最近、恭介の様子がおかしかった。
いつもの明るさは消え、冗談はその口からは一つもでなくなり、目から精気が失せた。 一体、どうしたのだろうか・・・・!? 雫は今、恋人の恭介の豹変に、独り、悩んでいた。 そのうちに、恭介は二人でいる事を嫌がるようになった。雫にとって、その事は大きなショックだった。 普段の雫ならば、冷静に物事を分析する目を持っていたが、今の彼女にそれを求めるのは酷だ。 雫は始めて心を開く事ができそうになった彼を失う事を、ただひたすら恐れていたのである・・・・。 そんな時、麗子から電話があった。亜由美の逡巡より、やはり彼女の行動の方が早かったようである。 電話の内容には思い当たる節がないでもなかった。 南雲家に最近出入りするようになった男――。 その男は、以前恭介が話していた家庭教師に違いない。それに思い至った時、何かが頭の中で弾けたような気がした。体の芯からムクムクと闘志が湧き上がってくる・・・・! 亜由美の言う事ならば信頼もおける。 そう、恭介の変貌の裏に家庭教師あり。 こうして、雫は独り思い悩む生活をやめた。そこにはもう、いつもの彼女がいた。つまり、冷水を湛えたような沢の内にある激流――。 「一人で突っ走る事だけはやめて」 麗子の言葉も今の雫には半分も届かなかった。 妖気をその身にまとう男――。 相手に不足はない・・・・! |
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