自然の色>七色の虹

虹

高校物理の教科書(2)

 教科書出版社からスペクトルに関する回答を頂いた(S出版、T書籍、K館の3社)。いずれも丁寧な回答である。HP「色いろいろ」で発表していることは、伏せてのメールのやりとりではあるが、学術的なことなので回答の骨子を報告したい。

TAKAの問い合わせ文
高校の理科教師ですが、物理の教科書の内容について確認したいことがあります。  「物T00○」のp○○○の光の分散に関する記述に、「白色光に含まれる赤から紫の光が、それぞれの波長に応じた・・・・・・・・」となっていますが、分光された単光色に紫色は存在しないと思います。  現在、色や光について勉強中ですので、検討をよろしくお願いします。

K館の回答
昔からよく言われる「セキトウオウリョクセイランシ」の 語呂で覚えやすい「赤橙黄緑青藍紫」でスペクトルの帯の色を表しているので, とくに七色という数の色があると主張しているわけでも,紫色が赤と青の混色 であると主張しているわけでもない。「紫外線」という言葉との関連で 可視光線の最も短い波長の光を「紫」と呼んできた(呼んでいる)慣習に従う ほうが,なにかと都合がよいと思う。 可視光の最短波長の色は「菫色」とするのが本当らしいが,教科書ではそ こまで踏み込むことはむずかしいように思う。「理科年表」(丸善)でも まだ「紫」を可視光線の最短波長の色として採用している。

S出版の回答
『理科年表』(丸善)の「電磁波の波長と振動数」の項目において 可視光線の領域を「赤,橙,黄,緑,青,紫」で表現している。 弊社,物理Iの教科書では,これを踏まえて「白色光に含まれる赤から紫の光が…」と 表現している。

T書籍の回答
ファイルを2つ添付した。よく使われるスペクトルのイラストで、 赤橙黄緑青藍紫の7色が見られる。 しかし実際に白色光源を分光器で観察してみると、両端(赤・紫)は中央の黄色付近に比べてかなり暗く、特に、短波長側の紫色の範囲は狭いためほとんど見えない場合もある。 これには大きく2つの原因が考えられる
1 光源の問題
白熱電球のフィラメント温度は2200〜2700℃で、 スペクトルのピーク波長は赤外領域にあるため ピークから離れる短波長側ほど 輻射強度が小さくなり、 紫色の光はほとんど観測できない。 p.87の写真ではおそらく太陽光を用いているのではないかと思うが、 太陽の表面温度6000Kに対応したピーク波長は 500nm近辺(可視光スペクトルの中間付近)であり、 ここから離れるに従って輻射強度は弱まる。
2 観測者(人間の目)の感度の問題
人間の目の感度も、太陽光に適応して500nm付近で最も感度が高く、 紫色光に対する感度はかなり低くなっている。(ファイルを参照)
白色光の場合は特にスペクトル中央付近が明るいためもあって 紫色光は見えにくくなる。
その点、水素や水銀などの線スペクトルの場合は (かなり暗いので注意深く観察する必要がありますが) 紫色の輝線スペクトルをはっきりと見ることができる。
※その他、写真撮影の場合にはフィルム感度の波長依存性などの問題も加わるかと思われる。 (スペクトルの写真撮影はなかなか難しいように聞いている)
K館は、質問の意味を含めて3度程やりとりがあった。最終的に、本HPも見ていただいた。さらに「理科教育メーリングリスト」(URLは,http://rika.org/)のやりとりも紹介していただいた。「空はなぜ青い?」というもので、短波長側が散乱が大きいのなら空は紫になるのでは?という議論のやりとりである。
http://rika.org/archive/rika/200007/msg00553.html

K館・S出版共に、紫色の根拠として、理科年表(丸善)を挙げている。これでは丸善に問い合わせのメールを送らなければならない(^_^;)

T書籍は、添付ファイル2個と非常に詳しい説明を送っていただいた(ファイルは、残念ながらイラストであった)。
T書籍にもあるように、スペクトルの写真撮影はなかなか難しいようだ。この冬休み中になんとか挑戦したい!

出版社の皆様、ありがとうございました。  

(2004/12/27、TAKA)

七色の虹(1)七色の虹(3)七色の虹(4)七色の虹(5)七色の虹(6)七色の虹(7)七色の虹(8)
高校物理の教科書|高校物理の教科書(2)|
珈琲カップの虹(4)珈琲カップの虹(5)珈琲カップの虹(6)
虹の滝の虹(1)虹の滝の虹(2)虹の滝の虹(3)


トップページへ