳥肌が立った。
 試合はドイツの一方的な内容。ドイツはボールを持つと、相手DFの裏へどんどんボールを込んで、飛び出したFWがゴールを狙う。一方のサウジ代表はやりたいはっきりしない。プレスもかからない。まるで、大人と子供のサッカーみたい。

6月1日 アイルランドvsカメルーン(1−1) by 東京支部長
 新しいF.I.F.A.のテーマにのって両チームの選手が入場してきた時、思わずウルッっときてしまったのはテレビ観戦していた方も同じだったのではないでしょうか。我々の住んでいるこの国でついに始まるのです。ああ至福の一ヶ月が・・・。しかも、そのKICK OFFのホイッスルを日本人が吹く事ができるなんて、F.I.F.A.もたまには粋な計らいをしてくれるじゃありませんか。感謝しましょう。
 新潟の人がこれだけたくさんのアイルランド人を見たのは、いや日本人が本物の”サポーター”というものを目の当たりにしたのも初めてだったでしょう。帰りのバスの中で聞いたところによると、さすがに全員が本国(アイルランド)から来たわけではなく、アメリカ、オーストラリア在住のアイリッシュも集結したとのこと。またみんな滞在先は東京だけでなく、神戸、高知等全国各地から新潟に集結したことも。(もちろんカメルーンもそうでしょうが。)う〜ん、両チームサポーター達にも感謝です。
 試合もとてもスバラシイものでした。カメルーンの躍動感溢れる個人技、一点取られた後のアイルランドの気迫溢れるプレー。ゴール裏二階席でも、まるで”生き物”のように試合が動いているのがわかりました。同点に追いついて俄然盛り上がるサポーターにノセラレて「オランダ、ポルトガルに負けなかった実力」を、いや本物の"FOOTBALL"を見せてくれました。(キーン抜きでも。)アイルランドチームに感謝です。
 新潟の「受け入れ体制」も完璧なものだったと思います。コンフェデレーションの教訓が生かされていたようです。バスも駅も、とてもスムーズでした。新潟のボランティアの方々、感謝です。あと2試合がんばってください。
 皆さんに感謝、感謝、感謝の観戦第一戦でした。
 最後にチケットチェックについて。
 あれだけ(身分証などで)チェックすると言っておきながら、何にもありませんでした。まあお陰で助かった一人なので、あまり文句は言えませんが、チェックしなくした理由くらい発表しろよ。と言いたい。

6月2日 イングランド1vs1スウェーデン(埼玉) byFujita
 昨日、関空で問い合わせておいたTSTチケットが東京のチケッティングセンターで発見してもらえると連絡を受け、国際フォーラムへ向かう。そこでは既に1人の日本人が座り込んでいた。どうやらチケットの発券をめぐるトラブルのようである。センターのスタッフは、全て外国人(中国系、欧州系らしい)である。日本語はできるようであるが、日本人と交渉するようにはいかない。私のチケットについて問い合わせると、白人女性に「キャンセルされました」と言われた。何で! 昨日までネットで確認できたのに! それから、発券してほしいと交渉しても全然受け入れてもらえない。チケットは余っているはずなのに。これもグローバルスタンダードか・・・
 もう一度ネットで確認するためnakata.netへ。ネットでは「受理されました」「割り振られました」の文字が確かにある。ちょうどそのとき、センターの外国人から携帯に連絡が入った。しかし!日本語ができないらしい。こっちは英語ができない! 片言の英語ではらちがあかない。困っているとnakata.netのスタッフの女性が通訳をしてくれた(英会話のスキルが必要としみじみ思った)。チケットは割り振られていないのでもう一度最初からやってほしいとのこと。ネットの表示がまぎらわしいんじゃい!と頭にきながらも仕方ないのでネット販売にトライするものの混んでいてアクセスできず。
 埼玉スタジアムに向かうバスに乗るため、さいたま新都心駅へ。既に沢山の人でにぎわっていた。もちろん両国のサポーターも沢山いる。サポーター達は、ピンバッチや国旗カラーに塗ったサングラスやチケットフォルダーなどを売っていた。こうやって旅費を稼いでいるのだろう。
 さいスタへの道は渋滞もなくスムーズに流れた。スタジアムの周りもお祭り騒ぎである。国旗をマントにし、顔には思い思いのペインティングをし、バイキングの帽子をかぶって、サポーターソングを歌っている。日本人もそれぞれが応援する国のサポーターと同じような格好をしている。まさに「お祭り」である。
 選手紹介でスタジアムが沸いた。イングランドの先発にあのベッカムがコールされたときである。生ベッカムはやはり格好良い、上手い。イングランドの攻撃をコントロールしていた。そのベッカムのコーナーキックを頭で合わせて先制点を上げる。ベッカムがガッツポーズを取る。ベッカムは後半途中で交代した。
 スウェーデンは8番の選手を投入してからペースをつかむ。1点を上げて、同点に追いつく。試合はそのままドローで終了。欧州の国同士の戦いであったが、黒人プレーヤーの活躍が目立った。
 スタジアムをでるときはしっかりと大渋滞。美園へ向かう列とシャトルバスへ向かう列をクロスさせて、交互通行にしているためだ。両国のサポーターを接触させないための工夫だそうだが、もう少し工夫すれば、クロスは裂けられたはず。この渋滞の中でも陽気なスウェーデンサポは歌っていた。W杯は国際交流が楽しい。
 スウェーデンサポーターは試合前にバックスタンドの売店前で応援(の練習?)をやっていた。試合中の応援は、バックスタンド側とゴール裏で応援の掛け合いが格好良かった。何を言っているかは判らないが、掛け合いになっているのである。これが格好いいのである。

