2024年10月。江口は思い至りました。

〜江口とムーミン谷の十月〜


だって『コケモモ』で検索したら
ラズベリーやブルーベリーばっかりヒットするんですもん。

 皆様一年ぶりですね。今年も来ましたよ、江口のこんこんちきクリスマス企画。いったい誰が何を期待しているというのか。それを言っちゃあ、すてきページそのものが、いったい誰が何を期待しているというのか。むしろ誰も期待していないからこそ、好き勝手なスタンスで生きている。それが令和の個人サイト。ども、貴女の江口梨奈です。

 実は、実はも何も、江口自身はこの企画をとても気に入っています。毎年毎年、すっとんきょうなメニューをどうやってチョイスしようかと、一年かけて悩んでいます。去年の更新が終わった次の日から、次回の内容を思い悩み始めるほどです。

 というものの、そうそうおもしろメニューに出会えることはなく。

 ただ単に『世界のクリスマスメニュー』で検索したら、そりゃいまのネット時代、いくらでも情報が集まります。集まりますし、すんげえマイナーな料理も出てきます。スペキュラース(オランダ)とか、ちょっと前まで誰も知らんかったぞ。でも、そんなのもどんどん見つかる。いい時代になったもんよ。

 さて、いろいろ探しながらも「これは」というハートにヒットするものに出会えずに秋が来て。
 わたくしの職場(スーパーマーケット)でクリスマスケーキの予約活動がスタートしました。
 これがねえ、ちょっと前までは一人○件、のノルマが課せられ、達成できなかったら吊し上げを喰らうもので。今でこそいろいろ法的なアレやコレやがあってノルマは無くなったが、それでも圧はありまして。
 つまり、一人ひとつはなんだかんだ買わなきゃ肩身が狭いのですよ。
 なので嫌々ながら、今年のカタログを眺めておりましたら。

 あらいやだ、今年は銀座ブールミッシュのケーキがあるじゃない。

 吉田菊次郎先生のファンとしては、これは買わざるを得ないじゃない。数量限定だっていうなら、即買いしないと駄目じゃない。

 と、職場のクリスマスケーキノルマ問題は早々にクリアいたしまして。

 その連想から、「そうだ、今年は菊次郎先生の著作からメニューを探そう」となり、何冊かの本をめくることにしました。
 童話に出てくるお菓子とか、映画に出てくるお菓子とか、いろいろ紹介されております、が、クリスマスプディングとかパネトーネとか、すでに作っております。
 童話ねえ、映画ねえ、物語ねえ、と考えて、ここでようやっと、思い至りました、あの有名な児童文学・ムーミンに。

 そうだ、ムーミンにもあるじゃない、クリスマスの話が!

 というわけで、前置きが長くなりました。今回はトーベ・ヤンソンの名作『ムーミン』からのチョイスです。

 さて、今回のメニューは、先に言います、『こけももパイ』と『たまご酒』です。
 どこに出てくるメニューかと言うと、シリーズ3巻『ムーミン谷の仲間たち』に収録されてます『もみの木』からです。
 この『〜仲間たち』は、短編集になってまして、『もみの木』は、冬眠中だったムーミン一家が通りすがりの他種族に叩き起こされて「さっさとクリスマスの準備をしろ」と急かされるも、クリスマスっていったい何なんだよ、と分からないまま準備を迫られる話です。

 ムーミンたちは冬眠する習性です。なので、クリスマスを知りません。周りにいる他種族たちは不親切なので(ムーミンシリーズに出てくるキャラクターは、どいつもこいつも不親切で、無知な人を馬鹿にする。ムーミンたち含め)、聞いても教えてくれず、漏れ出る情報から推測し、『クリスマスはもみの木を飾り付けなきゃ』『クリスマスなる来客のためにごちそうを用意しなきゃ』『プレゼントもいるらしい』と、ちぐはぐながら準備を進めていく。

 そこで用意されたごちそうが、『ムーミン家の人たちの大すきな、ジュース、ヨーグルト、こけもものパイ、たまご酒、そのほかです。』です。

 こりゃ、作らにゃならんでしょうよ!

 ここでもう1冊、ご紹介しましょう。

 『ムーミンママのお料理の本』(サミ・マリラ/講談社)

 ムーミン谷で食べられているごちそうを作ってみよう、的なコンセプトの本です。「こんなメニュー、作品内に出てきたっけ?」とは思うけど、ま、そこはそれ、あくまでコンセプト。
 さーて、ここのなかに、果たして『こけもものパイ』『たまご酒』は掲載されているでしょうか。
 残念、無かったです。
 なので代わりに、目次『ピクニック』の項に記載の、『こけもものカルダモンケーキ』、こちらを採用することにしましょう。ほーら、早速迷走してきたよー。
 たまご酒は、ホットエッグノッグにでもするよ。

 さあ、メニューが決まったので、材料を用意しましょう。

 こけももが入手が難しそうだけど、今の時代、場合によってはAmazonでもどこからでも買えるだろう、と検索。

 『 こけもも | 検索 』

 ‥‥‥‥。
 うーん、日本では、こけももって観賞木の扱いなんだな。あと今更ながら、漢字で『苔桃』なんだ、言われてみりゃそうだろうけど、なんか意外。
 英語名が『リンゴンベリー』、うん、聞いたことないわ。
 じゃあ『こけもも』が聞いたことあるのかと言われたら、たしかに、こんなムーミンだとか、その他ファンタジーの中でしか目にしない、異世界の食べ物感あるわ。

 気を取り直して、Amazonなり楽天なりのお取り寄せサイトで、食用・食材に絞って検索してみましょう。

 ‥‥‥‥‥。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥。

 ラズベリーやブルーベリーばっかりヒットするんですけどーー!?

