sakana.JPG (6332 バイト)                    by くらげ

 

 「そうだね・・・じゃ、先ず最初にこの世界についてのことを聞かせてもらおうかな」

 俺は予め用意しであった質問をヌリシンハに投げ掛けた。

 「世界について・・・というと、世界観のことかな?」

 眉に皺を寄せたのか、彼の額が妖しく輝く。

 「そ。お前さんが知っている限りのこの世界に関する情報を教えてほしい」

 俺がそう言うと、彼は面白そうにこちらを見てきた。俺がとっとと還る方法を教えてくれ、とでも言うと思っていたのだろうか。眼をぱちくりさせて、やがて笑いだした。

 「ははは。やっぱり変わってるよ。君は。そんな事を聞かれたのは初めてだ」

 「大きいうえに余計なお世話だよ」

 むっつりとして言い返す。

 「ははは。御免、御免」

 彼は謝ると同時に、笑いを収めた。そして少し考えるような仕種をして、ぽつりと一言。 

 「世界観・・・か」

 それを聞いて、俺も一言。

 「そう。知っている限りでいいからさ」

 ヌリシンハは尚もしばらく考えていたが、やがて意を決したように言った。

 「わかった。けど・・・君が思っているよりも随分と大きな話になるよ」

 俺はその言葉に圧倒されたのかどうかは知らないが、ごくり、と喉を鳴らした。

 「僕も伊達で『神の魚』と呼ばれている訳じゃない。はっきり言って、君よりこの宇宙については詳しいよ。遥かにね」

 「宇・・・宙?」

 まさか宇宙がでてくるとは、夢にも思わなかった。茫然と咳くと、更に彼は言ってきた。

 「そう。宇宙だよ。僕はこの星だけじゃなく、宇宙の歴史と、そして仕組みを『神』から聞いている。当然、君が住んでいた地球のことも・・・ね。」

 「・・・」

 驚きで言葉がでない。頭が混乱してきた。落ち着け。落ち着いて考えるんだ。だが、そうは思っていても、なかなか落ち着くものではない。目の前の彼は宇宙の歴史と仕組みを知っていると言ったのだ。もしそれが本当ならば、とんでもないことだ。遥か上空では、未だ落ち着かぬ俺を嘲笑うかのように二つの月が光っている。

 「どうする?」

 尚も考えている俺に、別段急かすわけでもなく、淡々とした口調で聞いてくる。

 正直言うと恐かった。考えすぎかもしれないが、聞いてしまったら俺の中で全てが壊れてしまう。そんな気がした。が、もう一方で頭を擡げてくるものがあった。知的好奇心だ。

 「・・・教えてくれ。君の知っていることを・・・全て」

 何時の間にかそう答えていた。

 

                       小説広場へ戻る TOP BACK NEXT