税理士の四方山話
インボイス登録番号の位置について
インボイス制度がもうすぐ(2023年10月1日から)開始となります。
直前となる今、改めてインボイス(適格請求書)に記載する必要があることについて、
まとめてみます。
○インボイスの記載事項○
1.インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
2.取引年月日
3.取引内容
4.税率ごとに区分して合計した対価の額
5.税率ごとに区分した消費税額等
6.書類を交付を受ける事業者の氏名又は名称
基本的には今使っている請求書に必要な事項を加えるだけのものです。
詳細は様々なところで述べられているので略しますが、勉強する中で、一つ気になった点が。
「1.インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」について、
とあるサイトで、『名称と登録番号と合わせて記載することが求められています』
といった表記を見かけました。
どうやら『及び』というところに注目して、併記と解釈しているようです。
ただ、本当にそこまでする必要があるのか?
少し不思議に思いましたので、色々と調べてみました。
で、私個人の意見としては、登録番号、名称に関しては、
インボイス内に書かれていれば、必ずしも併記までは求められてはいない。
と結論付けるに至りました。
及びで結び付けている以上、可能なら併記するほうが安全だとも思いますが。
(勿論個人の意見なので、皆様の最終判断は所轄の税務署等のご意見も参考に……)
インボイス通達、関連法規、Q&A、インボイスの相談窓口、
相談センター等、公的機関にも聞いてみましたが、特にそのようなルールはないとの答えでした。
国税庁のお偉方のインタビューでも、実際の調査で細かいところをあげつらうつもりはない
との答えでしたから、そこまで難しくは考えなくて大丈夫なようです。
(まあ、今はインボイスを受け入れてくれという思いも見え隠れしますね)
今後実際の運用が始まって、問題点が色々出てくるでしょうから、
その都度、対応する必要が出てくると思われますインボイス。
アンテナは常に張り続けて行きたいと思っています。
電子化と相続
確定申告の季節も終わり、あっという間に桜も散って、GWも目の前です。
我々税理士の業界だと、GW前から3月決算法人の申告作業を行っていますので、
まだまだのんびりとはいかないのですが。
さて、そんな毎日ですが、ここ最近思ったことが一つ。
先日、保険会社の方と話していた時のことです。
最近は何もかも電子化で、いい面もあり悪い面もあるねと。
私自身、掛けている生命保険の内容を確認するのに、スマホを使うことが多くなりました。
自分だけがログインできるスマホで、他人には情報を知られない安全な状況です。
でも、この状況、突然の不幸があったとき、どうなるんでしょうか。
紙の証券がなく、ネット上だけでしか契約を確認できないとなると、
遺族はその存在そのものを知るのが難しくなります。
今はまだ、銀行の通帳は紙の実物があるので、引落の状況から保険の存在を推測することも可能ですが、
この通帳にも電子化の流れが来ています。
あと10年もすると、何もかも電子化されて、紙でのDMも広告も届かなくなり、
全ての情報は電子の海にのみある状況になるかもしれません。
財産の状況を家族に常々話している方はいいのですが、
そうでない場合、財産の存在を確認するところから相続作業が始まることになります。
きっとその作業はとても大変で、疑いだしたらキリがない地獄の作業になることでしょう。
そうならない為にも、時代を逆行する様ですが、
ノートにメモを残しておくなど、最低限の財産一覧を付けておくことをお勧めします。
せめて身近な家族には、財産の話をしておくだけでも違うと思います。
情報の電子化は非常に便利ではありますが、セキュリティの都合上、本人にしかあつかえなくなります。
むしろそれこそが目的なのです。
ですがそうなると、本人が亡くなった後に遺族の前に立ちふさがるのは、その堅牢なセキュリティ……
勿論、遺族であっても例外はありません。
便利なものを便利なだけでしっぺ返しをくわないよう、一つ先の手を打っておく。
社会が変わりゆく中で、考えておかないといけないことなのかもしれません。
ふるさと納税を「した後」の話
ふるさと納税も一般的になって、既にされている方も多いかと思います。
年末に、ボーナスの予想額を踏まえ、上限額を考えて、もうちょっとしようか、なんてよくある話です。
このふるさと納税、やった場合は原則として「確定申告」が必要です。
実はこの「確定申告」に添付するふるさと納税関係の書類について、
今年からこっそり選択肢が増えていることをご存じでしょうか。
これまでは、各自治体から送られてきた「寄付金の受領証明書」、これを添付する必要がありました。
ここに、今年から、「寄付金控除に関する証明書」という書類を使う方法が加わったのです。
この「寄付金控除に関する証明書」は、ふるさとチョイスなどの、ふるさと納税の仲介をする事業者が発行する、
