夜はまた明ける。――それは世界が再び日常を取り戻す時だ。
だが、学校内は昨日までと然したる変化はない。 むしろ聖美を崇める教祖騒動はひどくなっていると言っても過言ではない。学校であるにもかかわらず、今では授業すらままならない状況にまでそれは発展していた。 「厄介な事になりましたね、先輩」 「そうよ。大事な時期だって言うのに進路も課外もあったもんじゃないわ」 麗子は憮然として答えた。封鬼委員会のメンバーは登校そうそう、いつもの教室に集まっていた。 「寺子屋さん、どうして僕らは平気なんでしょうか?」 と、大地が寺子屋に尋ねる。 「え?」 「あ、あなた、そんな事も・・・・!?」 雫があからさまに呆れた。 「多分、信仰の関係だと思うよ。僕たちは熱心と言えるかどうかは分からないけど、陰陽道――神道に傾倒している。でも他の人たちはやっぱり無神論者だよな。それは教師にしたって同じ事だ」 「はぁ」 どうにも鈍い大地に、雫が諭すように言った。 「――私たちが陰陽道の力を信じるかぎり大丈夫ってことよ」 もっとも、彼女の退魔術は陰陽道ではないのだが・・・・。 が、その言葉を遮るようにまた寺子屋が口を開く。 「いや、それだって保障はないんだけどな。今のチャーム程度なら大丈夫だと思うけど・・・・。これがもし、更に強くなったりすると――」 それを聞いて大地の表情が固まった。 「・・・・それって、まずいですよね・・・・!」
全ての機能を放棄した人間たちによって、学校は埋め尽くされていた。 順風高校はもはや狂信者の巣窟と化しているのだ。 聖美は――マモネルは、どうなったのか? 聖美の守護をなしているはずなのだが・・・・。 しかし、このような騒ぎを起こして、守護をなしていると言えるのだろうか。いや――、そんな心配は今や必要なくなっていた。彼女はとうに意識を失い、身体はマモネルに支配されていたのだから。 もはや、こうなってしまっては守護する必要などないのである。 そしてマモネルは、自らの目的を果たす為に王手をかけた。 この哀れな小羊どもを楽園に、死後の世界へと導くのだ・・・・! ――聖美の信者たちが、体育館の中へわらわらと流れ込んでいる。異様な雰囲気に、それは包まれていた。 それでも校長たち――、一部のチャームの及ばなかった教師たちが騒ぎを収めようとしてはいるが、所詮それは多勢に無勢であった。 「ったく、しょうがない奴らばかりだな・・・・」 そのマモネルの企みを、屋上から見下ろしている者がいた。 「そろそろ行くか・・・・」 言わずと知れたその人物――栗間 将吉は、腫を返して階段を下りていく。 ――奴の好きにはさせないぜ。 その体に闘志がみなぎっていた。それは邪悪を許さない、正義の心から吹き荒れるものだった。 その栗間の闘志に応えるように、彼の影が揺らめく・・・・。 亜由美さんに俺の素晴らしい活躍を見せてやる! ・・・・いや、それは正義の心だけではないかも知れない・・・・。 |