6月2日 アルゼンチンvsナイジェリア (1−0) by東京支部長
クレスポ、アイマール、キリ・ゴンザレス、途中交代ででてきたメンバーである。なんと豪華な、なんとうらやましい国(経済状態を除く)なんだろう。そして相手はスーパーイーグルス。あのアトランタ五輪の決勝の再現ではないか!(選手もほぼ変わっていない。)こんな試合を日本で、車で観に行けるなんて…。試合はややナイジェリアが引き気味。それを強引にこじ開けようとするバティ、C・ロペス。と思ったらオコチャの怒涛の突破、そしてバズーカ砲のようなシュート!こんな試合日本で観てイインデスカ!イインデス!4年前は格下の我が代表相手に、明らかに手の内を隠して戦っていたアルゼンチンが、この「死のF組」突破の為に今回はこの初戦に賭けているという気迫がゲームをとてもヘビーなものにしてくれ、0−0で後半に。後半開始早々、突然座り込むカヌー。中盤の柱を突然欠いたスーパーイーグルスは徐々にペースが狂い始め、ご自慢の4バックが浮き足出す。“魔法使い”が4回とも同じところに蹴ったコーナーキックは、やはり「まだまだ手の内は見せない。」という事なのか。得点になる前のコーナーではニアポストに3人が走り込み、ファーにはバティ1人がまわり込むパターン。そして“バティゴール”になったコーナーでは2人がニア、2人がファーへと走り込むパターン。う〜ん福島Jビレッジに練習見に行こうかな。
ナイジェリアが後半少し乱れてしまったが、コレぞワールドカップの一戦だった。最後にカシマの受け入れ体制に物申す!
・ パークアンドライドのシャトルバスの終点からスタジアムまで遠すぎ。
・ 案内表示が小さく、しかも人間の背より低いところにあるので見えない。
・ 関係者用に無駄な駐車場作りすぎ。
そして表示の無い帰りのシャトルバス(駐車場行き)には駅行きと間違えたアイルランドサポーターが10人くらい。まあ彼らは間違いに気がついても、「間違えた。間違えた。バスが違う。」とか「ロイ・キーン帰ってきてくれ〜」と歌ったり、運転手に「新宿まで行こう。」などと騒いでとても楽しそうでしたが…。

6月3日 イタリアvsエクアドル(札幌) byFujita
 昨日の朝チェックアウトしたホテルに舞い戻った。既にロビーではエクアドルサポーターが大騒ぎ。今夜は寝られないかも・・・。
 スタジアムの中では、思い思いの格好をしたサポーター達であふれていた。中でも人気は、カラフルな採りの格好をしたエクアドルサポのおじさんだ。アメリカ大会やフランス大会でも人気だった有名人(?)。日本人に囲まれて、「だぁ〜」と叫びながら記念撮影。次から次へと記念撮影を頼まれて、まるでディズニーランドのミッキー状態。
 イタリアは言わずと知れた「イケメン軍団」。この日は伝統の3バックを4バックに変更していた。フォーメーションを変えても、やはりカテナチオは固い。イタリアの上手さ、トッティの上手さが目立った試合だった。
 観客は発表では前回と同じ31000人だったが、見た感じでは前回より少なかった。
 試合後、すすきのでエクアドルサポーターが騒いでいた。試合に負けたけど、陽気である。これまでに見たサポーターは、みんな思い思いの格好をしてWカップを楽しんでいる。みんな人生を満喫しているような明るい顔をしていた。
 それにしても、繁華街にはいろんなことを期待してTVカメラが集まっている。TVカメラの前ではそれぞれにパフォーマンスを見せている。TVカメラの存在がサポーターをあおることになっている。
 街には既にイングランドサポーターの姿があった。7日までここで待つのだろう。チームを追いかけて移動し、それぞれの街をゆっくりと楽しむのだろう。4年後、ドイツでそのような旅ができるかな。いやそうしよう!人生にはそれくらいの余裕があっても良いだろう。 

6月4日 日本2vs2ベルギー(埼玉) byFujita
 昨日までは第3国の「一観客」。しかし、今日の試合は日本の「サポーター」。4年越しの日本戦に気合いが入る。スタジアムの周りではブルーのシャツの日本サポーターと赤い角の帽子をかぶったベルギーサポーターが一緒に写真を撮ったりして、決戦前の交流を楽しんでいた。
 埼玉スタジアムはブルーに染まった。昨日までの試合に比べて空席は少ないものの、メインスタンドの記者席上の特等席がまとめて空いている。もしかして、このあたりは各国の協会やスポンサーが持っているのかも。一方でチケットを入手するために大変な苦労をしても入手できない人が沢山いるのに、スタジアムにこんなに空席があるというのはおかしい。会場での観客数発表は5万2千人。先日のイングランド戦と同じであるが、見た目であきらかに今日の方が多い。先日は5万2千??
 いつもはゴールシーン以外は「おとなしい」ブルジョア席(メインスタンド、バックスタンド)も、今日はいつもと違った。着席はしているものの、声と手拍子で声援を送った。そうスタジアム中が声援を送った。
 試合は初戦の緊張なのか「負けないための戦術」なのか、積極的に仕掛ける様子がない。しかし、ベルギーが1点先制してから試合が動いた。直後に伸二からのパスを鈴木が押し込んだ。その瞬間スタジアムが「瞬間お祭り騒ぎ」に。その後、2点目を入れてリードしたが、追いつかれて結果はドロー。この日、このスタジアムで、日本中でどのくらいアドレナリンが分泌されたのだろうか。まさにゴールの瞬間は「熱狂」である。
 審判のスキルには疑問が残る。こければすぐにファールを取るため、試合が度々止まってしまう。
 帰りは浦和美園行きの列とシャトルバス行きの列をクロスさせているため大渋滞が発生。そもそもクロスさせるような誘導には疑問が残る。更にバスは新都心駅での事故のため動かない。しかたなく、美園駅に向かった。当然混雑しているが日本人も外人も暴れることなく流れていた。