この人はこの年にうちを通じてどこどこにいくらふるさと納税しましたよ、という、
寄付の実績一覧についてまとめた書類のことです。
この書類を添付することで、〇〇県の証明書をなくしたとか、まだ来てないとかいう手間を省いて、
一枚の書類で申告が出来るということになります。
ちょっと聞くと便利になったなあと思えますが、ちょっとだけ注意点を。
この「一括した証明書」は、事業者によって、「電子データのみの提供」や「紙で郵送」など
様々な様式での発行のパターンがあるとのことなのです。
紙で送ってもらえる場合はさほどでもないのですが、電子データのみの場合は、そのままだとe-taxでの電子申告にしか使えず、
紙の証明書に変換したければ、国税庁のQRコード付証明書等作成システムを使用して、PDF化してから印刷…
と結構手間がかかるものになっているようです。
証明書データのダウンロードは、来年春からになるようですので、事業者を経由してふるさと納税をされている方は、
一度HPをチェックしておいた方がよろしいかと思います。
映画館での飲食について
コロナですっかり映画館に行くことも減ってしまいましたが、
ようやく落ち着いてきて、久々に何か観に行こうかと。
氷がいっぱい入ったコーラを飲みながら、ポップコーンを頬張りながらの映画観賞は至福の時です。
さて、このコーラ、ポップコーン、消費税は何パーセントでしょうか。
飲食物だから、8%と思う方……はい、半分正解。
劇場の、座席で食べた場合は8%です。
ところが、売店のあるロビーのベンチで食べた場合は、10%になります。
この違いは、持ち帰りか、店内飲食かの違いです。
ハンバーガー店で、テイクアウトだったら8%ですし、店内で食べたら10%になりますよね。
実は、それと同じことなんです。
まあ、「映画館内は、店内じゃないの?」と言われると微妙なところで…
国税庁によると、「売店のそばにテーブル等を設置していて、そこで食べた場合」を店内と判断するようです。
ただ、特殊な場合として、劇場の座席から注文できるシステムになっている場合は、座席で食べても10%だとか。
これは、映画館というより、野球場等のスタジアムで売り子さんが売って歩いている場合でしょうか。
とは言え、ビールサーバー担いだ売り子さんしか知らないので、この場合はどちらにせよ、10%ですが。
(お酒類は消費税10%固定なので)
結局、映画館の対応としては、「ロビーで食べます」とお客さんが自己申告しない限り、
8%対応が一般的な様子。なんともややこしい限りです。
確定申告が要る人って?
11月も半ばを過ぎると、年末調整の資料が届きましたというお知らせが、お客様から入ります。
この連絡がくると、年末だなあと思うのが、我々の業界の風物詩です。
さて、皆さんもよく耳にすると思いますこの「年末調整」
「確定申告」とどう違うの?という質問を頂いたことがあります。
実際、やっていることは、一年間の所得税の調整ですので、似ていると言えば似ています。
そこで今回は、「職場で年末調整をされていても、確定申告をしないといけない場合」
これについてご説明しようと思います。
ちなみに、年末調整で完結出来る場合とは、
・務めている会社が一か所で、そこで年末調整が行われた場合
です。とてもシンプルですね。
多くのサラリーマンの方は、ここに該当します。
では、年末調整をしていても、確定申告をしないといけない場合は…
・二か所以上から給与を受けている場合
・お給料以外に他の所得(不動産所得、譲渡所得等)がある場合
・住宅ローン控除を受ける1年目(2年目以降は年末調整でOK)
・医療費控除を受ける場合
・ふるさと納税を行った場合(ただし、ワンストップ特例制度を使用しない場合)
・その他、特殊な税額控除、所得控除を行う場合
・年末調整で控除証明書を出し忘れた場合、扶養を入れ忘れた場合 ……等
代表的なものを挙げてみました。
もし、年末調整で出していない控除関係の書類があれば、
確定申告をする必要があるのでは?と考えたほうがいいと思います。
注)一部、専門的になりすぎる部分については省いておりますので、
実際の申告可否の判断は、税理士又は税務署等にお尋ねください。
ハロウィンジャンボと税金の話
世間はすっかり秋……とは言え、私自身はコロナ禍ということもあり、職場と自宅の往復しか最近しておりません。
季節を感じる間もなく、夏が終わって、気づけばもう10月です。
さて、この時期になると、ハロウィンの飾り付けが目に入ります。
私が子供の頃にはあまりなかった気がしますが、流行りだしたのはいつ頃からなんでしょうか。
とはいえ、カボチャのランタンだったり、魔女の帽子だったり、見ていて楽しい気分になるので、私は好きです。
そんなハロウィンですが、今は、ハロウィンジャンボという、宝くじの名前になるくらい浸透しているようです。
妻が10枚ぐらい買っていたのを見て、知ったのですが。
1等前後賞合わせて5億円だとか。
さて、ここからちょっと税金的な話。
この宝くじ、当たったとしたら税金はどうなるでしょう。
サラリーマンの給料のように、源泉所得税が引かれて5億円ちょうどはもらえないんでしょうか?
