by鉛 筆吉

  −異界からの侵略者−

 

 

 

 ここは、どこだろうか……。真っ黒い影が街全体を包み込むように覆っている。人の姿は見られない。いや、良く見ると、四つの人影がある。黒い影に覆われているために、その詳細な姿は見えないが、その四人の人影は、巨大な影が渦巻いている方に向かって駆け出した。

 そして、その時、突然空から黒い影が降ってきて、その四人を襲い、爆発する。

 

 

 るり子はその爆発に驚いて目を覚ました。

 夢……? また、同じ夢だった……。

 ここのところ良く見るようになった夢なのである。るり子はしばらくぼんやりと、いやにリアルなその夢の事について考えを巡らせるが、何も思い当たることなどないことに気づくと、今度は、はっとして時計に目をやった。

 いけない。もうこんな時間!

 るり子はベッドから飛び起きると、勢い良く着替えを始めた。

今日は久しぶりのデート。だが、着替えを終え、家を出る頃にはすでに約束の時間を過ぎてしまっていた。

 

 

 まだ、来てませんように……。

 るり子はそう祈りつつ公園を目指して走る。こう見えても足にはちょっと自信があった。運動部に所属した経験はないものの、中学校の時に陸上部から強い勧誘があったくらいだ。

 確か、あなたが入ってくれれば女子の入部希望者が増えるかもしれないのよ、なんて言われてたかな……?

 るり子は苦笑しながらそんな事を思い出していた。

 ま、それなりに早い時間で、公園に到着することが出来た彼女は、息を整えながら公園の中へと入る。

 約束の場所。

 彼の姿はなかった。

 「良かったぁ」

 思わずそう呟き、胸を撫で下ろすと、るり子はベンチに腰を下ろした。

 相手は一年先輩の二年生。名前は鬼燈洪介(ほおずき・こうすけ)。

 以前テレビ番組の特集で、超能力者として出演したこともあるちょっと有名な高校生なのだ。

 この高校に入り、『超能力研究会』という同好会を作った。発足した当初は全く入部希望者がいなかった(オタク系の怪しい会のようなものというイメージのせいらしい)のだが、テレビで特集されるやいなや一気に部員が増えてしまった。が、その活動が意外と地味なものと分かると、その数は日に日に減っていき、今では洪介を含めて三人になってしまった。流行というものは、本当に人の気まぐれだけで成り立っているものだということを改めて認識することとなった。

 さて、その気になる部員三名だが、洪介はもちろんその中の一人。そして、るり子と、彼女の幼なじみの蕗子が残りの二名なのだ。彼女たち二人は、最後まで残った貴重な部員ということだ。

 それにしても……。

 るり子は二ヶ月前の夏休み前のことを思い出した。その日は、洪介から告白された日。まさか、先輩と付き合うことになるとは思いもしていなかった。

 先輩はみんなに優しく接していたし、わたしだけが、特別ってワケでもなさそうだったし……。

 るり子が不思議そうに思いを巡らせていると、遠くから人がやってきた。洪介だ。るり子がそっちを見ると、彼は手をあげ、走ってきた。

 「ごめん。遅れちゃって」

 

 

                       

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