6月5日 ロシア2vs0チュニジア(神戸) byFujita
 日本の対戦国をしっかり見ておこう。神戸まで日帰りだ。・・・・といっても東京から東京への日帰りだけど。
 神戸はバックスタンド席。兵庫駅から延々と歩かされた。しかし、歩きながら両国のサポーターと楽しめばいい、これもW杯だ。歩き始めると早くも陽気なロシアサポーターと遭遇。「ブーブー」と大きな笛を鳴らしながら、歌いながらスタジアムへ向かう。スタジアムの入り口では、両国のサポーターと日本人が一緒に歌い踊っている。
 いよいよキックオフ。前評判ではロシアの完勝。しかし、実際ロシアはそれほど圧倒的ではない。パスミスも多いし、チュニジアのDFを崩すこともなかった。
 一方のチュニジアは言われてたほどひどくない。むしろロシアより良い。パスもつながる。
 試合は、チュニジアGKのミスから奪われたボールをロシアに入れられてロシアが先制。この後、集中が切れたのか、ロシアが優勢に。そして、PKでロシアが2点目をゲット。
 両国とも恐れるほどのことはなく、いつもの日本の試合をすれば勝てる。しかし、油断は禁物。注意するのは、チュニジアの6番の選手の駆け上がり。
 試合後は駅までのろのろと歩かされたが、陽気なロシアサポーターの歌と踊りのおかげ(?)で楽しく歩けた。

6月5日 ドイツvsアイルランド (1−1) by東京支部長
よくロスタイムに同点や逆転、試合を決めるシュートが決まると「奇跡の…」と言われるが、果たしてロビー・キーンの同点弾は「奇跡」だったのであろうか。私は違うと思う。残り15分で1点を取るために投入された長身のクインを徹底して使った事(チームの決め事)、それは彼らのパターンであり周りと息が合っていた事(練習の成果)、そして何よりサポーター達が後半歌い続けた事(選手に勇気と自信と集中力を与えた)の結果なのだ。もっともドイツもだらしなかった。デフェンスは堅かったが中盤は創造性に欠け、期待を裏切った。バラックはどこにいたのか。ヤンカーは何度チャンスをフイにしてしまったのか。しかしそれを差し引いても見ごたえのあるスバラシイ試合だった。カーンの声は観衆の声に消されること無く響き渡り、フォワードの方がビビッテしまうような飛び出しを何度も観る事ができた。またニールセン氏のレフェリングをこの日観られたのも貴重な経験だった。少し運動量が足りない気もしたが、4年前ベッカムに退場を出した貫禄は十分覗う事ができた。
アイルランドのチームは本当に幸せだ。遠く海を越えて12番目の選手として戦ってくれるこんなに素晴らしいサポーターを持っているのだから。そしてサポーター達も幸せだ。期待と声援に魂のこもったプレーで応えてくれる代表チームがいるのだから。初戦のカメルーン戦の後はまだ「PLEASE COME BACK ROY KEANE」と歌っていたサポーター達だが、この試合が終わった後、“闘将”の名前を呼ぶものはいなかった。もはや彼の闘魂が、残った22人の選手達の心に宿ったのを確信したのかもしれない。

6月6日 カメルーン1vs0サウジアラビア(埼玉) byFujita
 さいスタ前ではカメルーンサポーターが太鼓をたたきながらやってきた。たちまち日本人に囲まれて記念撮影。札幌や神戸でも同じような光景があった。6年後のドイツ大会では、日本人もこれくらいのパフォーマンスで記念撮影を求められるようになるのだろうか。
 どこにでもいるのが「I want tickets チケット譲ってください」と書いた紙をもった外国人。4年前の日本人と同じだ。しかし、違うのは、今回はスタジアムに空席があるのにチケットがないということ。まったくはずかしいかぎりだ。今日は、残ったチケットは追加販売で完売しているはずなのに、まとまった空席がある。日本人も外国人も見たい人は沢山いて、スタジアムには空席があっても入れない。最初から日本の印刷会社にまかせておけば、こんな事態にはならなかったのではないか。
 カメルーン側のゴール裏には、民族衣装を着て太鼓を打ち鳴らしアフリカのリズムを刻む一団がいる。まるで出陣の儀式をやっているかのようであった。
 サウジは前回の試合から立て直してきた。チャンスはカメルーンより多かった。ただシュートが枠に飛ばないから、得点につながらない。攻め上がっても、他の選手の上がりが遅いからチャンスにできない。一方のカメルーンはすばらしい身体能力を活かしたプレーを見せてくれた。
 売れ残りチケットの販売方法が発表された。今回、普段からサッカーを応援している人たちでチケットを手にできていない人も多い。初めてサッカーを見る人も普段から足繁くスタジアムで応援している人も同じ条件で販売というのははたして公平なのだろうか。もちろん初めてサッカーを現場で観戦してこれからサッカーを好きになってもらうのはいいのだが。

6月7日 ナイジェリア1vs2スウェーデン(神戸) byFujita
 2回目の神戸日帰り。しかも行きは飛行機だ。新幹線より飛行機の方が安いからだけど。
 スタジアムの入り口では、ナイジェリアサポーターの集団が歌いながらやって来た。すると周りからどんどんサポーターが集まり、どんどん集団が大きくなっていく。ゴール裏に陣取った彼らは独特のリズムで応援を始めた。
 ナイジェリアは高い身体能力を活かしたサッカーを見せてくれた。先制点は、ナイジェリアがゲット。しかし、ナイジェリアGKのミススローから追いつかれる。先日のチュニジアのGKと全く同じミス。スローを相手選手に渡してしまった。そして、これまたチュニジアと同じようにPKで決勝点を与えてしまう。
 2点目を失ってからカヌーを投入するも、4年前の切れはなかった。
 チケットは追加販売で完売したというだけあって、席はほとんど埋まっていた。
 神戸のゴール裏の下の方は、傾斜が緩く、立つとグランドが見えない。こちらのゴールへボールが近づく度に立ったり座ったり。上の仮設スタンドくらいの傾斜があれば見やすいのだが。先日のキリンカップのときにはグランドに降りれる状態だったが、最前列にワイヤーが張られて、グランドに降りれないようなっていた。

