by くらげ
俺が眠ってからどれくらいの時が過ぎ去ったのであろう。日はまだ何となく高いように感じる。ただぼ〜っとしている時はあんなにも時が流れるのが早いくせに、何かを待って時を過ごす時は何故斯くも時の流れるのを遅く感じることか。世の中不条理だ。 カップラーメンより遥かに長い時間を待つこと数時間(体内時計による推定)。 日は漸く西へと傾き、もはや夕日となって再び水平線へと還る頃。世界はルビーの輝きでもって俺を迎えてくれた。それと同時に俄かに光り始める湖面。世界が幻想に包まれる刻。俺は見た。水面を舞う妖精を。美しく、妖しく、そして儚い・・・全てが夢のような瞬間。それは日が完全に沈む迄続いた。 刻が過ぎ去った後、世界は完全なる静寂が支配していた。だが、それもほんの束の間。世界は再度動きだす。魚達が目を覚まし、それが湖に波を生む。千変万化の輝きで彩られた世界が再び俺を魅了する。 気が付くと彼はそこにいた。今朝と同じ輝きで。 「・・・おはよう・・・いや、こんばんは・・・かな?」 それを聞き、微笑むヌリシンハ。 「どっちでもいいよ。好きなほうで」 「それじゃ・・・おはよう。いい夢は見れたか?」 又も微笑む彼。 「ぼちぼち・・・かな。そっちこそ、随分見惚れてたみたいだけど?」 「そりゃね。あれを見て見惚れない奴は眼が腐ってる」 然も当然といった口調で答える。嘘は言ってないつもりだ。 「そう言ってくれると彼女たちも喜ぶよ。何せ久しぶりのお客さんだからね。彼女たちも張り切ってた」 「彼女たち・・・って、もしかして妖精たちのこと?」 一応聞いてみる。 「そうだよ。幻惑的で奇麗だったでしょ?」 頷く。どんな言葉で飾り立ててもあの美しさを表現することはできまい。だから、ただ頷く。それだけで充分だ。 「毎日あんな風になるのかな? 夕方は」 改めて尋ねる。 「うん。今の季節はね。あれはこの季節の風物詩だから。他の季節は他の季節でまた色々な風物詩がある。それはそうと・・・」 彼が言いたい事は解っていた。一つ頷くと、俺は彼に聞きたいことを頭の中で整理し始める。ヌリシンハは何でも答えてあげるよ、といった風な感じで微笑んでいる。そうだな・・・先ずはここの世界観から説明してもらうとしよう。元の世界への還り方等の説明はその後でいい。夜はまだ始まったばかりだ・・・気長にいこう・・・気長に・・・ |
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