第96号 2019年8月5日発行
南 郷 庵 入 庵 日 (2)
荻原井泉水から「放哉の住める処を紹介してほしい」との依頼に、井上一二と杉本玄々子は話し合った上で、『来島は見合わせるように』と、断りの電報を打っていました。 しかしそれと入れ違いに小豆島へ来てしまった放哉。困惑した一二は、玄々子を訪ね相談しました。その時の様子を、玄々子は以下のように書いています。
彼が島に来ると云ふ井先生(※荻原井泉水)からの便りをもたらして井上 一二さんが私を訪ねて下すったのは大正十四年の七月頃の暑い日であった様 に覚えてゐる。井先生のお便りの始終を聴いて私は一二さんに云ふたものだ。 サア、急に庵をと云はれても、庵には それ??留守番がゐて心當りもない し、特に放哉さんが自活してゆける庵と云ふと数へる程しかないのでありま す…困った事ですね―と迷惑そうに私が云ふと一二さんも非常に恐縮され た様子で、コノ庵の事は私ども門外漢には一向に様がわからないので實際困 るんです。それに放哉君はお酒が好きなんだそうで、今迄何処でもコノお酒 で失敗したとか云ふ事なので眞実にどうかと思うのです。がマア霊場の事は 貴僧がお詳しいので御相談やらお願ひやらと云ふ譯けなのです。サア、お酒 が止められんと云ふ人も困つたものですね―庵はマアゆる??探す事にして …ですが酒呑み≠ニ云ふ事が一枚加はる事になると、島へ来てもらってお 世話をしても將来が案ぜられますね―それなんです。どうしたものでせう― と當惑の面もちであった。その内に適當な庵が見つかつたらお知らせするか ら、それまで島へ来る事は見合す様に返事を出すより仕方がありませんです ねと云ふと、では左様に先生にお返事をいたしませう。その内貴僧も御迷惑 でせうがよい庵を探して見て下さい。と云ふ事で辞去されたのであった。 ―コノお返事、と彼が島へ来るのと丁度入れちがつて―間もなく彼は島の一二さんの宅に落ついて ―こうした不用意の内に島へ来て仕舞った彼をどうしたらよいかに就て一二さんは色々と心をいためられた事であった。南郷庵の提供も兎にも角にも、殆ど無収入に等しい庵である為に…是から自活してゆかねばならん放哉さんに対して、コヽエお住ひなさいとは、どうしても自信が無くて申上げられなかったので一應庵を御覧になって、自分で住んでみようと云ふ気持におなりの様なれば―と云ふ事で兎も角も此の南郷庵に一先ず落つく事になった。『放哉さんと私』より
放哉が安住の地を得られたのは、一二だけでなく玄々子のおかげでもありました 。一二と同じく生活面金銭面での援助をし、また、おおらかな性格で包容力もあり放哉の困り事や話を聞くなど、心の支えにもなっていました。
(写真左:井上一二/写真右:杉本玄々子)
 
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赤色字 町広報・放哉だより発行日 
紫色字 記念館休館日
茶色字 図書館休館日
〜 俳 句 風 鈴 展 開 催 中 〜 
館内&敷地内に放哉句を付けた風鈴を飾っています。また、ご来館の皆さまの俳句も飾ることが出来ますので、自由律俳句に挑戦してみませんか。ぜひお越しください。
【期 間】 8月1日(木)〜9月1日(日)
【時 間】 終日
【場 所】 小豆島尾崎放哉記念館内および敷地内
※天候により、変更になる場合があります。
【問合せ】 小豆島尾崎放哉記念館
 TEL62−0037
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