6月7日 アルゼンチンvsイングランド (0−1) by東京支部長
私は人生においてあと何試合こんなに興奮する試合に出会う事ができるだろうか。なにせこの試合のチケットを手にした時から、私の心臓は1オクターブ高い位置で鼓動を続けていたのだが、いざ席についてみると、なんとそこはメインスタンド、真中、最前列だったのである。多少の誇張を許していただければ、私は90分間息をしていなかった。する事ができなかった。
16年前、あの神の手ゴール・伝説の5人抜きゴールの試合は、信じられない事に日本では生中継が無く、どーしても生で観たかった私はその日、英国大使館に直接出向き「BBCの放送をみなさんと一緒に見たいのだが、入れてくれないか。」と頼んだ経験がある。(結局断られたが…)今回こんな席を用意してくださった「サッカーの神様」に感謝している。(実際チケットを取ってくれたのはドイツ人の知り合いだったのだが)イングランドのサポーターも迫力満点だった。試合前浴びるようにビールを飲み、歌を歌い、楽しそうにスタジアムに入って行った彼らは、試合が始まると一転、試合に集中し笑顔を見せない。明らかに選手と一緒に戦っているのだ。相手国歌がブーイングでかき消されたのは初めて見た。いつも陽気で試合中も楽しそうなアイルランドサポーターとはまったく違ったパフォーマンスだった。サッポロはウエンブリーになった。
前半はワンダーボーイのスピード、リバプールの同僚ヘスキーの正確なポストプレー、バティのゴールへの執念等、お互いオフェンスに見所がある早い展開のゲーム。後半はクールでクレバーなイングランドのデフェンスが素晴らしかった。クレスポが左右に絶え間無く動き、イングランドのセンターバック2人をゆさぶるのだが、最後まで集中したデフェンスで守り抜いた。後半攻め込まれはじめたころ、イングランドサポーターからおこった「GOD SAVE THE QUEEN」の歌声。ツボを得た本物のサポーターの本領発揮というところか。
一次リーグなのでフランスの時のような壮絶な試合にはならないのではないか という見方もあったが、やはりこの両国の間には想像を超えたライバル意識、いや敵対心がある。試合終了後のユニフォームの交換が無かったのは言うまでも無い。とてもクリーンな試合であったが今後もこの両国の戦いは特別なものになるであろう。この試合に立ち会えたことをサッカーフリークの一人として誇りに思う。感慨あふれたサッポロの一夜であった

6月8日 番外編 byFujita
 今日は鹿島でイタリア戦、TSTで取れたと思っていたら、実は取れていなかった因縁の試合。インターネット販売でゲットを目指したが、結局取れなかった。鹿島への初見参はおあずけ。
 で、今日は収容人数20万人(?)の赤坂のイタ飯屋でTV観戦。半分は外国人。近くのウィークリーマンションに泊まりながら、毎日ここでビール片手の観戦を続けているドイツ人、見るからにイタリア人に、アフリカ系・・・もちろんウェイターはイタリア人。自然と、みんなイタリアを応援している。
 先制はイタリア。その瞬間、店内は大歓声! 「今日は半額だ!」 ワインもすすむ。
 しかし、クロアチアが追いつき、あのラパイッチの芸術的逆転ゴール! 終了前には幻の同点ゴール。リプレイで見る限りノーファウルではないか。前半のと合わせて2点目。試合はこのまま2−1でクロアチアが勝った。イタリア人はかなり悔しそうである。半額・・・も消えた。
 中国戦終了後、うわさの六本木に遠征。しかし、いつもの六本木であり、特に騒ぐサポーターもいなかった。

6月11日 ドイツ2vs0カメルーン(静岡) byFujita
 掛川駅の次、愛野駅からスタジアムへ向かう坂を上る山の中腹にライトアップされたスタジアムが浮かんでいた。
 坂道の途中で、チケットの色による進路分けをされた。しかし、その先で、その進路が合流する。なんのために進路分けしていたのか・・・。帰りのバス乗り場でも、同様のことがあった。誘導の意図が判らない。
 お互いに決勝リーグ進出がかかった試合は最初からヒートアップした。ヒートアップした試合を押さえるためか、レフリーはどんどんイエローを出す。しかし、試合はヒートアップする一方だ。結局、16枚のイエローが飛び交った。前半にドイツは退場者を出してしまった。
 後半、10人のドイツが先制。付き合いの良いカメルーンも退場者を出して10人に。10人対10人になると、ドイツが2点目をゲット。全体的に荒れた試合で、ファールで試合が止まり、面白くなくなった。後半30分頃からは観客も帰り始めた。
 観客が早い時間に帰り始めたのは、スタジアムの交通の便が悪いのも一因なんだろう。山の中で、JRとバスしかない。帰りは大渋滞だ。シャトルバスで掛川駅に出るまで1時間もかかってしまった。こんなに不便なのに20時30分のキックオフは遅すぎる。帰れない観客の宿泊を期待した熱海は予想外の空室に困惑したようだが。
 この日、各地のパブリックビューで日本人が大暴れしたしたようだ。大会前に外国からくるフーリガンが警戒されたが、結局暴れているのは日本人ばかりだ。それも普段サッカーを見に行っていない連中だ。普段サッカーを見に行っているサポーターが止めに入っている。お祭りを楽しむのはいいが、楽しみ方が違う。フーリガンまで真似る必要はない。

6月12日 イングランド0vs0ナイジェリア(大阪) byFujita
 静岡から大阪に向かう新幹線は既にイングランドサポーターで一杯だ。名古屋、京都と間の駅で更に人数が増えていく。大阪に着く頃にはまるでサポーター列車と化していた。
 新幹線を降りたところには、(初めてみる)外国人のダフ屋が手に沢山のチケットを握って、「Ticket」と売っていた。その周りには「need ticket」と書いた紙を持った外国人・日本人がいる。売りたい人と買いたい人が混在。見たい人の手にチケットが行っていないのだ。
 長居の駅からスタジアムに続く道には、ユニフォームや帽子を売る人たちの露天が続く。こんなのは他のスタジアムでは無かった。さすがに商人の街大阪である。(商売をしているのはほとんど外国人であるが・・・)
 スタジアムの中はまるでイングランドのホームゲームであるかのようだ。9割以上がイングランドの白と赤で埋められていた。
 最初は、ナイジェリアペース。双方とも攻めるが得点には至らず。グランドの気温は30度を超え、選手の動きが重くなっていく。後半30分程から両チームとも引き分け狙いというか攻めなくなった。
 結局、0−0の引き分けでイングランドの決勝リーグ進出が決まった。決勝リーグに進むチームの圧倒的な強さを見せて欲しかった。

