by鉛 筆吉

  −異界からの侵略者−

 

 

 

  第二章  出会い

 

 リズムよくゆれる汽車。

 しかし、るり子と洪介以外には誰も乗っていなかった。

 「やっぱり来てくれたね」

 洪介は待ってくれていたようだ。席につかず通路に立っていた。るり子はぺこりと頭を下げた。

 「ごめんなさい……。わたし、勇気がなくて……」

 「謝ることはないよ。誰だってあんな怪物とは戦いたくないさ」

 るり子はそんな洪介の慰めっぽい言葉を聞いて少し落ち着いた。そして二人は向かいあって席についた。

 「先輩はどうしてついてきてくれたんですか?」

 るり子は彼の顔をうかがう。洪介は笑った。

 「るりちゃんは僕についてきて欲しいんだろ?」

 逆にそう尋ねられ、るり子は少しはにかみながら少しムッとした表情を作った。

 「わたしは別に先輩についてきてもらわなくても良かったです」

 キッパリした口調で言うと、洪介は肩をすくめた。

 「本当はね。昔剣術をやっていたんだ。それでちょっと腕試しに戦ってみたくなってね」

 そう言うと彼は剣を取り出した。

 「先輩、恐くないんですか?」

 るり子が不思議そうなまなざしを浮かべて聞く。

 「正直言うと、恐いよ。でも何もしないでやられるなんてしゃくだろ?」

 その剣は約一メートルくらいだろうか。曇りのない輝きを含んだ剣先がキラリと光っていた。るり子は剣術が出来る洪介を少し見直した。

 洪介は緊張のためか剣を持つ手にもじんわりと汗がにじんでいた。じっくりと刃に目を運ばせながら、早くなった鼓動を静めるように息を吐いた。そしてそれを鞘に収めた。

 ちょうどその時、汽車は隣の街に着いた。

 「うわぁ」

 汽車から降り、目前に広がる街並みを見たるり子の第一声がこれだった。それもそのはず、ここも例の怪物に襲われたらしく、あちらこちらから煙が立ち昇っていたのだ。崩れた家屋もたくさん見られた。

 「行こうか」

 二人はあてもなく歩き始めた。

 「この街に救世主なんているのかしら……」

 るり子は辺りをキョロキョロ見ながらそうこぼした。人はほとんど見当たらない。とても寂しく感じた。

 「もしかしたらいるかもしれないからね」

 洪介は微笑んで答えた。そして角を曲がる。広い通りに出た。

 彼はまるで道を知っているかのように歩いている。

 「先輩!! あれ」

 突然るり子がそう叫び、向こう側の歩道を指差した。瓦礫の山の下敷きになっている男がいた。二人はすぐに駆け寄った。

 「……助けて、ください……」

 その青年は苦しそうに表情を歪めながらそう言葉を発した。洪介はるり子に超能力で瓦礫をどかすように促した。彼女は静かに目を閉じ、意識を集中させる。さらさらとした黒髪が赤茶けた色に変った。目は漆黒だ。力が溢れてくるのを体で感じながら、るり子は瓦礫の山をいとも簡単にどかした。

 助け出された青年は足の骨を折ったらしく、立ち上がるのもままならない様子だ。洪介はすかさず肩を差し出した。

 「あの、お願いがあるんです」

 青年はお礼を言った後、小さくそう呟いた。

 「病院へ連れていって欲しいんです」

 言いにくそうな口調でそう頼まれると裏切るわけにはいかない、と二人は彼の意見を飲むことにした。

 病院のある場所はここからかなりの距離があるようだ。歩いていくには時間がかかり過ぎる。

 「わたしのテレポートでなんとかしてみます……」

 るり子は少し自信なさそうに、しかし頼れる口調でそう洪介に伝えた。そして力を発動させる……。

 

 

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