恋愛日記


<1>

 ぼくは、今、東京に向かう電車の中にいる。
 そこには、どうしても会いたい人がいるから。
 今日は、その人に初めて会える。ずっと会いたかった彼女に・・・・

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 今から、ちょうど2年前の事。

 ぼくは、周りの状況がとても嫌だった。
 何もかもに嫌気をさしていた。仕事が忙しかったせいもある。

 そして、何気に出会い系のサイトへと初めて足を踏み入れた。
 そのサイトは、個人運営で、しかも良心的と言う有名なサイト。。。
 ぼくがここに辿り着くのも、それほど苦ではなかった様に思う。

 初めは、おもしろ半分だった。何か新しいものに出会いたかったのかもしれない。
 ただ胆に、何かの刺激が欲しかったからかもしれない。

 そこには、それぞれのアピールする文章がたくさん並んでいた。
 趣味の事、仕事の事・・・・こんな人募集・・・・などなど
 そして、誰にメールを送ろうかと考えていた時、ひとつの文章に目が止まった。

 「気になったら、メールして。」

 ぼくの心は、何かに反応したかのように、その文章に釘付けになっていた。

<2>

 紹介欄で見る文章に、何故か引かれてしまったぼく。
 ここは、流れも速く、30分もすれば、その文章を探すのは
 難しくなるだろう。数多く書き込まれる、文字の渦に飲み込まれて行くからだ。

 ぼくは、迷う事をしなかった。
 初めから、一人だけにメールを送ろうと心に決めていた。
 この人を、その一人にしよう。

 初めて書く文章に、少々の戸惑いを感じながら、ぼくは言葉を選んで行く。
 しかし、どうしてもいい言葉が思い浮かばない。

 世間の人々は、一体どう書いているのだろうか。

 疑問を抱きつつも、どうせ送るなら、飾らない言葉で送ろう。
 そして、一つの文章を書きあげた。

 「はじめまして、勇(ゆう)と言います。気になったのでメールしました。
  もし、また、気になったらメールください。」

 そして、祈るように、ゆっくりと送信ボタンを押した。

<3>

 次の日、仕事を終えると、急いで家に帰ってきた。
 夜の9時を過ぎた頃だ。食事もそこそこに済ませると、パソコンの前に座る。
 メールを受信する時、すごくドキドキした。

 反面、返事がなかったらどうしよう。。。不安もあった。


 そんな不安と期待が入り混じる心を抑えている間も、メールは受信をはじめる。
 
 しかし。。。。 そこには、いつもと変わらぬ、メルマガだけが受信されていた。
 
 何だか、期待していた自分がバカのように思える。

 ふふふ。 まぁ、そんなものだよな。

 少し、自分を納得させている、自分を客観的に見てしまってる。

 さて、風呂にでも入るか。

 そこには、またいつもの自分の生活が待っているだけ。
 何の変化もなく、ただ、繰り返されて行く毎日のリズムが・・・・

 明日はいい事あるかな。
 風呂から出たら、もう一度メール受信してみようかな。
 淡い期待を胸に、リズムをこなして行く。