6月14日 チュニジアvs日本 (0−2) by東京支部長
“THE DAY COMES”ついにその日がやってきた。97年あのジョホールバルで夢を現実にさせて以来の目標であった「ワールドカップベスト16」という悲願を彼等、いや我々はついに勝ち取ったのである。山は登る為にあり、壁は超える為にある。目標を明確にし前進する日本サッカーを誇りに思う一日であった。
2週間前に新潟での日本での開幕戦はまだ初夏を思わせる乾燥した暑さだったのに比べて、この日の長居は我々の心の中のように蒸し暑く、そして何より青く染まっていた。これまでの日本の2試合は共にテレビ観戦だったので、これだけ青く染まったスタジアムには正直驚いた。
前半は意外にも守りを固めて攻撃を仕掛けないチュニジア。対して日本は勝ちたい気持ちが伝わるような攻撃を展開した。「引き分けでいい」などと考えているものが一人もいないことがはっきりわかった。後半出てきた森島。だれよりもこのピッチを知り、だれよりもここでゴールを決めたかったこの男がやってくれた時、スタジアムが揺れているのがわかった。二点目はヒデ。オリンピックでのゴールを思わせるダイビングヘッドだった。アシストした市川のボールも素晴らしかった。4年前の経験を本当に有効に成長してくれている。この後、後ろでボールをまわして、みんなで「オーレ!オーレ!」とやりたかったのは私の考えが古いからのだろうか。しかしみんな本当にたくましくなった。精神的にも体力的にも。これなら胸を張って「BEST16」を名乗れる。「大阪までもたないのでは」等と言ったのはどこのシロウトだ。
ひとつだけ気になった事があった。それは試合終了後、選手達がサポーターへ挨拶しなかった事。目標はまだまだ上にあると言う事なのか。並んで手を揚げるくらいしてほしかった。(94年のアメリカは国旗を掲げて一周まわったぞ。)
日本サッカーに携わり、昔の数々の教訓を盾に若年層から指導されてきた方々にお礼申し上げたい。そして日本のサッカーを愛するすべての方々とこの喜びを分かち合いたい。
帰り、余韻に浸っていてスタジアムを遅く出てしまったので梅田のホテルまで2時間以上かかってしまった。もちろん全然苦にならなかったが・・・。

6月15日 イングランド3vs0デンマーク(新潟) byFujita
 ちょうど1年前、コンフェデカップで訪れた新潟。あのときは、高松からプロペラ機で名古屋、名古屋からバスで8時間かけて新潟へ楽しいバスツアーだった(詳しくは観戦記)。さすがに1人の今回は羽田経由新幹線で新潟へ向かう。・・・が、この辺りにはすてきな露天風呂がたくさんある。ついつい途中下車してしまった。時間もあるし、これくらいの余裕があってもいいだろう。駅のそば屋のおばちゃんは、重いテーブルやイスを片づけるように言われているのだけどこんな田舎にまでフーリガンが来るのかねと困惑気味。
 新潟に着いたときには、既に駅前は両国サポーターとにわかイングランドサポ(日本人)であふれていた。相撲取りの着ぐるみを着た外国人が「アケボノ、アケボノ」と叫び、ゆかたをイキに(?)着こなした外国人など、それぞれに日本を楽しんでいるようだ。パッチもんのユニを売る外国人を発見。「How mach?」に彼は「ナナセンエン」。3枚買うから5000円にしろと言ったが、「NO、ロセンエン」。・・・交渉決裂
 「スワン」の名が付くスタジアムは、今回の10会場のなかでも特に美しい外観を持つ(内部はサッカー専用でなく、グランドが遠いところが残念)。そのスタジアムの中は今日はイングランド一色。360度をイングランドの応援旗が埋め尽くしていた。
 イングランドのコーナーキックのチャンス。ベッカムが蹴る瞬間、スタジアムのあちらこちらでフラッシュがきらめく。フラッシュの光がGKをまどわすのか、見事に決まるのである。イングランドはオーエンも初得点を決め、前半だけで3点をあげた。デンマークもトマソンを中心に良い攻めを見せるが、決定力がなく得点に至らない。シュートの本数はデンマークの方が多いが、枠に飛ばない。
 後半開始間もなく、ゴール裏ではダンスが始まった。通路を肩をつないだサポーターの列が歌い踊っている。このダンスはすぐにスタジアム中に伝染する。スタジアムのあちらこちらでダンスが始まる。外国人も日本人も入り交じったダンスはしばらく続いた。
 試合後、「しばらくスタジアムの中に留まってください」というアナウンスがあった。他の会場では早く出るようにと言われ、出たら大渋滞という状況だったがここは分散させるように考えられていた。
 日本人のパフォーマンスも徐々にエスカレートしている。フェイスペイントはもちろん、侍スタイルなど奇抜さを競っている。スウェーデンのバイキングスタイルのように日本らしい応援スタイルを模索中といったところか。

