〜記憶の散策〜
文・上山 環三
十三年ぶりにくぐるその門は、記憶の中のそれと少しも変わ らず、そこにあった。 そしてその先にある、いい加減老朽化していると思われる母 校の校舎も、心なし――いや、かなり古ぼけて見えた。 「変わってないな・・・」 思わずそんなセリフが口を衝いて出る。実際、思ったより見 映えが変わっていなくて、驚いている。 さらにその先へ進む。当たり前のことだが 体育館や事務の場所も十三年前と同じだ。心の中に何とも言 えない感慨が湧き出す。私は今、高校時代の様々な思い出を鮮 明に重い出していた。文化祭で馬鹿騒ぎをしたこと、同級の高 田と殴り合いの喧嘩をしたこと(喧嘩の理由は忘れてしまった が)、放課後毎日やっていた部活動、そして――。 しかし、残念ながら感傷に浸っている暇はなかった。 私は気を引き締めると隣にいる彼女の顔を伺う。 「・・・」 「どうですか?私もあなたもここに通っていたのですよ」 「・・・はい・・・」 |
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