sakana.JPG (6332 バイト)                    by くらげ

 

 「成程・・・さすが、神の魚っていうのも伊達じゃないな」

 そう言って、俺は全身を虹色に染めている神魚を見る。彼はというと、相も変らず不思議な色に輝いて、何故か不思議な動きを見せつつ、やはり不思議な感じのする笑みを浮かべていた。何もかもが不思議な魚。

 「まあね」

 自信と誇りを感じさせる一言。

 「それじゃ、そろそろその神の魚の名前を教えてもらおうかな。あ、一応あんたの世界の言葉でね」

 「うん。いいよ。多分解らないと思うけど・・・言うよ?」

 そう言うと、神魚はこちらの答えを聞く間もなく口を聞いた。

 「――――――」

 瞬間、何か訳の解らないものが俺の脳で暴れた。

 「き、気持ち・・・悪い。頭の中が・・・揺れてる・・・みたいだ」

 「はは、だから言ったろ」

 子供に言い聞かせるような口調で語ってくる神魚。なんとか落ち着いてきた俺は、素直な疑問を口にしていた。

 「ふう〜〜〜。何だったんだ・・・今の?」

 「僕らの世界の言葉だよ。言っただろ? 聞いても解らないって」

 微笑みながら答えてくる。まあ、その通りだ。

 「・・・確かに。けど、まさかあんな感じだったとは・・・」

 まだ何となくふらふらしている。強制的な洗脳ってこんな感じなのかな? などと頭の片隅で考えていると、彼が口を開いた。

 「まあ、『あんな感じ』がどんな感じかは解らないけどさ。あ、それからヌリシンハだから。僕の名前」

 変な事を考えていたせいで、思わず聞き逃しそうになる。

 「ヌリ・・・シンハ?」

 自信無げに聞き返した俺に、彼はもう一度はっきりと答えてくれた。

 「そ。ヌリシンハ。だいぶ音を単独化してあるけど、間違ってはいないよ」

 何か凄い事をさらっと言われたような気がするが、気にすまい。こんな事で驚いていては、この先身が持たないだろう。

 「ふ〜ん。そっか。ちなみに俺の名前は理一朗。よかったら憶えといて」

 「はは。勿論憶えるよ。理一朗」

 こうして俺達は、ようやくお互いの自己紹介を終えることができた。だが、こちらにはまだ聞きたい事が山程もある。まだまだこれからだ。この神秘の世界を知るために・・・ヌリシンハの事をさらに知るために・・・まだまだ、これからだ。

 

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