by くらげ
何を考えたらいいのだろう。考えることなんて何もないような気がする。気がするじゃない。多分ないのだろう。本当に。
地球に還ったとして何をする? 何か出来ることがあるのだろうか。いや、多分何もない。何も出来ない。精々が親兄妹や友達に喋り捲って、あいつは気違いだ、と後ろ指を刺されるのが関の山だ。若しくは・・・只ひたすら来たるべき時に来る死に怯え、布団の中でがたがたと震えながら泣くことが出来るだけだ。そんなものには意味がない。 どうすればいいんだろう。還ったところでだれも助けられはしない。 「・・・」 「・・・」 隣ではヌリの奴が静かに佇んでいる。空を見上げる。二つの月はどうする事も出来ないで悩んでいる俺を静かに嘲っていた。 どうすればいい? 今度は水の中を見る。こんな時でも魚達と妖精達の舞はあくまで優雅で美しく、何より優しかった。そしてこの温かみ・・・ 「俺、此処にいるよ」 開いた口から出たその言葉は何か素敵な響きがした。そうだ。これでいいんだ。還ったところで何も出来ず、誰も助けられないのなら、その絶望で苦しむよりはこの優しい世界に包まれていたい。そして死にゆく皆の分まで楽しく生きるのだ。それが俺の出した結論だった。 「どんな姿にも変えてくれるんだよね?」 「うん。君が望む姿に・・・」 悲しそうだが、目一杯喜んでくれていた。無力故に苦しんでいるのはこいつも一緒だったのだ。こいつとなら、これから先も生きていける・・・そんな気がした。 「そうだな・・・それじゃあ、くらげになりたい」 俺は順に生まれ変わり願望のあったくらげになることにした。 「わかった。何か別のものになりたくなったらまた言ってくれればいいから」 そう言うと彼は俺をくらげに変えた。 「よかったらどうだい? これから僕と一緒に暫らく漂わないか? ヌリ?」 「いいねぇ。行こう。この世界を全て廻ったら、今度は別の星にいこう。此処みたいな理想郷は少ないけどまだあるから。神の樹リヴィングストンにも逢いたいし」 「いいねえ。行こう。楽しいだろうなぁ。俺達は自由だ。何時迄も漂い、彷徨おう。何時迄も。俺達は漂泊の旅人だ」 そして俺達は旅立った。 何時迄も、何時迄も・・・ 悠久の時の彼方をめざして・・・ ――――我が心の師スナフキンに捧ぐ |
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