世界最硬
金属
カナダ政府が行った超人兵士開発計画「ウエポンX計画」。
これほど悲惨な計画はないだろう。被験者の数々はさらわれてきたり、後遺症に悩まされたり、今も苦しんでいる。
計画の被験者はまっとうな道を歩めるはずもなくドロップアウトしていく物もいる。
その中でも最も興味深い超人がウエポンX計画被験者ウルヴァリンであろう。彼は全身の骨格に世界最硬の金属アダマンチウムを移植されたミュータントである。彼は政府の記憶操作により過去の記憶がなくローガンという本名かどうかもわからない名前しか覚えていなかった。
カナダ政府はウエポンX計画初期段階でこのアダマンチウムと人体の融合を夢見て開発が行われていた。しかしながら、アダマンチウムと人体の融合はうまく行かなかった。なぜなら、融合手術に人体が耐えられなかったのだ。
そこで白羽の矢があたったのがミュータントである。特に肉体の超回復能力を持つミュータントとなら融合手術の成功が期待できる。当時、政府のエージェントであったローガンは誘拐され、アダマンチウム移植手術へと至った。
彼はウエポンX計画半ばに研究室を脱走しアルファフライト*1本部デパートメントHで保護された。その後、チャールズ・エグゼビアの勧誘の元、X-Menのメンバーとなった。
今回のテーマはウエポンX計画に利用されていた地上最硬の金属アダマンチウムについてである。
ウエポンX計画にこの金属が取り上げられる場合、一つのテーマがある。それは人体との融合である。ウルヴァリンには骨格に、セイバートゥースには歯と爪に、ケインには両腕( 確かアダマンチウム製だったと思う)に移植された。セイバートゥースの改造は比較的簡単に思える。ケインに関してもマーベルユニバース*2では当然の技術であるサイボーグ技術を用いれば造作もない。問題はウルヴァリンである。
ウエポンX#1を見れば手術に風景が垣間見れる。ローガンは母体の中で羊水に浮かぶ様に水槽の中に浮かび、点滴の針を思わせる無数の針と管が体に突き刺さっている。隣のラボでは研究者たちが何時間も拒絶反応におびえながら手術の経過を管理している。ここまでしなくては人間の骨と融合しない金属アダマンチウムとは何なのだろうか?
まず、最も固いというところに着目してみよう。
材料工学の中で最も固い物質というものは純粋な原子でできた単結晶材料である。つまり固まり自体が一つの結晶と言うことになる。この純粋な金属結晶は酸化することもなく、非常に壊れにくい。不純物が少しでも混ざれば強度は弱くなり、合金ではこの特性は引き出せない。この技術はコマンドナイフなどにも用いられている。
ウルヴァリンはアダマンチウムの爪でどんな合金でも引き裂いていた。と言うことは、もしかするとアダマンチウムは合金でなく未知の元素なのではないだろうか。合金であれば人体に入った時点で、徐々に分解され何十年か後には別の物質になっている。つまり、一つの元素なら長く体内にとどまっていられるのだ。
実際、人間の骨格と結びつつきやすい金属はある。しかし、骨に結びつきやすい合金は聞いたことがない。この事からアダマンチウムは合金ではないことが分かる。骨格と結びつつきやすい金属の主なものでは、骨の主成分であるカルシウムや、血中にある鉄、イタイイタイ病で有名なカドミウム、和歌山カレー事件で有名に砒素が挙げられる(最近の医学会では骨に結びつきやすいので砒素を白血病の治療に用いている)。どれも経口で摂取しても、内臓より骨に蓄積される。あのような手術で融合するアダマンチウムはバリウムのように経口摂取できない金属元素なのだろう。
ここで、新たな疑問が持ち上がってくる。元素周期表にはアダマンチウムと言う元素はない。では、ウラン以降の元素と同じく、作られた金属なのだろうか?そうなら、とても危険である。ウラン以降の人工元素はどれも放射線を放出するのだ。アダマンチウムが人工元素ならウルヴァリンは歩く原子炉みたいなものじゃないか!!!!X-Menが危機にさらされる。
こうなれば不活性*3な合金を無理矢理骨格にコーティングしたと信じるしかない。それにしても痛いだろうな。
うーん。とんでもない結論になってしまった。
- 1アルファフライトはカナダのヒーローチーム。リーダーはガーディアン。
- 2マーベルユニバースは出版社マーベルコミックから出版されるタイトルのバックボーンとなる世界観。これを基準に物語が進められる。
- 3化学用語として用いられる。不活性とは化合しにくいということ(酸化、腐食も含める)。
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