思ひ出 T(亀事件)・・・の巻

今回は、遠い昔の事について書いてみようと思う。

      れは、私がまだ小学校3年の頃である。
     私の家の前には、私より1歳上の男の子が住んでいた。
     当時、私は引っ越しをしてきたばかりで、近所に友達も少なく遊び相手もあまりいないような状態だった。
     (弟は、幼稚園だったし、遊び相手には役不足だった。)
     そんな時に、友達となり、毎日のように遊んだのが彼だ。

     我々(弟もたまには入るが・・・)が好んでよくした遊びがある。
     それは、魚や、ざりがに、亀を捕りに行く事だった。
     家の側には、ちょっとした川が流れており、5月にもなると、そこかしこにあやめや、花しょうぶが咲き乱れていた。
     今は、コンクリートで固められ、土手もなくなり、鯉などを放して禁漁区と成り下がってしまった。
     私の親父の子供時代には、そこでよく泳いだそうだ。
     しかも、金魚などもたくさんいたらしい。

     話を元に戻そう。
     当時、その川の土手は、当然、土で出来ており、両端はあぜ道のような感じだった。
     我々は、よくその川に入り(入ると、腰下くらいまで水に浸かってしまう)
     「ふな」や、「はや」を取ったものだ。
     その川には、うなぎの稚魚が上がってきており、どれくらい、水が綺麗だったか想像できるだろう。
     (今は、どうか分からないが、綺麗とはお世辞にも言えない)
     もちろん、私はうなぎ増殖プランを立てたりしたが、その話は、またの機会においておくとして。

     我々は、いろんな川に挑戦をした。
     腰上まで漬かる事も、少なくはなかった。

     そんな中でも、我々には秘密の漁場あった。
     その名も、誰が付けたか「亀の王国」である。
     そこは、家の近くの川の上流に位置し、一種のため池の状態。
     ため池の中心部には、葦のような植物が密生しており、人目にはなかなかつかない場所だ。
     その中心部には、名の通り、亀が大量に甲羅干しをしており、行けば必ず、亀を捕まえる事が出来る場所だ。
     その場所も、今は、コンクリートに覆われているただの川の一部になってしまったが・・・。

     事件は、ここから始まる。
     ある日、彼はそこで、子亀を捕まえた。まだ、小さくかわいかった。
     彼は、当然、その子亀を大事にしてるわけだが、我々の漁に行く時でも、持ち歩いているほどだった。
     亀にして見れば、いい迷惑だった事だろう。

     いつも様に、我々は川のあぜ道を歩いていた。
     私はいきなり声を発した!!
     「わぁっ!!」
     ヘビのようなものを踏んでしまったからである。
     すると、すぐ後ろで、同じく声が聞こえる。
     「わぁぁっ!!」

     しかし、良く見ると、そこには、ヘビではなく、ヘビの抜け殻しかなかった。
     気がつくと、彼の手に持っていたはずの、大事な、大事な、子亀ちゃんがいないではないか!
     当たりを隈なく探したのは、言うまでもないだろう。
     当然、彼は怒る。それも、私に・・・・
     彼の言い分はこうである、
     「ヘビの抜け殻くらいでびっくりするなっ 亀がいなくなったじゃないか!びびりがっ」 
     と、彼は言う。

     正確に言うと、いなくなったのではなく、あんたが落したんだよ。

     彼の言う事も分からないではない。
     彼の大事な、大事な、子亀ちゃんがいなくなったのだ。
     気が動転おしているだろう。確かに、初めにびびったのは私だ。

     今、冷静に考えれば、多分言い返していただろうが、当時は、私も気が動転していた。
     結局、その場は「また、捕まえればいいじゃんっ。」で丸く収まったのだが。

     今になって一言言いたい。
     「あんたの方がびびりだよ。きっと。」

     でも、それも、今となってはいい思い出である。
     彼とは、極たまに、会う時があるが、今でも、いい人だ。(たぶん)


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