啓、酒田からの「エハガキ」只今拝見、御喜び下され度候。北郎氏も御同行御淋しくないことと思います。第一信ご覧下され候由。第二信も其内ご覧下さる事と思います。此手紙は、中田様内留置で差出します。別に急用ではありませんが井上氏宛にアナタから御礼状出していただけば甚結構と思います。猶、西光寺の住職さんが、どういう因縁か、大変ご親切にしていただいて、コチラが恐縮する次第之が気があったとでも云ふのでせうか、誠にうれしいので、殊にアナタから、懇切に御礼状を出して下され度切に御願い申上げます。
此の頃、自分の勝手にしているものだから今までのくたびれが出たらしく少しボンヤリして居ます。朝から、庭掃きと、仏さまの掃除と、読経と句作とであります。………縁とは申せ、アンタには、何から御礼申してよいやら、わからない。…… 「入庵雑記」といふ様なものを書いて感謝の一部分を層雲にもらはうかとも思って居る次第、……ソレカラ例のオ酒ですが、これも縁が来たのか、「決して、コヂ付けではありません」自然と、タクサン呑めぬ様になり、呑めぬから、よはぬと云ふ事なり、矢っ張り、時期が来ればかう云ふ風になるものらしい。小さな人間の努力で、ヤメルとかヤメヌとか云うる間は、考えて見ると馬鹿らしく見えると云ふ風にも思われます。
一二氏は、私が「ビール」を一本以上呑むと、大変な事になると思っているらしいからオカシイ。西光寺さんは、中々、イケマス。決して、自分で、大いに、つつしんでも居らぬのだが自然、呑めない、オカシイ事です、有り難いことに思って居ります。イヨイヨ其の時になったのかなとツクヅク考える事があります。今日は只御礼状出してもらいたくて其のお願い。毎日十句宛は作っています。
大正十四年八月二十六日南郷庵 荻原様
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