sakana.JPG (6332 バイト)                    by くらげ

 

 目が覚めた。

 寝覚めてまだ呆けてはいたが、とりあえず辺りを見る。

 一面に広がる雪景色ならぬ水景色に、一瞬、ここは何処だ? と考える。

 思い出した。

 そういえば、俺は昨日からこの訳の解らん、果てしなく続く(と思われる)水の世界にいるんだった。

 辺りはぼんやりと明るい。どうやら朝らしい。夢ならば次に目覚めたときには元の世界に、と思っていたが、どうやら夢ではなかったらしい。

 気を取り直して、とりあえず目を覚ますために顔を洗う。

 「ふ〜〜〜。相変わらず冷たいねえ」

 凍てつく冷たさに、一気に目が覚める。指先が又も鮮やかに痺れる。

 「ん〜〜〜。気持ちい〜。癖になりそう」

 独りごちて気付く。

 何かがおかしい。

 もう一度辺りをよく見渡す。

 それで解った。明るさである。確かにぼんやりとは明るいが、明らかに日の出による明るさとは違った。日はまだ昇ってはいない。今はまだ夜なのだ。それが証拠に、空には未だ月が在った。・・・何故か二つも。一つは蒼白く、そうラッセンの描く月のように煌々と輝き、今一つは闇夜に輝く獣の眼の如く、爛々と深紅に輝いている。

 だが、それだけではここまでの明るさにはならないはずだ。たとえ月が二つあり、月明かりが普通の倍になったとしても。

 では何故明るい? 何気なく下を、いや、水面を見る。

 仰天した。が、全てを理解できた。

 光っているのだ。水が。

 だがそれだけに驚いたのではない。驚くことはもっと他にあった。

 いるのだ。何が? 魚達が。それぞれの色に輝きながら。

 昼間にはいなかったはずだ。

 考えながら再び水面に目をやる。

 波があった。魚達の動きにあわせて生じる波。水の中で魚達が踊り、舞うたびに、それにあわせて水面もまた波打つ。それは常に変化し、一瞬として定まることはない。まるで常に揺らぎ続ける炎のように。対極の存在でありながら、その動きは同一のもののようだ。

 何もかもが昼間とは違った。全てが正反対だ。静と動。

 わけがわからない。どういうことだ? 一体全体何なんだ、これは? いや、何よりも・・・ここは何処なんだ? 

 全てがわからない。頭が混乱している。落ち着こう。全てはそれからだ。

 

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