by くらげ
「ありがとう。そう言ってもらえると凄く嬉しい」 誉めたのを素直に喜んでくれるのは誉めた方も嬉しいものだな。そう思った。 「僕は皆が自由で、仲が良くて、平和な、そんな世界を創りたかった。住む者皆が優しくなれるような、そんな国を創りたかった。それが僕の理想だった。君の眼から見て、それは達成されているのかな?」 意見を求められてしまった。俺は何気なく湖の中を見る。そこには確かに自由と、そして何よりも優しさが満ちあふれていた。優しい光に包まれ、何より如何にも楽しそうに魚達と妖精達とが舞っているのだ。見ているこっちまでもが幸せになってくる。そこには確かに一つの理想郷があった。これで昼間も楽しければ・・・そう思ってその事を尋ねる。 「ああ、昼間はね、陸地の方が盛り上がるんだ。それはもう毎日がお祭りみたいにね」 「陸地ってあったの!?」 思いもよらぬ答えだった。 「あるよ、ちゃんと。」 「でもでも・・・始めて逢った時水の楽園って言ったじゃないか」 「ああ、それは君が水の上にいたからそう言ったんだよ。それに水の楽園って言うのも強ち間違いじゃない。何せこの世界の九割は水だからね。陸地は一割しかない」 なんということだ・・・全然知らなかった。って当たり前か。開いてなかったんだから。 「うう。いいさ。別に」 悔しいから開き直ってやった。へへ〜ん・・・虚しい。 「それはそうと・・・もう他に聞くことはないのかい?」 ヌリが聞いてくる。無い訳が無い。という訳でちゃっちゃと聞いてしまおう。 「俺はどうしてこの世界に来たんだ? 色々考えたけどそれが一番解らん」 「ああ、それはね、この宇宙を形成している『くらげ』同士がぶつかった時の影響なんだよ。まあ、一種の不確定性原理とでも言いましょうか」 「ん〜。不確定何とかはよく解らんが・・・くらげってそんなにいっぱいいたの?」 「うん。最初の方で言ったじゃないか。くらげは神を産みだす前まで分裂を繰り返してたって」 言われてみればそういう事を言ってたような気もしないでもない。 「そういう事にしておこう。で、くらげの外はどうなってるの?」 「海があるんだよ。無限に続く。只それだけ。他には何一つ無い」 「そこにくらげが漂ってるんだ? 沢山」 「そうだよ。正にくらげの楽園だね」 なんと羨ましい。来世でくらげに生まれ変わりたいという願望を持っている俺にとって、正に理想郷ではないか。などという事を考えながら話は更に進むのだった・・・ |
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