既にご存知の方も多いかもしれませんが、
答え:いわゆる宝くじの当選金に税金は掛かりません。
当せん金付証票法第13条
当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。
上記の通り、所得税の非課税所得になっています。
なので、いくら当たったとしても、税金の心配は不要です。
ただし、一つだけ注意点が。
仲間内や夫婦などで共同購入した場合、代表してだれか一人が当せん金を受け取って、後で分配したら、贈与と見なされる場合があります。
なので、共同購入者全員で受け取りに行って、銀行に証明書を発行してもらう必要があります。
夢を買う宝くじに、現実の話をするのは、興ざめかもしれませんが、もしもの時に……
もとい、近々やってくる予定のその日に思い出して頂けるとよろしいかと。
当たり前に疑問を持つこと
先日、「当たり前のことも、たまには疑う必要がある」と、感じることがありました。
贈与税について調べていて、思わぬ発見があったのです。
贈与税の基礎控除(この額までなら税金がかからない額)は、年110万円。
これは、いろいろなところで見聞きすることのできる、とても当たり前のこと…
なのですが、そもそも贈与税が規定されている相続税法にはこうあります。
相続税法
(贈与税の基礎控除)
第二十一条の五 贈与税については、課税価格から六十万円を控除する。
あれ?おかしいな。相続税法では、基礎控除60万円のままだ。
私が学生だった時、専門学校で習ったのは、この金額(60万円)。
でも平成13年で変わったはず。ということは、もしかして…。
心当たりのある法律を引っ張ってみると、答えはそこにありました。
租税特別措置法
(贈与税の基礎控除の特例)
第七十条の二の四 平成十三年一月一日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、
相続税法第二十一条の五の規定にかかわらず、課税価格から百十万円を控除する。以下略
こっちかー。
租税特別措置法とは、時限立法です。いつでも廃止できます。
ということは、基礎控除を本法の60万に戻すことも可能ということ。
基礎控除が変われば、絶対に耳に入るから、知らなくても問題ないけど、
元々はどうなのか、何がどうなって今の形になっているのか。
こういう深いところまで理解しておくということは、大事ですね。
日々、勉強です。
へそくりにはご用心
相続税の調査で一番話題になるものは何でしょうか。
複雑な評価計算を行う土地?株式?金額の大きい生命保険金?
