「開かれた開かずの間」     by 上山 環三

 

 その箱、《順風高校生徒会意見箱》から出ててきた意見書には、例えば『うちの部費を上げろ』(どこの部か書いてないので、上げようがない)とか、『生徒会も変わらなきゃ』(余計なお世話。しかも古い!)とか、『会長、愛してます。今度デートして下さい』(しません)とか・・・・。

 それらの意見書を一通りまとめて、寺子屋 文雄は目眩と頭痛を同時に感じた。いや、もちろんまともな意見も多数あるし、どう見てもふざけて書いているのは集計段階で外すようにしているのだが、現生徒会会長の東雲 麗子は目安箱に入っていた意見は全て見ないと気がすまない性格ときていて、毎回集計を担当する寺子屋はその度にウンザリする事になっている。そうしておいて、『デートして下さい』なんてのを見ると、何よコレは!? と、彼に八つ当り(?)するのだから、寺子屋が更に胃痛を患っても仕方ないところであろう。

 「・・・・今日は早く帰ろうかなぁ」

 誰もいない生徒会室でそう寺子屋が独り言を言っていると、階段を勢いよく上がってくる音がして

 「っはようございまーす」

 と、生徒会執行部の後輩の女の子が入ってきた。

 季節は春。――五月中旬。

 新入生も落ち着き始め、これからいろいろと忙しくなる時期なのだ。とりあえず、寺子屋はできたての意見書を会長の席に置くと、入ってきた彼女に今日の仕事を指示する事にした。

 麗子は遅れてくるはずだった。

 ――今日はある委員会の定期会議がある。麗子はそれに出席するのだ。彼女の様子が最近おかしかったから、何か事件でも起きたのかもしれない。

 寺子屋も一応はその委員会のメンバーなのだが、今日は会議には出席しない。麗子に加えて、彼までがここからいなくなってしまうと生徒会は開店休業になってしまうからである・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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