by鉛 筆吉

  −異界からの侵略者−

 

 

 

 「先輩、いますか?」

 手早く扉が開けられ、るり子が顔を出す。洪介は手を挙げて応えた。

 頭痛の日の翌日。放課後になるのを待ち構えていたかのようにるり子は部活動の教室へとかけてきたのだ。教室にはすでに蕗子が、そして魅智子も来ていた。るり子は中へ入り、魅智子の隣に座った。

 はずむ息を整える時間も惜しむように彼女は話し始めた。

 「実はわたし、六歳の時に雷に撃たれたんです」

 洪介達はみな驚くが、るり子はさらに続けた。

 「その時からこの力は目覚めたんだけど、今頃になって気がついて……。どうやら超能力がついたみたいなんです」

 るり子はそこまで一気に話すと、目を丸くして、言葉を無くしている三人の顔をゆっくりと見回した。

 「なぁに、みんなそんな深刻な顔して……。大丈夫。始めは恐かったけど、昨日家で練習したんだから。それにわたし、超能力に憧れていたから今は幸せなの」

 るり子は重い雰囲気を吹き飛ばすような明るい口調でそう言った。言葉通り幸せそうな笑顔である。それを見ると、魅智子は微笑んで言った。

 「るり様、その超能力を見せて下さい」

 るり子はウインクをする。

 「そうこなくっちゃ」

 そう言って目を閉じると、るり子は昨日のように頭の中であの光のイメージを膨らませた。そして光が放たれた瞬間、彼女の髪の色はみるみる色褪せ、赤茶けた色に変わった。そして力発動したことを感じたるり子はゆっくりと目を開く。

 「どうしたのその髪!?」

 蕗子は唖然としている。一方魅智子は、るり子の瞳を見て頬をバラ色に染めた。

 「素敵な瞳ですわ。るり様」

 彼女の瞳は「深黒」とでも言うべき、吸い込まれそうな深みを持った色に変わっていたためだ。

 「先輩、わたし……」

 るり子は少しはにかみながら洪介を伺う。

 「……もう頭痛はないのかい?」

 洪介も驚きを隠せないようだ。口からぽつりと問いが出される。

 るり子はすぐにうなずくと、すっと息を吸った。

 胸がドキドキ高鳴っているのが分かる。洪介はカードを取り出した。E・S・Pカードだ。

 「透視能力を試すよ」

 彼が見せるカードの裏の模様を、るり子は簡単にやってのけた。三人が驚いているのを見て彼女は嬉しそうに笑った。

 「こんなこともできるんだから」

 そう言って横目で机や椅子に目をやると、それらがふわふわと宙に浮き始めた。

 「えっ……、ちょっと信じられない……」

 蕗子は思わず目をこすってしまう。洪介も目を疑っていた。

 「さぁ、外へ出ましょ」

 るり子は相変わらずの笑顔でそう言うと、今度は四人の体が宙に浮きあがった! るり子以外の三人は突然の無重量状態に慌てた。

 「落ち着いて、力を抜いて……。そう、うまくバランスを取って」

 るり子の指導でどうにかうまく動けるようになると、彼女は三人と共に運動場へと出た。

 「いい気持ちね!」

 蕗子は風に身を任せている。

 「しかし凄いな、空を飛んでしまうなんて……」

 洪介は眼下に広がる街並みを見て感動しているようだ。でも少し恐い。

 「私幸せですぅ。こうしてるり様と一緒に空中遊泳が出来て。それにしても秋風が心地よいですわ」

 魅智子はるり子と手をつないで飛んでいる。るり子はこの力を超能力と言ったが、実のところ少し違うのである。それはいずれ分かること。今は彼女たちを見守ることにしよう。

 

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