T-D

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三角関係、か。

 亜由美は机に頬杖をついていた。綺麗に片づけられた机上には、埃一つ無い――、と思ったら結構汚れていたりするのであまり観察しない事にする。

・・・・斎藤 祥子。

先程から同じ名前を亜由美は反芻している。寺子屋はあまり関心を示していなかったが、亜由美は彼女に会ってみようと考えていた。

ここしばらく、放火は起きていない。それが何を意味するのか――、ともかく、実質二人しかいない封鬼委員会でこの街の見回りができるわけもなく、打つ手が後手後手になるのは致し方ない所と言える。

と、本立ての仕切りに貼った大地とツーショットのプリクラと目が合った。

先輩、何してるんだろう・・・・。

彼女の思考は珍しく(?)乱れていた。思い付くままに、側にあった電話の子機――やっと黒色ダイヤル電話を買い換えたのだ――を手に取り、短縮ダイヤルボタンを押す――。しばらく呼び出し音がなって

「はい、山川です」

と、聞き慣れない声色の大地が出た。

「あ、私です」

亜由美は名乗った(?)。

「あぁ、亜由美くん。何?」

「・・・・いえ、何でもないんですけど・・・・」

今更ながら電話をかけた事を少々後悔したりする。

「?」

「あの、ちょっと先輩と話でもしようかなぁ、なんて・・・・」

何言ってるんだか。

「あぁ、別にいいけど、ちょっと待ってくれる?」

そう言うと受話器から保留音が流れ出す。そして大地の明るい声。

「お待たせ。イス持ってきた」

 

 

 

片瀬 清香は果たして、受験勉強で追い詰められたとでも言うのだろうか?

幸いな事に、麗子は進学クラスではないからそんな心境にはなりそうも無いが、それでも最近、机に向かって勉強する事が苦痛になって来ていたりする。今も参考書と大学ノートを広げたまま机に突っ伏し、彼女は放火事件の事について考えている。ま、考える事は別に何でもよかったのだが・・・・。

さて、麗子の注意を引いたのは放火魔が清香、つまり女性だと言う点である。これに対して、犯人は男性であると言う三宅の方が誤りなのかと言うと、まだ何とも言えない所があって、ただ、そこに何か今回の事件の真相が隠されていそうな気がしないでもない。

しかし、いずれにしても順風高校の生徒に放火魔がいたと言う事は――まだそうと決まったわけではないにせよ――麗子に少なからずショックを与えた。彼女の愛校精神は並々ならぬものがあるのである・・・・。

 麗子はそこで机の上に立てられた写真に目をやる。三宅の卒業式の日に、並んで撮った写真だ。

今頃、何やってるのかしら。

 もう夜も遅い。

 先日、久方ぶりに委員会に顔を出した時、亜由美に言われてしまった事を麗子は思い出す。

「あの・・・・、こんな事言っていいかどうか分からないですけど、今日の先輩、何だか元気ないですよ。何かあったんですか?」

「え、そ、そうかしら?」

「私でよかったら、何でも相談に乗ります。――あ、生意気ですよね。こんな事先輩に言って」

あはは、と亜由美は屈託なく笑った。

――亜由美ちゃんはいつも大地と一緒にいられるから・・・・。でも、私は――。

麗子の目尻が幾分湿り気を帯びてきて・・・・。

三宅先輩、会いたいな・・・・。

 そう思った途端、ポタリと涙が落ちる。

やだ・・・・、私泣いてる・・・・。

麗子は慌てて涙を拭った。そこで何気なく窓へ視線を向けた時――、カーテンの隙間からそれは見えた。

 「!!

 息を呑んで立ち上がる麗子。窓際へ急ぐとカーテンを剥ぎ取るように捲る。

 その鋭い視線の先、真っ暗な闇の中に、赤い炎の色が際立っていた・・・・。

 

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