by くらげ
「成程・・・さすが、神の魚っていうのも伊達じゃないな」 そう言って、俺は全身を虹色に染めている神魚を見る。彼はというと、相も変らず不思議な色に輝いて、何故か不思議な動きを見せつつ、やはり不思議な感じのする笑みを浮かべていた。何もかもが不思議な魚。 「まあね」 自信と誇りを感じさせる一言。 「それじゃ、そろそろその神の魚の名前を教えてもらおうかな。あ、一応あんたの世界の言葉でね」 「うん。いいよ。多分解らないと思うけど・・・言うよ?」 そう言うと、神魚はこちらの答えを聞く間もなく口を聞いた。 「――――――」 瞬間、何か訳の解らないものが俺の脳で暴れた。 「き、気持ち・・・悪い。頭の中が・・・揺れてる・・・みたいだ」 「はは、だから言ったろ」 子供に言い聞かせるような口調で語ってくる神魚。なんとか落ち着いてきた俺は、素直な疑問を口にしていた。 「ふう〜〜〜。何だったんだ・・・今の?」 「僕らの世界の言葉だよ。言っただろ? 聞いても解らないって」 微笑みながら答えてくる。まあ、その通りだ。 「・・・確かに。けど、まさかあんな感じだったとは・・・」 まだ何となくふらふらしている。強制的な洗脳ってこんな感じなのかな? などと頭の片隅で考えていると、彼が口を開いた。 「まあ、『あんな感じ』がどんな感じかは解らないけどさ。あ、それからヌリシンハだから。僕の名前」 変な事を考えていたせいで、思わず聞き逃しそうになる。 「ヌリ・・・シンハ?」 自信無げに聞き返した俺に、彼はもう一度はっきりと答えてくれた。 「そ。ヌリシンハ。だいぶ音を単独化してあるけど、間違ってはいないよ」 何か凄い事をさらっと言われたような気がするが、気にすまい。こんな事で驚いていては、この先身が持たないだろう。 「ふ〜ん。そっか。ちなみに俺の名前は理一朗。よかったら憶えといて」 「はは。勿論憶えるよ。理一朗」 こうして俺達は、ようやくお互いの自己紹介を終えることができた。だが、こちらにはまだ聞きたい事が山程もある。まだまだこれからだ。この神秘の世界を知るために・・・ヌリシンハの事をさらに知るために・・・まだまだ、これからだ。 |
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