一度に3回分の料金を支払うだけで、5回以上利用可能に!
業界での一人勝ちも夢ではありません!


1.本システムの概要及び特長

 本システムは,元本保証付きの投資回数券方式であるとも言われ,時間・空間を有効に使用し潜在需要を新たな需要として確保する方策を基にしたものです。
   なお,本システムは,実空間(橋・高速道路・輸送媒体・娯楽施設・スポーツ施 設・宿泊施設等)を利用するサービスの課金システム(料金徴収システム)に有効で あり,一方,携帯電話の着メロ・音楽配信・映像配信等におけるデジタル・コンテンツ(2)の課金システムにも応用できるものです。  
(1) 本システムの概要
   本システムで使用する度数は,図1に示すような状況で総売上高YTと前売締切日からの日数によって度数が変動するようになっています。
 この図1に示すものは,本システムの一例(たとえば,橋の利用サービスについて)であり,その概要について次に示します。1年間の総売上目標額Zを200億円とし,4月1日の最多度数は,10×2×365=7,300度数(1回利用(3)当たりの必要度数E0を10度数とします。)とします。ただし,3月30日及び3月31日については60度数に統一します。
 @の4月1日時点に本システムにおける利用サービスを開始したとき(前売りは行うものとします。),その時点の総売上高YTによる度数は,2,000度数です。したがって,200回の権利回数(4)が確保されたことになります。販売価格Kが30,000円とすると1回当たりの料金は150円となります。
 ところが,Aの8月1日時点の度数が4,000度数になった場合,4月1日の開始時点より度数が多くなりますので,請求により,4,000度数から開始時点の度数を差し引いた度数がさらに追加されるものとします(5)。したがって,合計400回の権利回数が確保されたと考えることができます。販売価格Kが30,000円ですので1回当たりの料金は75円となります。
 しかしながら,4月1日ではなく,Bの12月1日に本システムにおける利用サービスを開始したときは,その時点の総売上高YTによる度数は,2,200度数です。したがって,220回の権利回数が確保されたことになります。販売価格Kが30,000円とすると1回当たりの料金は約136円となります。なお,Aの4,000度数と差し引きは行いません。

図1 総売上高に対する度数(目標200億円の場合)  (曽根康仁が作成)

(2) 本システムの特長
   本システムの特長は,多くの利用者がより早く本システムにおける利用サービスを受けることにより,それぞれの利用者に対して利用する権利回数が度数という形で増加するということです。また供給者の利益増大(6)にもなります。
   たとえば,チケットの購入者数がより早く増加することによって,3回分の額になる利用料金を支払うだけで,5回以上の利用ができるようになります。
 需要者サイドに対しては,満足感の増大を与え,供給者サイドに対しては,利益増大が期待できます。さらに,需要者サイドと供給者サイドの余剰を合成した社会的余剰の増大に貢献することになるでしょう。
 


(1) 度数による利用促進策を本稿において度数システムと呼ぶことにします。
(2) ソフトウェア,音楽データ,映像データ等,デジタル・データとして流通可能なものです。
(3) 片道を1回と考えるものとします。
(4) 一般の「マイレージ制度」のように得られた権利回数というポイントを種々のものに交換できる使い方も可能です。
(5) 購入日を考慮した度数をさらに追加することも考えられます。
(6) たとえば,通常年一回利用する個人が3回分の額になる本システムにおける利用サービス料を支払うことにより供給者サイドの利益増大になります。

2.本システムの検証
既存の理論を中心に考えられる問題を基に本システムを検証すれば次のようになります。
1) 収支均衡については,一年間の総売上目標額を設定しそれを基に度数を決定しているため,常時収支均衡を目指すシステムになっています。
  (参考)ラムゼイ・プライシング(7)
2) 多くの利用者で使用する場合の料金において,多くの利用者がより早く本システムにおける利用サービスを受けることにより,1回分の利用料金を安く抑えることができます。
  (参考)ラムゼイ・プライシング
3) 本システムによる方策は,既存の料金制度をそのまま存続し,その上にプラスしたものですので,選択的(二部)料金制の特長を持っています。
  (参考)選択的(二部)料金制(8)
4) 定期料金制度を導入することは,運営において不確実なところがあると思われるので難しいところがあります(9)。しかし,本システムによる方策によって,利用サービスの権利回数が究極的に増加した場合は,定期料金のような運用が可能です。この場合供給者サイドとしても一年間の総売上目標額Zを達成したことになりますのでこの運用に対して問題はないでしょう。
  (参考)選択的(二部)料金制
5)

