by くらげ
蛍の光のような、だが蛍のそれより遥かに優しく、温かく、明るい光に包まれるなか、話は再開された。 「彼ら神々はくらげ内部の細胞を次々と変質させていった」 「変質?」 相変わらず他に類を見ない程の率直な質問。仕様が無い。そういう性分なんだから。 「まぁ、変質とは言っても大したことをした訳じゃないよ。細胞の表面に少々細工を施して、子供達が生活できるような環境を造り出しただけ。つまりは箱庭だね」 こちらも相変わらず、生徒に教える教師の口調である。まぁ、仕方ない。その通りなんだから。幾ら俺が先生が嫌いでも。 「で、続きは?」 促す。 「ああ。環境を整えた彼らは次々と子供達をそこに送り込んだ。さっき言ったように脳やら何やらに色々な伽を嵌めてね」 「・・・」 これを聞くのは二度目だが、やはり不快そうな顔をしていたのだろう。彼は言ってくる。 「けどね、仕方なかったんだよ。これは。産まれてくる子皆が皆彼らのような力と知恵を備えていたら、今頃くらげは大変な事になっていただろうよ」 「詭弁だね。確かにそういった意味もあるだろうよ。けど本当は違うんじゃないのか? 神の奴らは只単に自分以外の奴ら・・・というよりも、自分の子供が自分以上に知恵と力を持つのが恐かっただけなんじゃないか? もし子供が自分以上に知恵と力を持てば、自分は落ち零れとして他の奴らから排斥される。それが恐かっただけなんじゃないのか? だから伽を嵌めたんじゃないのか? 自分達の保身の為に。大義名分みたいなものくっつけて。違うか?」 気が付くと俺は一気に頭の中に溜まっていた言葉を吐きだしていた。そうなのだ。少なくとも俺にはそうとしか思えなかった。ヌリシンハはこれを聞いた途端、悲しそうな瞳をしてうなだれ(俺にはそう見えた)、消え入りそうな声でぽつりと呟いた。 「・・・そうだね。そうかも・・・しれない。言葉で驚ら取り繕っても・・・所詮は僕も同類・・・か」 やはりこいつ・・・だが、今はそんな事はどうでもいい。さっきの続きを聞こう。 「まぁ、その事は今はいいよ。御免。話を中断させてしまって。続き、聞かせてよ」 「・・・ああ、そうだね」 幾分か立ち直ったのか、彼は素直に頷くと、続きを語るべく口を開いた。 「さっきの言い方じゃ、最初から・・・」 こうして話は再開された。それはそうと、神から聞いたなんて言うからすっかりそう思い込んでいたけど・・・まぁいいか。後で聞けばいい事だ。今は聞く事に集中しよう。 |
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