いえいえ、税務調査官が指摘するのは、預貯金の動きです。
日本のご家庭だと、奥さんが預貯金の管理をされている場合が多いように思います。
母親が財布を握っていて、父親は預金がいくらあるかも判らない。
そんなご家庭も多いのではないでしょうか。
それ自体は、それぞれのご家庭次第なので構わないのですが、
いざ相続が発生した時には、『この預金はご夫婦どちらのお金でしょうか』という問題が発生します。
そんなもの通帳の名義人のものだろう…と、思いますよね。
ですが、税務調査の現場では、そう簡単にはいきません。
預金通帳の名義は、あくまで参考程度。
実際にそのお金の出所は誰か。そのお金を管理していたのは誰か。そのお金を自由に使うことが出来たのは誰か。
そういった全般を考慮した上で、実際の調査ではその預金が誰のものかを判断します。
ここで最初(タイトル)に戻って…へそくりってありますよね。
専業主婦等で、収入がないはずの奥さんの通帳に、多額のお金が貯められていた場合。
ご主人から贈与で貰ったと言っても、贈与そのものが成り立たない場合もあるようです。
贈与が成り立たないとどうなるか。名義を奥様名義にしていただけで、実質は旦那さんのお金という判断になります。
つまり、もし旦那さんにもしものことがあったとき、奥さん名義の預貯金であるにもかかわらず、
旦那さんの相続財産として課税される対象となる…という可能性があるのです。
この辺りの判断は、それぞれの案件ごとに変わってきますので、必ずしもこうなるとは限りませんが、
夫婦間においては、預金名義=持ち主とはならない場合もあるようですので、どうぞ、ご注意を。
声かけのチカラ
先日、定期健診で胃カメラを受けてきました。
実は私これが苦手で、本当に苦しい。
弛緩剤(?)を使わない方針の病院なので、七転八倒してきました。
一度えづくと、自分の身動きで余計に苦しくなる始末。
どうしようもないので、ひたすら終わるのを待つしかないわけですが、
お医者さんや看護師さんが、『大丈夫ですからね、落ちついてゆっくり呼吸して』
『あとちょっと、頑張って』など、色々優しく声をかけてくれました。
これ、非常に大事だなあと。
実際のところ、苦しいことは苦しいわけで、声をかけられたからといって変わるわけではない。
それでも、こちらが苦しんでいることを気にかけてくれるというだけで、安心する。
私たち税理士も、常にお客様の気持ちに寄り添って、何がお客様にとって一番かを考えていく必要がある。
そんなことを、力みすぎて疲れ切った待合室の中で、ぼんやりと考えていました。
それはそうと、健康診断の結果、何もないといいなあ……。
GoToで儲けた額の謎
気づけば、11月も半ば、あっという間に年末が近づいてきています。(掲載時は2020年11月)
特に焦る必要はないはずなのに、なんとなく気忙しい感じがします。
さて、今回は、一時所得のお話です。
来年の確定申告ご準備のお知らせを、もう少ししたら送ろうかと考えていましたところ、
今年特有の話題があるなと気づきましたので。
GOTOトラベル、GOTO EAT等、使われた方も多いかと。
これらでお得になった金額、所得(=一時所得)になると言うと驚かれる方も多いのではないでしょうか。
一時所得とは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、
労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」をいいます。*国税庁HPより抜粋
GOTOの政策による、国からの給付と考えられますので、一時所得になるということです。
とはいえ、多くの方は、あまり気にする必要もないかもしれません。
一時所得には、50万円の控除があります。一年間に得た一時所得全額から50万円引いた残りが課税対象となるのです。
よほど高級旅館を何泊も利用したりしない限りは、GOTOのお得分だけで50万円を超すことは少ないでしょう。
ただし、一つ気を付けるべきは、これらGOTO以外に一時所得がある場合です。
例えば、懸賞金、保険の満期返戻金、解約返戻金等でまとまった一時所得がある場合、
足しこむと50万円を超すかもしれません。その場合は、要注意です。
ちなみに、コロナ特別定額給付金(国民一人10万円の例のアレ)は特別に非課税措置がなされており、
所得には含まれませんので、ご安心を。
仕事において必要とされるもの
先日、かつての後輩から税理士試験、合格しましたとの連絡がありました。
お祝いの言葉を送ったり、近況を聞いたりした後、
暫くして、「今後の仕事に役立つアドバイスを下さい」とのこと。
急に言われても、すぐには思いつかないのですが、一つだけ。
『想像力を働かせること』
相続のお客様の場合、初めて来られる方が多いので、全く白紙の状態です。
お客様が考えてらっしゃる、関係事項が、税金と関係のある全ての事柄とは限りません。
というより、大抵の場合、これは税金と関係ないだろうなと考えてらっしゃることの中に、重要なことが隠れていることが多いです。
だから、会話の中でその手掛かりを見つけ出し、推測し、想像し、見つけ出していかないと、いけません。
常に、『もしかして』を持つこと。どんな仕事でも必要なことかもしれませんね。