 えー、やだー、君たちはそう判断するんだー。
 君たちの中では、ラズベリーやブルーベリーと、リンゴンベリーは同じモノなんだー。
 じゃあいいよ、ベリーって言ってんだから、ほにゃららベリーに代用してもらうさ。
 冷凍ベリーミックスでいいよ、もう。

 あとは、カルダモン・クローブ・シナモン・しょうが、と買い揃えます。まったくもう、あとあと使い途のないモノばっかりを。

 それでは、こけもものパイ(迷走バージョン)に取り掛かることにいたしましょう。

【材料】

小麦粉 4dl(カップ2と1/4)
三温糖 3dl(カップ1と1/2)
しょうが・シナモン・クローブ・カルダモン・重曹 各小さじ2
あらくつぶしたこけもも 2dl(カップ1)
卵 2こ
生クリーム 2dl(カップ1)
とかしバター 1dlI(カップ1/2)

(耐熱容器のケーキ型用)
こまかいパン粉、またはあらびき小麦粉、
バター、またはマーガリン 各適宜

 この、計量がカップなのがいいですね、また。いかにも家庭料理というか、ケの料理というか。
 聖誕祭のごちそうを作りましょう、言うてんのに、ケの料理かよ、とツッコもうかとしたが、もともとピクニックのおともに、言うてるモンを聖誕祭のごちそうにしようとしているわしの方が間違っていた。ごめん。
 そうそう、ピクニックだったら、こうやってありものをバスケットに詰めてでかける、それで正解。

 さて、材料を見るに、ずいぶんゆるい生地みたいです。溶かしバターと生クリームと卵。液体多いな。
 なんか出来上がりイメージとして、ファー・ブルトンっぽい。いや、ファー・ブルトン食べたことないけど。。
【作り方】
@ ケーキ型にバター、またはマーガリンを塗り、粉をふっておく。
A ボウルで小麦粉と重曹を混ぜ合わせ、三温糖、香辛料も混ぜ、あらくつぶしたこけもも、卵、生クリーム、さめた溶かしバターを加えて、手早く、なめらかに混ぜ合わせて、@に流し込む。
B Aを、175度のオーブンで60分〜70分焼く。
 2〜3日冷暗所で味をなじませると、ぐっとおいしくなる。

 雑!!

 材料全部混ぜて焼け、ってしか書いてないやん。なんてぇ雑レシピ。
 これで料理の本を名乗ってんのか。これでどうやれ、ってんだ。それとも本当に、こんだけでいいのか。
 材料を全部混ぜて焼く。

 ほんまか!??

 レシピ通りに作るべきか、己の過去の経験から、多少の追加要素を足すべきか。
 悩んだふりをしてみたが、思い出してみよう、ここの企画コンセプトは『好き勝手』。
 なのでレシピの正誤など、今さら疑ったところでどうなる。やりたいようにやる。

単に『混ぜる』ではなく、ハンドミキサーにご登場いただく。
手動泡だて器だと、このあとの工程でバターと混ぜたときに分離させる。自信がある。
「メレンゲを作って〜」とか「白っぽくなるまで〜」とかまではいかない、めんどくさいからな。
膨化は重曹に任せる。
砂糖、スパイス、とかしバター、生クリームを入れて更に撹拌。
ちなみに、とかしバター1dlの加減が分からんかったが、100g溶かしたら半カップになったことをお伝えしときます。

スパイスは4種それぞれ小さじ2ずつ入れて、つまりトータルで小さじ8、相当入る。生地、真っ茶色。
重曹と小麦粉をあわせてふるったものを、卵バター生地と合わせて、最後にこけもも(嘘)ドーン。
薄く油を縫ってパン粉をはたいた型に入れて焼く。
べつに小麦粉はたいたんでもよかったんだけど、『パン粉』というのが新鮮だったので、パン粉をチョイス。

生地の量が多すぎて、型ひとつに収まらなかったんで、急遽別の型を出してくる。
急だったんで、パン粉はたく暇なくて、フライパン用ホイル。
175度のオーブンで60分、だが、我が家のオーブンは火力が弱いので、結果、200度で2時間ぐらい焼いた。

※ココア生地ではありません

 さーて、これでこけももパイ(嘘)の用意ができました。
 続けて、たまご酒の準備にとりかかりましょう。 


→たまご酒編に続く



   

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