『ぺり肉』

  

『オリオン座の瞬き』


第一章:出会い ・ 告白

 、会社からの帰り道。
日が暮れると同時に、気温は下がり、吐く息は白くなる。
今年もまた冬の季節がやってきたのか・・・・
ふと夜空を見上げる。
空は晴れている。
そして、一面を覆い尽くすかのように散りばめられた星の数々。
その中に、一際光り輝く星の群れ。
冬の星座「オリオン座」
勇ましく、天を駆け巡っていく。
そんなオリオン座を見ていると思い出すのだ・・・・
そう、あの時の事を・・・・

***************************************

 れは、ようやく梅雨の時期も過ぎ、
初夏の香りが立ち込めようとしている7月の事だ。
俺と、彼女は、同じ女友達に紹介され動物園に来ていた。
お互い二十歳、俺はサラリーマン、彼女は大学生だった。
彼女を見た時、背が低く、かわいらしい印象を受けた。

俺「(何か、いいなぁ〜)」

彼女の方はやさしそうそんな印象を受けたようだ。


初めはぎこちない会話が続く。
だが、とても新鮮でどきどきしていた・・・・
そんな楽しい時間はあった言う間に過ぎ去ってしまうものだ。
動物園に行き、その後、食事をして・・・・
当然、会話もスムーズになっていく。
事実、時間はあっと言う間に過ぎ去って行ってしまったのだが。
夢のようとは、こう言う事を言うのかも知れない。
そして、彼女をもっと知りたいと思う、自分に気が付くのだ。

 日、俺はある決心をする。
きちんと、気持ちを伝え、付き合おうと。
電話を握り締める手が汗をかいている。
気持ちを落ち着かせようと試みるが、そんなに簡単にはいくはすがない。

鼓動は早くなり脈が乱れ胸が高鳴る。

きちんと話が出来るのだろうか・・・・
先日のようにスムーズに話せるだろうか・・・・
いろんな不安が頭の中を渦巻いて行く。

どれくらいの時間が経っただったろうか。
心を決め、電話する。

そして、気持ちを伝える・・・・・

彼女の口から出た言葉は、こちらこそお願します。
やったのだ!、彼女も俺と同じ気持ちだった。
こうして、俺達は晴れて、恋人と言うSTEPに足を踏み入れるのだ。

しかし、二人の間には距離と言う障害がある事を、今はまだ知らない。


第2章:二人で・・・

俺達が付き合うようになり、休みの日には、いろんな所に出かけた。
彼女の住むにも随分と詳しくなってきた。

俺は40Kmの道のりを、車を飛ばし迎えに行く。

山を越え、川を越え。
何の苦労があろうか。
その道も、俺達を楽しませてくれる道へと変わっていくのだ。

彼女は大学生、俺はサラリーマン
だが、平日にはなかなか会えない。
会いに行きたいと言う気持ちはいっぱいあるのに・・・
距離が邪魔をする。

もっと近くなら、毎日会えるのに・・・

そして、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎ・・・・
楽しい日々が続いていく。
今度は、あそこに行こう!こっちに行こう!
週末になるのが楽しみだ。
もちろん、電話は毎日のようにしている。
会えない分、少しでも声が聞きたい。


9月 彼女の誕生日である。
俺もいろいろと悩んだ。
何にしようか・・・何がいいのか・・・・

そして、誕生日の日。
俺は計画を立て、彼女の家へと車を走らせる。
彼女の家に着くのは、昼前だ。
昼飯を食べに行き、下調べしていたpointを通過していく。


そして、夕方。

小高い丘の上にある公園。
その公園にある展望台へと歩いていく、二人寄添うように。
夕焼けと、町並みが一体化し、絶景の眺めである。
周りにも、何組かの恋人たちが景色を眺めてる。
俺は、彼女越しに眺める。彼女を包み込むように・・・
すでに、そこはパラレルワールドとなる。
誰を、何を気にする事があろうか。
そして、用意していたオープンハート指輪をそっと指にはめる
「おめでとう」の言葉と同時に・・・・