6月15日 デンマークvsイングランド (0−3) by東京支部長
いよいよトーナメントに入ったこの大会。日本での最初のこの試合は、A組1位vsF組2位という組み合わせであった為、当初はフランスvsイングランド、もしくはフランスvsアルゼンチンになると思われていた。しかし蓋を開けてみればフランスは敗退、堅実な守備と巧みな試合運びで勝ちあがったデンマークを観られることとなっていた。しかし試合開始早々のイングランドの得点で集中力を欠いたのか、終わってみれば3−0という大味な試合になってしまった。1点目と3点目は明らかにミスからの失点だけにデンマークにとっては悔いの残るものになってしまった。
実はこの日、我々はデンマーク選手と同じホテルに滞在であり、スタジアムに来るためにエレベーターに乗ったところ、六人くらいの選手に囲まれてしまったという貴重な体験をしていたのである。その場ですかさず団長が「GOOD LUCK DENMARK!」と言ったところ「どうせイングランドを観に来たんだろ。」みたいな事を言われてしまったのだが…。
翌朝私はもっと驚くべき体験をしてしまったのだ。ホテルのレストランで朝食を食べていたら、な、なんとあのジーコが奥さんと一緒に入ってきて私の隣の席に座ったのである。軽く会釈をし笑いかけ「MORNING!」と言ったところニヤッと笑ってくれたのだ。その後は緊張で何をどう食べたのかまったく覚えていない。奥さんとポルトガル語で話始めたのでそれ以上話かけることはできなかったし、カメラも持っていなかったので証拠も無いが、神様の横ですごせたホンの10分間くらいの時間は、私にとって忘れられない体験であった。ちなみにレストランは早朝であった為、私達以外はだれもいなかった。だれもいないのに私の隣に座ってくれたのはなぜだったのだろう。
食事の後、無性にボールを蹴りたくなったのはなぜだろう。今回の観戦ツアー(大阪、新潟)の素晴らしいオマケであった。

6月18日 番外編 byFujita
 今日、日本代表の2002年ワールドカップが終わった。トルシエ・ジャパンの最後のゲームになった。不安と歓喜の4年間であった。トルシエの戦術や采配が問われながらも、世界ユース準優勝、アジアカップ優勝、コンフェデレーションカップ準優勝、ワールドカップベスト16とこれまでにない輝かしい成果を残してくれた。
 開催国としてのワールドカップは後10日程で終了する。今回は開催国としてベスト16入りがノルマとして課せられ、その目標達成のために強化が図られてきた。その成果が上にあげた結果である。大会後も強化の手を緩めないで、これまでの強化路線を継続して欲しい。国体のようにはならないで欲しい。次の目標を立ててしっかり前進していくことが必要である。
 目標は少しだけ高めの方がいい。達成してしまった場合、次のモチベーションを上げるのは難しい。一方で実現不可のな目標でもモチベーションは上がらないから。次の目標はベスト4だ!
 次の監督として、何人かの日本人の名前があがっているが、まだ今の日本には外国人監督が必要だ。
1.日本人では、既にW杯で実績を上げた選手達からなめられる可能性がある。選手を統率するにはトルシエくらいの強引さが必要。
2.協会の言いなりにならない。フランス大会の前、当時の岡田監督は強化のための練習試合のセッティングを求めた。しかし、協会はJリーグのスケジュールを優先した。一方、トルシエはJリーグの日程を変更しても代表の強化を求め協会の協力を取り付けた。協会から協力を取り付けるためには、(ベンゲルのように)協会から絶対の信用を得るか、(トルシエのように)強引に要求を押し通す必要がある。日本人監督では無理だろう。
3.選手が海外へ出て最新のサッカーを体験し身につけてくるのだから、指導者も海外へ出て最新のサッカーを勉強し体験した人材である必要がある。
 新監督には、A代表だけでなくユース代表やオリンピック代表を含めて一貫した指導をお願いしたい。
4.名前があがっている日本人はこの4年間または6年間にどれだけ進歩したか疑問だ。ここに来て4年分(6年分)後戻りするわけにはいかない。
 トルシエは、その強烈な言動で私達を驚かせてくれた。協会と対立してまでも要求を押し通す日本代表監督を初めて見た。代表選手を叱りつける激しい指導。「赤信号でも車が来ていなければ、自己責任で渡れ」と日本人に意識改革を迫った。手腕を問われながらも実績を残してきた。協会やサポーターを含めた日本人に強烈なインパクトを与え変革をもたらした。日本が世界に飛び出すための荒療治だったのかもしれない。ありがとうトルシエ。
 トルシエ・ニッポン! トルシエ・ニッポン! トルシエ・ニッポン!

6月21日 イングランドvsブラジル (1−2) by東京支部長
1970年メキシコW杯以来の対決となるこの試合、「事実上の決勝戦」と騒がれていた。期待が大きい割に凡戦になってしまう事が多々あり、この試合もそうだったとする声もあるようだが、私は「あまりの期待の大きさにサッカーの神ばかりか、悪魔まで観に来てしまった。」と感じた試合だった。そう悪魔はGKの国イングランドのベテランGKに取り付いてしまったのだ。あのロナウジーニョのFKの場面、私のいたゴール裏から見た感じではロナウジーニョのキック・ミスに見えたのだが、後でリプレイを見ると確かにシーマンは前に出ていた。そしてキックは確かにシュートだった。
前半は見ごたえのある展開だった。予想通りオーウェンは不安視されていたブラジル・ディフェンダーを切り裂き、ブラジルの3Rはそのスピード、テクニックで強固なイングランドのセンターバック2人を慌てさせ、ロスタイムには「コレぞブラジルのゴール!」というスーパーゴールを見せてくれた。しかし後半、ロナウジーニョ(1ゴール、1アシスト、退場付のワンマンショーだった。)が退場となりイングランドが攻勢にでるかと思われたのだが、暑さの為(天気もよく気温は高かったがそんなに湿度は高くなかった。しかも後半はグランドのほぼ全面が日陰げになっていて、そんなに暑くはないハズ。)か動きが悪く、決定的と思われるシーンに至らなかった。
ベッカムの奮闘には拍手を送りたいが。私のお気に入りのスコールズがまったく冴えないのに交代させなかった事、そんなに悪くなかったオーウェンを交代させてしまった事、一人多い時間が長くあったのに有効に使えなかった事、そして何より悪魔に好かれてしまったシーマン。イングランドには悔いの残る一戦になってしまった。
最後に静岡エコパについて。今回、新幹線掛川駅からのシャトルバスを使用したのだが、バスを降りてから30分以上歩かされた。たしかに山の中の不便な所にあるのだが、普段もこうなのだろうか。サッカー専用ならまだしも、陸上競技場である。こんな山の中でお客を呼ぶようなマラソン大会を開けると思っているのだろうか。しかもここは日本で一番サッカーが盛んな静岡ではないか。他に場所はなかったのか。日本平ではダメだったのか。首をかしげたくなる大会会場であった。

