<この記事の概要>具体的な相続税の計算例。「課税遺産総額」を出してから後、実際にかかる相続税額を出すまでの計算の仕方を解説
「法定相続分」とは
相続税の計算の仕方(前編)で、「課税遺産総額」まで算出することができました。
では、次の計算に進みましょう。
計算式③ 「課税遺産総額」を「法定相続人」に対し「法定相続分」に基づき仮に配分する
計算式と言いつつ式ではなく文章になっていますが…まずは、また新しく出てきた用語に注目してください。
「法定相続分」…民法で定められた相続分(割合)のこと
民法で定められた相続人=法定相続人と同じですね。
※法定相続人についてはこちらの記事で解説しています → 「相続人と被相続人」
では具体的にはどう配分することになっているのでしょう。
これは、法定相続人が誰なのかによって決まっています。
パターン1:法定相続人が配偶者と子ども(第1順位)である場合・・・配偶者に1/2、子ども全員で1/2
(子どもが複数人いる場合はこの1/2を人数で等分します)
パターン2:法定相続人が配偶者と親(第2順位)である場合・・・配偶者に2/3、親で1/3
(両親ともにいる場合はこの1/3を等分します)
パターン3:法定相続人が配偶者と兄弟姉妹(第3順位)である場合・・・配偶者に3/4、兄弟姉妹全員で1/4
(兄弟姉妹が複数人いる場合はこの1/4を人数で等分します)
パターン4:法定相続人が配偶者のみ、子どものみ、両親のみ、兄弟姉妹のみのいずれかである場合・・・該当者に全額
(該当者が複数人いる場合(子どもが3人など)はこの全額を人数で等分します)
もうおなじみのAさんの例で行くとこうなります。
例3)被相続人:Aさんには、配偶者Bさんと子ども2名(Cさん、Dさん)の3人の法定相続人がおり、課税遺産総額は3,200万円です。上記で言うとパターン1になります。
配偶者Bさんの法定相続分・・・1/2
子どもCさんの法定相続分・・・1/2×1/2=1/4
子どもDさんの法定相続分・・・1/2×1/2=1/4
そして、この法定相続分で法定相続人に課税遺産総額を仮に配分します。
配偶者Bさんへの配分額・・・3,200万円×1/2=1,600万円
子どもCさんへの配分額・・・3,200万円×1/4=800万円
子どもDさんへの配分額・・・3,200万円×1/4=800万円
「相続税総額」とは
だいぶ進んできました。あと少しです。次の計算に進みます。
計算式④ 配分した額に対して税率を適用し、算出税額を合計して「相続税総額」を算出する
計算式③で、仮に配分した額それぞれについて、以下の通り税率を適用します。
- 配分額:適用される式
- 1,000万円以下:配分額×10%
- 3,000万円以下:(配分額×15%)ー50万円
- 5,000万円以下:(配分額×20%)ー200万円
- 1億円以下:(配分額×30%)ー700万円
- 2億円以下:(配分額×40%)ー1,700万円
- 3億円以下:(配分額×45%)ー2,700万円
- 6億円以下:(配分額×50%)ー4,200万円
- 6億円超:(配分額×55%)ー7,200万円
- 1,000万円以下:配分額×10%
例4)Aさんの相続人3人に、仮に配分した額それぞれで税率を適用し、算出税額を合計すると以下の通り。
配偶者Bさんへ配分した額に対する税金の額・・・1,600万円×15%-50万円=190万円
子どもCさんへ配分した額に対する税金の額・・・800万円×10%=80万円
子どもDさんへ配分した額に対する税金の額・・・800万円×10%=80万円
190万円+80万円+80万円=350万円
この最終的に算出された350万円が、被相続人Aさんの相続にかかる「相続税総額」です。
ようやく税金の全体の額が分かりました。次の説明が最後です。もう少しお付き合いください。
相続人それぞれに本当にかかる相続税とは
先ほどの計算式③のところで、「仮に配分する」と説明しました。
もしも本当の相続の配分が法定相続分と全く同じであれば、計算式④で出した税金の額をそれぞれ払えばよいのですが、
実際の相続では遺言書の内容や相続人の話し合いなどにより法定相続分と異なる割合で配分することがあります。
先ほどの仮の配分は、あくまで相続税総額を算出するためのものですので、最終的な個人にかかる相続税の額はこの後の計算式で決めなければなりません。
計算式⑤ 相続税総額を実際に取得した財産額で案分する
例5)被相続人Aさんの実際に相続される財産の総額は8,000万円でした。(=課税価格)
法定相続人である配偶者Bさんと子どもCさん、Dさんは以下のように財産を配分することにしました。
配偶者Bさん・・・3,000万円
子どもCさん・・・2,000万円
子どもDさん・・・3,000万円
先ほど例4で算出した相続税総額は350万円でしたので、実際の相続税は以下のようにわけられます。
配偶者Bさん・・・(3,000万円/8,000万円)×350万円=37.5%×350万円=1,312,500円
子どもCさん・・・(2,000万円/8,000万円)×350万円=25%×350万円=875,000円
子どもDさん・・・(3,000万円/8,000万円)×350万円=37.5%×350万円=1,312,500円
以上が大まかな相続税の計算の方法です。
本来は条件次第でさらに複雑な計算なども必要となるため、
相続税はとても手間のかかる税金であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
さらにこの後「配偶者の税額軽減」などの制度により、税額が下がったりするのですが・・・
そちらは別の記事でご紹介します。(現在準備中)