もちろん、彼女は喜んでくれた。
「ありがとう」何度、その言葉を言っただろう。

初秋の風を受けながら、しばらくその場で町を見下ろす二人がいた。


第三章:夜空の瞬き・・・

10月 地元の祭り。
私は、祭りが大好きだ。
しかも、運営も手伝ってる。

ずっと一緒にいれない自分が歯がゆい。

しかし、祭りは大事である。
彼女の実家も同じ市なため、その気持ちは分かってくれている。
出来る限り、彼女の側で時間を費やし、祭りは終了する。

この頃からだろうか・・・・
大学でのクラブ活動が忙しくなってくる。
彼女は、演劇部に入っており、11月にある本番に向け、
毎日、練習に忙しいようだ。
俺の仕事も徐々に忙しさを増してくる。

11月 俺の誕生日
彼女もいろいろと計画を立ててくれていたようだ。
今日は、すべて彼女任せ。
言われるがままに行動する。

なんかいい。

これが、幸せか・・・・
彼女の手料理もごちそうになる。
そして、腕時計を貰った。
俺が時計が欲しいって言ってのを覚えていてくれてたようだ。
非常に嬉しい!!
こういうのって、なんかいい。

ある日、アパートの前においてあったのを、駐禁でやられた。
罰金は非常に痛いものだったが、仕方ない・・・・
そして、車の置き場所を変更する。(懲りてない)
ちょっとだけ離れた所だが、ここなら安心。

俺が帰る時は、二人手を繋ぎ、車まで歩くのが習慣となってくる。
寒くなる夜道、人通りもなくなり、二人の足音だけが響いている。
しかし、外人墓地の横を通りぬけなければならない。

でも、二人が一緒なら何も恐くなかった。


12月 寒い・・・
彼女の舞台も無事終了。
とても面白く、かわいい姿を見る事が出来た。
また少し、彼女を理解出来た気がする。
それは、錯覚か・・・?

夜は、いつも通り。
二人手を繋ぎ歩いていく。
白い息が二人を包む・・・
この道にも、随分と慣れたものだ。
ただ、変わったのは、繋いだ手が俺のポケットに入っている事。
それと、夜空にはオリオン座が西の空に輝き出した事くらいだ。
寒空に輝く星たち、冬は近くに感じるね。
いつ見ても、美しい輝き。

そんな平凡が素敵な時に思える。
ずっと、そのまま時が流れなければいいのに・・・・


第四章:やさしさ・・・

しかし、幸せな日々もそう長くは続かなかった。
ちょっとした事がきっかけで歯車が狂い始める。
彼女は、将来、東京に行きたいらしい。
そして、演劇の道を歩みたいらしい。
俺には、それを止める権限がない。
むしろ、出来れば、叶えてやりたい。
彼女の気持ちも、複雑だったのだろう。
止めて欲しい気持ち、夢を叶えたい気持ち・・・・
それも、今となっては定かではないが。
歯車が食い違うと、距離が徐々に効いてくる。

彼女にも移動手段があったなら、もっと違っていたかもしれない。
俺が平日も会いに行っていれば、違っていたのかもしれない。
しかし、すれ違いが多くなってきてる事は事実だ。

そして、とうとう・・・・
恋の炎が消える時がくる。
出会いがあれば、別れがある。
少しのすれ違いが我慢できなかった。
これが若さなのか・・・・
彼女は言った。
俺が「やさしすぎる」と・・・

「やさしすぎる」とは、一体何なのだろうか。
男が思う「やさしさ」と、女が思う「やさしさ」では
その内容は食い違ってくるのだろうか・・・・・
それ以降も、幾度か聞かされた、この言葉。
今もまだわからない・・・

12/23 奇しくもクリスマスのイブ前夜。
二人は長い別れをする。

「ありがとう」の言葉を残して・・・・


****************************************

9年の歳月を経て、偶然にも彼女と会った。
昔の面影は残っていた。
あの時より、しっかりとした雰囲気がある。
それもそのはず、結婚し、子供も出来、彼女は母親になっていた。
そして、幸せに暮らしてるそうだ。
今もあの街で・・・

        


つぎ
目次