しまなみがくれたもの
投稿者 廣島拓也さん
(2012年4月4日掲載)▼数々の思い出を僕につくってくれた父との思い出の中でも、1,2に上げられるのがしまなみ海道への旅行だ。もう4年も前のことになる▼旅行といっても、単に車で渡ったわけではない。松山に住む祖父母の家に里帰りする途中、車でやってきた尾道で母と別れを告げ、父の趣味の一部であるロードレースバイクで、父と共にしまなみ海道を縦断した▼どれくらい時間がかかっただろう。まだ明るい10時ごろから自転車をこぎ始め、自転車で全国を旅してきた”ベテラン”の父と前後を交代交代に走って体力の消耗を防ぎつつ、日が暮れるころに今治についた▼伯方島はちょうど5つ目の島だ。ここまでだいぶ進んできて、あと少しで四国上陸、という踏ん張りどころの島だったような気がする。旅慣れしている父にたくさんのことを教わりながら、必死にペダルを踏んだ。▼走ったのは2008年の年末。当然季節は冬で、出会う人も少なかった。しかし心温まる出会いもできた。例えば、無謀な挑戦をする大学生二人組。尾道で無料で譲ってもらったとかいうママチャリ(普通の自転車)でしまなみを横断すると話していたが、到底普通の自転車で縦断するのは厳しく、途中でお尻の皮が痛くなったとか言って休憩していた▼その後出会った若い女性二人組も面白かった。ロードバイクで走っているまではよかったのだが、そのヘルメットを逆にかぶっていたのだ。通常、ロードバイクのヘルメットは、とがっているほうを後ろにしてかぶるのだが、その2人組はとがっているほうを前にしてかぶっていたのだ▼旅の終盤、馬島のあたりで強風のあまり自転車ごと倒されそうにもなったが、なんとか無事に自転車旅行を終わることができた。そんなこんなで、父との良き思い出をつくってくれたしまなみ海道に、今改めて感謝したい。そのお礼にといっては変だが、いつかは自分の息子と同じコースを旅行したい。今度は歩いて渡ってみようかな。もちろん、そのとき宿泊は伯方島で。