光と色

遠赤色?

 「近赤外と遠赤色はどう違うんだ?遠赤色とは何なんだ?」

 生物専門のM教頭が怪訝げな顔で聞いてきた。詳しく話を聞くと、植物の光合成では730nm付近で光をよく吸収する。 730nm付近は、「近赤外」と記憶しずっと授業で教えていた。今使用している教科書には「遠赤色」となっていて、「近赤外」=「遠赤色」と書かれている・・・。

 TAKAは、「遠赤色」どころか「近赤外」すら聞いたことがない。「遠赤外」が波長の長い赤外線だから、「近赤外」は波長の短い赤外線と予想される。 ところがやっかいなのが、730nm付近は可視光の領域であり、赤外ではないのだ。

電磁波と波長



 問題点を整理すると、次の通りである。  まず「近赤外」(NI、Near infrared)の領域だが、700〜2500nm(中赤外は2500〜4000nm、遠赤外は4000nm〜)。 また「可視光」の範囲は、JIS Z8120のよれば、360〜400nmから760〜830nmとある。実に曖昧である。

 個人差もあろうが、赤外線は見えないはず(『ウィキペディア(Wikipedia)』にも明言されている・・・)。 730nm付近は、「可視光」並びに「近赤外」両方の範囲に入っている。


「近赤外」「遠赤色」付近



 曖昧さを解消するため、2004年から高校生物Tの教科書で「遠赤色」(FR、Far Red Light)が使用され始めたようだ。 「遠赤色」は、700〜800nmと定義され、問題の730nm付近を含んでいる。「遠い赤色」ということは、当然赤色の一種で可視光である。 「近赤外」の短波長側が見える領域を含んでいることを考えれば、betterかもしれないが、現場の先生・受験生の混乱や「遠赤色」という名称のわかりにくさは否めない。

 生物科学学会連合の「「生物」関連教科書の検定に対する意見書」(2003年1月16日)は、
従来使われてきた「近赤外光」を「遠赤色光」に変更するように指摘された。文部省学術用語集には「近赤外光」が収録されており、「遠赤色光」はなく、両者の整合性が問われる。学術用語集は多様な学術用語を整理統一する目的で、文部省において学術審議会の下にある学術用語分科会の審議を経て編纂されたものである。教科書に用いられる用語が、このような経緯を無視して教科書調査官の考えによって左右されるとすれば、担当者が変わるたびに教科書の用語が変更になる可能性もあり、これは由々しき問題である。
と指摘している。用語の統一が待たれる。

(2007/9/24、TAKA)


色とは?光の正体色の分類(1)色の分類(2)インクの色色の仕組み色の問題黒とは?白とは?(1)白とは?(2)分光

トップページへ