6月30日 決勝 ドイツvsブラジル (0−2) by東京支部長
今までW杯で対戦のなかった両国。最後にサッカーの神様は私達に“これ以上ない”BIG MATCH を用意してくれた。しかしこの両国がここで決勝を行うのには強い“縁”があったのだ。日本はその昔、東京オリンピック開催にあたりFIFAにコーチの派遣を依頼した。そこで来日したのがデットマール・クラマーというドイツ人であった。彼の熱心な指導のお陰で日本はその後メキシコ・オリンピックで銅メダルを獲得、以来彼は“日本サッカーの父”と言われるようになり、彼の教え子達は彼との約束により、指導者となるべくドイツ各地に指導者留学し、今の日本サッカーの基盤を作りあげたのである。日本人のプロ1号の奥寺氏もこのような背景からドイツ・ブンデスリーガからお声がかかったのは記憶に新しいところだ。また頃を同じくして起こった日本リーグブームで、各チーム(当時は企業)が「安くて質の良い助っ人を」と連れて来たのがブラジルからの日系であった。ブラジルでは日系というだけで陽の目を見なかった“ネルソン吉村”“セルジオ越後”“ジョージ与那城”らは日本人に足りなかった技術とエッセンスを我々に伝授してくれ、後に帰化し代表として戦ってくれた“ラモス”“ロペス”“アレックス”らブラジルからの宣教師は今も後を絶たない。ドイツとブラジル。日本サッカーの“父”と“母”である。
スタジアムに入ると同時に私の視界の右上には赤い字で「REC」の文字が点灯した。これから起こるすべてを脳裏に焼き付ける為にである。試合前のセレモニーで、和服姿の女性がバックスタンド前タッチラインにズラッと並び(6〜70人はいただろうか)、例の今回のテーマ曲にあわせて一斉にこちら(正面スタンド)に向かって歩いてくるシーンがあった。彼女達の後ろから、ドイツとブラジルのとてつもなくでかい国旗(グランドの1/4はあろうかという大きさ)を従えてである。これは迫力だった。日本人の我々がビビッてしまうのであるからして、正面スタンドで観ていたVIPを含む外国人の驚嘆は相当のものだったはずである。日本色を出しシンプルで且つ強烈なインパクトのセレモニーだった。
試合前トイレに行こうとしたら、前からエメ・ジャケが来た。すかさず一緒に写真を撮ってもらった。その時、「PLEASE BE JAPANESE TEAM’S MANAGER」と言ったら、がっちり握手してくれた。これって??? トイレで隣でしていたのはなんと都並だった。「2−0ですかね?」の問いに「いや2−1だね。」と答えてくれた。試合は予想を裏切り、ドイツが攻撃に出た。いや出てくれた、と言ったほうが良いのかもしれない。フェラーは「負けてもイイ。攻撃の手をゆるめるな。ブラジルを、世界をアッと言わせてやろう!」てな事でも言ったのかもしれない。もしそうだとすれば素晴らしい監督ではないか。ネガティブな発想に進歩はない。ドイツ・サッカーの為、世界のサッカーの為に「守って守ってカウンター一発!」という古いスタイル(我々の予想)を一掃した戦いを選んでくれたのだ。お陰で“魂”と“魂”がぶつかり合うような試合になってくれた。
中盤を支配したシュナイダー、ブラジル人かと思われるような身のこなしと運動量で最後までブラジルデフェンスを翻弄したノイビル、3R相手にディフェンスで素晴らしいアタックを繰り返したハマン、リンケ、ラメロウ、そして熱い中にも冷静なカーン。(またしても悪魔が観に来てしまったのか!)ドイツは最後になって最高のパフォマンスを見せてくれた。中でもノイビルには驚いた。あんなフリーキックはロベルト・カルロスにしかできないものかと思っていた。願わくば、ドイツが先制してほしかったのだが…。この試合だけを観にドイツから千人以上のサポーターが来てくれたらしいが、彼らも満足だったであろう。そしてブラジル。素晴らしかった。“ブラジル”だった。ビデオでしか見た事ないが、ペレが率いた70年のブラジルチームのようだった。ティームの規律の中に、王国が誇る“個人プレー”が見事にマッチしていた。ロナウドは4年間この大会の為にリハビリと調整を続けてきていた。あの日の悪夢を振り払う為に。自分とブラジルが失った“王者”の誇りを取り戻す為に。彼は間違い無く「他の人間と違ったスピードの世界に生きる」怪物だった。またその怪物を操ったのがリバウドであり、ロナウジーニョであった。怪物を操れるのもまた怪物だ。リバウドの左足は破壊力抜群で且つ変幻自在だった。ロナウジーニョは“アンタッチャブル”だった。この怪物3人に左右からロベルト・カルロス、そしてカフーがオーバーラップする。またルシオのオーバーラップも迫力満点だった。本当に観ているだけでワクワクするティームだった。正直なところ私は昔からアンチ・ブラジルである。痛くもないのに痛がって時間稼ぎをしたり、個人で目立とうとするそのワガママなところが嫌いだった。しかし今回のティームは違った。ほぼ全員がヨーロッパでプレーしているせいかティームの規律は保たれ、醜い時間稼ぎもあまり無かった。(リバウドはまだ時々そういうところがあるので好きになれないが…。)2点目が入ったところで試合は終わりかと思ったが、ゲルマン魂は最後までボールを追ってくれた。嬉しかった。間違い無く90、94、98、をしのぐ決勝戦だった。
本当にこの試合を観られてよかった。いやサッカーに出会えてよかった。こんな興奮、感動をなんと表現してよいのか。文字で表現する事はできない。私はそのすべを知らない。
カフーが壇上にあがりトロフィーを掲げた時、これを見た日本人は何を感じただうか。私は…。今は言えない。口にしたくない。思い出となって出ていってしまいそうだから。口にすると叶わなくなってしまいそうだから…。
一つだけ言えること。「2006年7月10日。また立会いたい。」熱いハートに横浜の霧雨が気持ち良かった。