度数という概念で扱っていますので,オフ・ピーク時またはピーク時等のときに必要な度数を通常より減少させたり,増加させたりすることができます。したがって、ピーク・ロード プライシング及び混雑税のような運用をすることが可能です

  (参考)ピーク・ロード プライシング(10)と混雑税(11)
以上のことから本システムの方策は,独自の利点の上にさらに多様な問題のスペクトルに対して処方を与えるものであると言えるのです。


(7) 交通サービスを行うものの収支均衡を前提に考えて,できる限り適正な資源配分を行おうとする理論です。 
(8) この料金システムは,従量制と定額制の組み合わせが多数存在し,消費者が需要量に応じて選択できるものです。これは交通サービスにおける普通運賃と定期運賃に見られます。
(9) 定期料金制度を行っていない場合は,収益面を考慮した定期料金の額の設定が難しいところがあります。一方,特に年間パスポートのような年間定期料金制度を行っている場合は,その料金が高額のために有効に活用されていないことがあります。したがって,低額の料金で行う選択肢が有効であり,そこに本システムの利用サービスを適用することが可能です。
(10) 在庫調整が難しい道路サービスは,混雑時と遊休時における需要の波の存在が問題になります。この波を平準化して道路設備の有効利用を利用料金の側面から考える一つの方法がピーク・ロード プライシングです。
(11) 道路の混雑時に利用者が支払う金額を混雑税または混雑料金といいます。この混雑税を利用者が支払うことにより,道路サービスという資源は適正に配分されるのです。

3. 実空間の利用サービス,デジタル・コンテンツにおける課金システムへの導入及び効果
(1) 実空間の利用サービス,デジタル・コンテンツにおける課金システムへの導入
   前売締切日時DTOから購入可能最終日時DTEまでに本システムを開始した場合の利用期間は,開始してから1年間(12)です。(前売期間中に本システムにおける利用サービスを登録した場合の利用期間は,前売締切日時DTOから1年間(13)です。)売上高が期待どおりに伸びない場合も最少度数E1(14)は得られるため元本保証的です
 後で本利用サービスを利用するほうが多くの度数を得られるときは,差分等を増算することによって,早く本システムを利用するほうが有利であるようにします。一方,繁忙時や閑散時のときは,1回利用当たりの必要度数E0の値を増減等することにより利用変動を安定させる方策も考えられます。
(2) 実空間の利用サービス,デジタル・コンテンツにおける課金システムへの効果
@ 潜在需要を新たな需要へ拡大
潜在需要を新たな需要にすることが期待できるため,供給者サイドの利益増大に結びつけることができます。本システムを実施することによりネットワーク外部効果(15)が働くことが期待できます。したがって,より多くの利用者が本システムにおける利用サービスを受けるようになると推察されます。
  (A デファクト・スタンダード(16)的な運用
本システムの利用者は,本システムの有利さのため他社へ乗り換えることは一般に行わないでしょう。一方,他社の利用者は本システムの有利さから,乗り換えて来る可能性があります。したがって,これらの性質と先述のネットワーク外部効果を併せ持つ本システムは,ディストリビューション(流通手段)を含めた種々のサービス等に対して図2に示すようにデファクト・スタンダード的に働くことが期待されます。
 
B インタラクティブ(17)的な仕組み及びユビキタス(18)的な性質
本システムにおける利用サービスの運営は,インタラクティブ的な仕組みに基づいて行うことが考えられます。さらに移動体通信端末等を使用することによりユビキタス的な性質も少なからず含まれ,需要をより高める効果が期待されます。


図2 本システムの効果    (曽根康仁が作成)


(12) この利用期間は、種々の利用サービスによって、適宜決めることができます。
(13) (12)と同様です。
(14) 最少度数E1は,購入金額を保証する度数ですが,利用をさらに促進させるために購入金額から計算した場合より,多い度数とする運用も可能です。
(15) あるネットワークが大きければ大きいほどそこから得られるメリットが大きいという効果をネットワーク外部効果といいます。
(16) 「事実上の業界標準」の意味で,誰が決めたわけでもなく,市場での競争の結果として,大多数の市場参加者によって認知された標準のことです。
(17) 双方向ということです。
(18) いつでも,どこでも,誰とでもという意味です。