sakana.JPG (6332 バイト)                    by くらげ

 

 「人が知恵の力を借り地球を我がもの顔で歩いている頃、神々は集まっていた。そして話し合った。その結論はこうだよ。もはや人の好き放題にやらせる訳にはいかぬ。元々知恵が無ければ野垂れ死ぬしかなかったような生物に、我と同じ姿をしたものが虐げられるのを見るのは我慢ならん。よって、地球は一度滅ぼすべきだ・・・といった具合だ」

 「そんな勝手な!! 自分達で勝手に知恵なんて与えておいて、それによって不都合が生じたら滅ぼすなんて!! 傲慢の極みじゃないか!!」

 声を大にして言い返す。

 「理一朗・・・彼らは神なんだよ。宇宙で一番傲慢な存在なんだよ。神っていうのは。だからこそ僕も厭になったんだ。だからこそ僕は離別したんだ」

 「・・・」

 もはや何を言う気にもなれなかった。神を名乗るものが此れ程までに愚かしい存在であったとは。所詮は彼らも知恵を持つ只の獣か。我々人間と何ら変わりない。馬鹿馬鹿しい。

 「そして滅ぼす日だが・・・」

 話の続きは唐突に始まった。

 「彼らはノストラダムスに目を付けた。彼の書いた書物のなかに丁度いいものがあるではないか。それを使わない手はない。そういうわけだよ。よって、地球は1999年をもってその生涯を閉じることになる。それが彼らの決めたことだ」

 「なんとかならないのか?」

 どこかで無駄とは解っていたが、それでも尋ねる。

 「どうにもならないよ。こればかりは」

 永い、永い沈黙。それを破ったのはヌリシンハだった。

 「ねえ、理一朗・・・この星に住まないか?」

 「・・・え?」

 あまりにも唐突な提案であった。何を言われたか一瞬理解できなかった俺は、間抜けな声で聞き返した。

 「此処に住まないか? 理一朗。君ならきっとこの星の皆も歓迎してくれる。ね、そうしよう」

 「・・・」

 「なに、姿だったら君の望むものに変えることだって出来る。僕だって一応は神なんだから。ね?」

 「・・・」

「・・・」

 重い沈黙。やがて沈黙を破るべく開いた俺の口はこう言った。

 「少し・・・考えさせてくれないか?」

 と。少し考えよう・・・少し・・・

 

                       小説広場へ戻る TOP BACK NEXT