順風高校封鬼委員会に神降 亜由美が加わって、二ヵ月が経過した。
――その間はさしたる事件もなく、平凡な時間が流れた。 今年三年生である委員長の東雲 麗子とその補佐役(?)、寺子屋 文雄は、放課後の補習で定期会議に出席する回数もぐっと減ってしまった。亜由美にはそれが寂しい。 一方で、二年生の山川 大地は毎回ふらっと会議に現れては、終了するとすぐにいなくなる。後で聞いた話によると彼はいくつかの武道系クラブに助っ人として出ているらしい。 それはそれで大地らしい話だが――。 ともかく、封鬼委員会の方はいたって暇だったから、特に問題はなかったのである。 気が付くともう七月も半分近く終わろうとしていた。恐怖の期末テストが近付いている。 そんな七月最初の定期会議の事だった。 久しぶりに雨が降り、うだるような暑さも少しは和らぐかと思えば、じめじめしてそれどころではなかったと言う生活環境的には最悪のその日――、会議の為にいつもの教室に現れた亜由美は、そこに見慣れぬ女子生徒がいるのに気が付いた。 ガラガラとうるさいドアを開けて入ってきた亜由美には目もくれず、その彼女は、窓の外をただじっと眺めていた。 「・・・・」 何の反応も示さない彼女に、思わず気後れする。 誰だろうか? 少なくとも、封鬼委員会に事件の解決を依頼しにきた生徒のようには見えない・・・・。 どこか近付きがたいオーラを発する彼女だったが、ポニーテールの赤い、チェックのリボンが亜由美の目を引いた。 「ボーッと突っ立ってないで、座れば?」 「・・・・え?」 「私の事、聞いてなの?」 と、彼女は始めて亜由美へと視線を向けた。 眼鏡の奥のとび色の瞳が亜由美を射竦める。そして、その猛禽のような鋭い視線からはまるで想像も付かないような柔らかな笑みを浮かべて、彼女は口を開いた。 「滝 雫よ」 その一言が亜由美の呪縛を解く。ドアから一歩踏み入れた所でずっと立ち竦んでいた彼女は、ようやく唾を飲み込んでから中へ入ったのだった。 |
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