封鬼委員の雫の家に、比嘉が移転されたのはそれからすぐの事であ 今でこそその名に『滝』と入れているが、以前――と言っても随分と 敷地と隣接して大きな湖があり、一部の病棟は湖の上に迫り出すよう そこへ比嘉を移転させるように働き掛けたのは三宅であった。その方 さて、五度目の出火は封鬼委員会に大きな衝撃を与えるところとなっ 比嘉は当然の事、清香も今日は学校を休んでいた。 「まず、三宅先輩の見たって言う、不審な男性なんだけど、依然とし 麗子が家で作ってきた資料――B-5の用紙二枚に事件の整理がなさ 「スゴイ、放火のデータも調べたんですか?」 「あぁ、それはね亜由美ちゃん。三宅先輩が持ってたのを拝借した 麗子は短く舌を出しておどけたように笑うと 「ま、みんな連続放火事件についてはあんまり調べてないだろうと思 そう言う。 「木曜日――? あ、確かにそうですね」 「えぇ。こうやって見ると、気が付いてなかった事もたくさんあるで 「・・・・はい」 亜由美は資料の一枚目を捲って 「このショーウインドーで出火って言うのは?」 と、顔を上げた。あぁ、それはね、と麗子。 「片瀬さんの目の前でショルダーバックが突然燃え上がったらしいん 「でも、変ですね」 「変でしょう?」 麗子は我が意を得たりと、頷く。「どこがどう変って言うんじゃない 護身石が全くと言って役に立たなかったことも亜由美にとってはショ 「それはね亜由美ちゃん、あなたの所為じゃないわ」 「え?」 「今回の犯人は護身石でカバーできる対象外だったって事なの」 「ど、どう言う事ですか・・・・?」 麗子の言わんとすることは分かる。しかしそれでは今回の事件は委員 「やだ、そんなに睨まないでよ。今のも三宅先輩の受け売りなのよ。 麗子は渋い顔でそう応えて「先輩、どうしても教えてくれなかったの と、むくれた。 そんな麗子の反応にどう言っていいものか分からず、とりあえず苦笑 ――比嘉家の出火は、果たして何を意味しているのだろうか。清香が 清香の目前での出火の事も考えると、犯人は――。 「あれ・・・・」 と、亜由美が小さな声を上げたのを麗子は聞き逃さなかった。 「どうかした?」 「いえ・・・・、あの、比嘉先輩の事を好きだって言う・・・・」 斎藤 祥子の名前が無かった。寺子屋から聞いていないとすれば、亜 「え? 誰、それ?」 麗子が矢庭に顔色を変えると、身を乗り出してきた。 「彼女に関しては、この僕が」 と、麗子に負けず劣らず身を乗り出してきたのは大地――その場にい 「斎藤 祥子は進学クラス二年の生徒なんですけど、結構美人です」 「・・・・うん、それで?」 いきなりの『美人です』と言う言葉に亜由美がピクリと反応したのを 「これはいろいろ聞いて分かった事なんですけど」 大地は前置きを入れて「どうやら比嘉先輩に告白してふられたっての と、言った。 「告白?」 「進学クラスの友人によると、その斎藤って言うのは女子のリーダー 麗子は無言のまま亜由美と目を合わせる。彼女が少し微笑んだので、 「――で、ここからが肝心なんですけど――」 と、一呼吸。 「彼女の母親が火事で焼け死んでるんです。これって、何か気になり 一瞬、静寂。そして麗子の一言。 「そうかしら」
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