MTBのレースだ!の巻(その10 出走) 

2000.06.20

 とうとう、俺の出番がやってきた。
いざ行かん、泥だらけの地獄の道へ
     


NEW ライドロン

      間もどんどんと過ぎ、とうとう私の出番となった。
     スタート地点に立ち、レースの案内があるのを待つ。

     実は、この瞬間が一番どきどきする瞬間なのだ。
     何とも言い表せない緊張感。
     つい水が欲しくなる。緊張とはこんなに苦しくて、どきどきするものなのかと、
     プレッシャー(何の?)に押しつぶされそうだ。
     仕事でもこんなに、プレッシャー(だから何の?)を感じた事はないと言うのに。

     キッズ達のレースも終わり、いよいよ出番が来たようだ。
     係員「一分前です。」
     チャボ「いよいよですね。がんばってきてください。まずは、トップでコースに入るんですよ。
     大佐「そんな無茶な・・・・無理!

     係員「10秒前・・・・」
     ここからの十秒が一番長く感じるのだ。20秒にも、30秒にも感じられる長さである。
     係員「5・4・3・2・1。スタート!!!」
     チャボの時と同じように、アナウンサーは異常とも言えるほどの絶叫と共に解説を行い出す。

     私は無我夢中で、トップ集団に食い下がろうとするが、水溜まりと、集団の混雑とで
     なかなか前に出る事が出来なかった。
     それでも、何とかコースに入る頃には、中盤に潜り込んでいた。

     あとは、無我夢中である。
     どこをどう走ったのかなんて覚えても無い。(試走をしてないのだから、余計、覚えてるはずがない。)
     シングルトラックを押して登ったり、はたまたは、集団に紛れて、下っていったり・・・・
     気がついた時には、最終の長い長い登り坂に差し掛かっていた。
     大佐「はぁ、はぁ、はぁ・・・(何で・この坂はこんなに長いんじゃぁ)」
     無茶な愚痴である。しかも、変な切れ方である。
     これがコースなのだから仕方ないのに・・・

     それでも、私は一人、また、一人と抜いていく事が出来た。
     ようやく、登りも最終になり、あとは下るだけだ。
     一息つく間もなく、下り坂を懸命に走る。
     私は、下り坂は苦手だ。
     練習で転倒して以来、恐怖心が深層心理に刷り込まれてしまったらしい。
     体が硬直し、過去の惨劇を思い出す。
     あの時は、確か自転車ごと前転をした。
     太股と言わず、ひざの部分も怪我をした、ジーンズなどびりびりに裂かれていたのを思い出す。

     それでも、レースとなれば別だ、勇気を振り絞り、コースを下る。
     下り終えると、そこはゴール目前。
     あとは、平地を水溜まりに突っ込みながらも、ゴールするだけだ。
     運よく、下位の走者とは、少し差が空いているようだった。
     余裕とまではいかないが、何とか無事にコーナーを回り、ゴールした。
     実に苦しいコースだったのは、言うまでもない。
     大佐「はぁはぁはぁはぁ・・・・・
     もう、声にすら、文句すら言う元気もない。

     チャボ「お疲れ様でした!あぁ、もっと早く走らないと〜」
     大佐「はぁはぁはぁ、無理。はぁはぁはぁ」
     文章で書くと、息遣いがいやらしく見えてくるのは私だけだろうか・・・
     そんな事はさて置き・・・

     次々と、選手達が帰ってくる。
     その選手達と、「お疲れ様」と声をかけ、我らがWINNERの選手達の元へと歩み寄る。
     「お疲れ!」の声が、とてもうれしく感じる一時だ。

     あとで聞いた話だが、結局、私は17/54人中だった。
     去年も、確か17位だった。結局、何も変わってないじゃん。
     本当は、10位くらいにはなりたかった。しかし、練習もろくにしてないのだから、それは無理と言う物。
     この時だけだ!帰ったら練習の鬼になろうと思うのは・・・・

     少しの会話をした後、ベースキャンプに向けて、帰路を取る。
     大佐「まずは、風呂だな。」
     チャボ「じゃあ、片付けをしておきますよ。」
     大佐「すまんが頼んだぞ。」
     流石はキャンプチームの下っ端である。

     私は再び、MTBにまたがり、先にベースキャンプに向かう。
     そして、本部の前を通り過ぎようとしたその時である。
     大佐「あ〜、お前ら人の恩を忘れて、こんな所で何、鮎の塩焼き食ってんだよ〜」
     3人組「あっ、もうレースは終わったんですかぁ、お疲れ様ですぅ」
     大佐「お疲れ様ってね〜、ありがとう。そうじゃなくて、応援は〜??」
     3人組「なははは・・・」
     所詮はそんなものである、人の恩と、出来合いの言葉などは、喉元過ぎればなんとやら・・・・

     3人組「じゃぁ。写真撮りましょう!!はい、チーズ!!」カシャッ!!

                                                     続く・・・・