6月30日 ブラジル2vsドイツ(横浜) byFujita
 ついにこの日がやって来てしまった。1ヶ月前、わくわくしながら札幌に飛び立ってから、早くも1ヶ月が経った。この1ヶ月間にいろいろなことがあった。夢のような1ヶ月だった。日本全国飛び回った。こんなに飛行機に乗ったのも、外国人と話したのも(カタコトなので会話にはなっていないが・・・)初めてである。
 巷では、ロナウドのヘアースタイルが話題になっていたが、まさかあの大五朗ヘアーはいないだろうと思ったが、羽田空港でいきなり大五朗カットのブラジル少年に会った。さすがスーパースターである。あのヘアースタイルさえも流行らせてしまうのだから。新横浜の駅は既にサンバのリズムがあふれていた。スタジアムに近づくにつれてそれは”カーニバル”へと進化していく。「えっここはどこ?」「ここはリオ?」 一見日本人なんだけど、ポルトガル語で歌い踊っている人も多い。おそらく日系ブラジル人なんだろう。外国人のおじさんが、「サンマサン、サンマサン・・・」とつぶやきながら歩いて行った・・・何か勘違いしている。スタジアムに続く道は、明らかにカナリアイエローが多い。みんながチケットを持っているとは限らないが、今日の試合はブラジルのホーム状態になることは容易に想像できた。
 慌てて入場したため、スタジアムの入り口を間違えてしまった。ボランティアの方に事情を説明すると「ついて来てください」と言われ、ついていくと、なんとVIP席の真ん中を突き進んでいく。VIP席の入り口のチェックもクリアーだ。VIP席だ・・・ボールをもらう前のヒデのようにキョロキョロと見回してしまった。先導するボランティアの方が「監督ですよ」というから見ると、そこには「長島前巨人監督」がいた。あっという間にVIP席を取り越してしまったが、なんだか入り口を間違えて得した気分になった。
 試合前にセレモニーがあった。スタジアムのあちらこちらから出場32カ国の国旗がグランドに降りてくる。決勝を戦う2カ国の国旗は特大サイズだ。この2カ国の国旗を先導してきたのは、数十人の”仲居さん”である。まるで温泉旅館の雰囲気だ。次は真っ黒な集団が登場・・・あの走り方は・・・”ニンジャ”だ。忍者達は丸い布を激しく揺らし始めた。するとどんどん布が上へ延びていく。やがてそれは”富士山”になった。ピッチ上にブラジルとドイツの国旗、和服の女性と忍者、それと富士山が揃った。妙なアンバランスさが良い。オープニングの韓国色に対して、エンディングでは日本色で対抗したのか。
 試合前、コンコースで二谷幸喜と肩が接触した。有名人もたくさん来ているらしい。仲間が水沼氏を見かけた。
 長い歴史の中で、以外にも初めての対戦となったブラジルvsドイツの好カード。試合は、両キーパーの活躍で1点を争う好ゲームになった。前半は0−0。後半にゲームが動いた。リバウドの強烈なシュートをGKカーンがキャッチできずにこぼしたところに、ロナウドが走り込み先制点をゲット。後から判ることだが、この前の接触プレーでカーンは右手の指を怪我していた。2点目もリバウド&ロナウドでゲットする。センターリングをリバウドがスルー。それをロナウドがシュートした。
 ドイツも攻めるが、フリーキックをブラジルGKマルコスがはじき出すなど、ブラジルの壁を崩せずタイムアップ。2−0でブラジルが5回目の優勝を決めた。
 喜びを全身で表すブラジルの選手に対して、グランドに座り込むドイツの選手が印象的だ。ゴールポストにもたれかかりうなだれるカーンに、ドイツの選手が1人づつ歩み寄り声をかけていく。優勝と準優勝では天国と地獄の差がある。
 表彰式では、台に上ったリバウドがトロフィーを掲げ上げた瞬間、銀色のテープが打ち出され、スタンドには270万羽の折り鶴が舞った。折り鶴が空を飛ぶ様子はとてもきれいだった。
 試合後、VIP用の通路にいたでヒディング監督と目が合った。とりあえず「日本を頼む」とアイコンタクトで送っておいた(笑)。
 出口までの退路の両脇には、ボランティアの方が並んで「さようなら」「ありがとうございました」と手を振ってくれた。今大会どこの会場に行っても、たくさんのボランティアの方が観客のために一生懸命尽くしてくれた。外国人から英語やポルトガル語で声をかけられても、それに対してきちんと受け答えしていた。日本人の語学力がこんなに高いとはほんとうに驚かされた。試合中も試合を見れずに持ち場を守っていた。こちらこそ「ありがとう」と言いたい。
 お祭りが終わってしまった。たくさんの驚きや発見があった。この1ヶ月で日本が少し変わったように思う。たくさんの人がボランティアで働いた。たくさんの人が外国人と触れ合った。流ちょうな英語でコミュニケーションするおじさん・おばさん・茶髪の兄ちゃんに驚き、日本語とボディランゲージと太鼓でしっかりコミュニケーションする姿にたくましさも感じた。たくさんの人がサッカーのおもしろさを知った。田舎のおばちゃんまでもがベッカムに沸いた。日本が出ないのに決勝戦の視聴率は65%にも達した。みんな”サッカー症候群”にすっかり感染してしまった。明日から、サッカー無しでどうやって生きていくのだろうか。さみしくなる。
 しかし、既に4年後のドイツ大会に向けた戦いは始まっているのである。次期日本代表監督が誰になるのか熱く語り合おう。Jリーグを見に行こう。お金と有給休暇を貯めよう。ドイツ語と英語を勉強しよう。ドイツの国と人について勉強しよう。さぁみんなでドイツに行こう!